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【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました。  作者: 水定ゆう
2ー1:闇の円卓

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第45話 ギルドマスター、ライム

ここだけの話、魔王城の設定と被らないように苦労しました。

「エメラルさん、査定が終了しましたよ」

「そう、ありがとう」


 ネシアが報告しに来てくれた。

 如何やら状態が良かったおかげか、査定の方もスムーズに終わったみたい。

 手渡された査定書を確認したエメラルは、「いい額ね」と口走る。


「うわぁ、結構貰えるね」

「うん」


 正直、ワイルドボア一匹でこの額は凄い。

 何たって、ワイルドボア一匹の討伐で、三等分しても二週間以上は、余裕で食べていけるくらい稼いでみせた。

 これからは縛りプレイで戦ってもいいかもしれない。エメラルとクロンも納得したから、エメラルもネシアに伝えた。


「ありがとう、ネシア」

「はい。それでエメラルさん、報酬は口座に振込でもよろしいでしょうか?」

「振込? 別にいいわよ」

「ありがとうございます。では……」


 もしかして、まとまったお金が無いのかもしれない。

 王都の冒険者ギルドに限って、そんなことはあり得ない。

 ってことを考えると、何か別で必要なのかもしれない。


「いや、待ってください」

「その声は……」


 プイッと視線を向けると、背の高い男性が立っていた。

 眼鏡がとてもよく似合う好青年で、不思議な威厳を感じる。

 もしかして、凄い人かもしれない。いや、凄い人だ。


「ライムさん?」

「ライムさん? それって……」

「ギルドマスター」

「ディスカベルのギルドマスター?」


 初めて会った。まさかこの人がギルドマスターだったなんて。

 僕は驚かされてしまうと、見えない魔力の流れを感じる。

 水のように滑らかで掴み所が無い。そんな相手を前にして、エメラルは平然と会話をする。


「どうしたのよライムさん。なにを待つの?」

「報酬は振込で無くて構いません。ネシアさん、出してあげてください」

「えっ、は、はい!」


 如何やらライムが取り合ってくれるらしい。

 本当は振込の予定だったけど、直接現金で手渡してくれる。

 ズッシリとした重みのある袋。ネシアはエメラルに手渡してくれる。


「どうぞ、エメラルさん」

「ありがとう、ネシア……確かに受け取ったわ」


 サッと確認すると、エメラルは袋の紐を引っ張った。

 後で僕とクロンにも分けて貰うことになった。

 これもライムのおかげで、エメラルの顔の広さを窺えた。


「凄いね、エメラル。冒険者ギルドの顔だね」

「もう、そんなつもりないわよ」

「でも実際そう」

「クロン、茶化さないでよ。私はただ、私なりの冒険者を全うしているだけ」


 エメラルは褒められて気恥ずかしそうだった。

 けれど実際エメラルのしていることは、冒険者としてお手本のようなことが多い。

 だからこそ、ギルド云々関係なく、エメラルは顔が知れ信頼と信用を勝ち取っているんだ。


「本当に頼りになりますよ、エメラルさん」

「ライムさんまで褒めると、やってるみたいでしょ?」

「本心なのですが……仕方がありませんね」


 ギルドマスターに褒められても喜ばなかった。

 寧ろ威厳を見せると、援助を受けている訳じゃないとアピールする。

 そんなことしなくてもいいのに。そう思うが、ここはライムの方が折れる。


「それでライムさん、表に出るってことは、なにかあったの?」

「はい。実は折り入って相談があるんですよ」

「相談?」


 ギルドマスターから直接相談を持ちかけられるエメラル。

 規格外の逸材で、Bランクなことが惜しいって思う。

 もうAランクまで手が届いているだろうが、そんなことはさておく。

 一体何の相談か、エメラルか訝しんでいた。


「はい。トロンの森の一件、お疲れさまでした」

「「「あー」」」


 トロン森。その名前が飛び出すと、僕達は全員納得した。

 ここ最近、トロン森には行っていない。生態系が完全に変わってしまったからだ。

