エピソード746 基本的な知識や常識が欠落している部分があります
『帝国軍の尉官の礼服が非常に良くお似合いになられています、令嬢花女史に、令嬢希望女史』
『ありがとうございます、アンリ卿』
『ありがとな、アンリ』
軍務省の建物内にあります控室にて、レバークーゼン家の子爵閣下の庶子にして次男であらせられます、黒髪と褐色の肌色をされています高潔な貴公子でもありますアンリ卿が、私とナディーネさんによる尉官の礼服姿を称賛されましたが。想いを寄せていられますナディーネさんに対しては、私よりも深い感情を込めた眼差しを向けていられました。
『こうして尉官の礼服や軍服を着ると、いよいよ宮城での叙任式が近付いて来たと実感するな』
デュッセルドルフ家の上級の騎士様の子息でもありますルネ卿が、アンリ卿とナディーネさんの間の雰囲気を読まない発言をされますと。軍人一家でもありますゾーリンゲン家の男爵閣下の末子にして令嬢のナディーネさんが、やや安堵された気風の良い口調にて。
『アタシは幼い頃から爺さんやお袋や兄貴達の軍服姿は見慣れていたが、実際に自分で着ると違うからな、ルネ』
私の根元魔法の最初の師は退役少尉でしたが、帝国の地方部にて平民身分の自作農の一家の家長として農作業に従事して忙しい日々を送られていましたから、退役少尉の軍服姿は見た記憶は殆どありません。
『軍服や礼服の手入れは、帝都魔法学園の学生服の手入れを頼んでいます洗濯屋に頼めば良いのでしょうか?』
私の疑問に対してルネ卿も頷かれまして。
『学生寮の自室で、自分で手入れをするのは大変だからな』
私とルネ卿による話を聞かれましたアンリ卿とナディーネさんは、お互いに顔を見合わせられますと。
『あー、そうか。フロリアーヌはともかく、ルネは軍服と礼服をどこに収納するかという問題があったな』
『ルネさえ良ければ貴族街にある当家の上屋敷で軍服と礼服