 その原因はトロールが暴れたから。スカイプ達のパーティーを襲い、壊滅させた張本人で、僕達が無事に討伐して事無きを得た。


 その筈だったけれど、未だにトロン森に近付けていない。

 それが答えであり、ライムの顔色が神妙な理由。

 何かしら分かったのだろうか? それともトロン森はもう安全なダンジョンに戻ったのだろうか? そんな筈が無いことは充分承知している。


「トロン森ね。あれからどうなったのよ?」

「そうですね。エメラルさん達がトロールを討伐してくださったおかげで、今までのようにとは行きませんが、比較的平和なダンジョンに戻りました」

「ってことは、今まで通り狩場に使っていいのね」

「ある一定のランクであれば、充分可能だと思いますよ」


 トロン森の治安はある程度まとまったらしい。

 トロールと言う、圧倒的な生態系の頂点がいなくなったおかげで、元通りとは行かないまでも、再び狩場としてダンジョン利用出来る。

 

 僕達の冒険の幅がまた広がる。これは嬉しい。けれど、しばらくはいいかな。

 トロン森にわざわざ行かなくても、僕達の経済状況的に問題無い。

 特にエメラルとクロンはあの有名な〈《眩き宝石ルミナス・ジュエル》〉のメンバーなんだ。食べて行くには充分困らない。


「やったね、エメラル、クロン」

「そうね」

「うん」


 あまりトロン森にはいい印象が無い。

 それこそ、僕が本領発揮したせいだと思うけど、それ以前の問題もある。

 あれだけ凶暴なトロールが何故現れたのか、色んな意味で謎が多い。


「それで、トロン森の状態は分かったけれど、私達が討伐したトロール。そっちからはなにか分かったの?」

「はい。実は相談と言うのは、まさにそれです」

「それって?」


 エメラルが気にしていたのは、トロールの方だった。

 ダンジョンの方に異常が無いとすれば、考えられる要因は別。

 それこそトロールの方で、エメラルは見越した上で魔石核とトロールの体の一部を持ち帰り、ギルドに提出していた。その結果が思いもよらない事実を生む。

 

「エメラルさん達が討伐されたトロールの死骸からは、妙な薬品の跡が発見されました」

「「「はっ!?」」」


 想像以上の結果が飛び出した。

 僕はもっとマイルドな感じの理由かと思ったけれど、明らかに人為的。

 まさか魔物を意図的に暴走させたってこと? ヤバい奴の臭いがプンプンした。


「妙な薬品の跡ってなによ。もしかして、それでトロールが強くなった訳?」

「恐らくはそうでしょうが、まだ何とも。と言うのも、そのことについて相談したいのです。今、お時間は空いていますか?」


 気になった。凄くに気になった。

 トロールをわざわざ薬品投与までして、一体何がしたかったのか。

 その裏に隠れている正体は何か。だけど、これ以上深追いするのは危険だと訴え掛けられ、僕とクロンの表情を見る前に、エメラルは相談を蹴る。


「うーん、気になるけど少しパスね。他を当たって」

「エメラル?」

「私達ばかりに頼っていてもダメだよ。調査とそっち系なら、〈《黒牙の影》〉の方が優秀でしょ?」


 エメラル以外にも、優秀な冒険者は数多く王都には居る。

 それこそ調査関係であれば、専門職と言っても過言ではないギルドがあった。

 〈《黒牙の影》〉。王都最大規模のギルドの一角、諜報や暗殺に優れた陰なる冒険者集団だ。


「だからライムさん、他を当たって。なにか分かったら、教えて欲しいわ。それくらいの権利、私達には当然あるでしょ?」

「あっ、エメラルさん!」

「行くわよ、オボロ、クロン。なにか食べに行きましょう」


 僕とクロンはエメラルに急かされた。

 逃げるように冒険者ギルドを後にすると、何やら面倒な依頼を蹴ることに成功。

 あのまま引き受けていたら大変だった。それこそワイルドボアの二の舞。エメラルは見本となる冒険者だけど、その前に人間であるからこその怠惰を見せ、誰にも否定させず付け入る隙を与えなかった。


「あはは、逃げられてしまったね」


 ライムは何処か寂しそうだった。それだけ頼りにしていた。

 けれどエメラルの言い分も一理ある。

 専門のギルドに任せることにすると、まずは情報の精査に取り掛かった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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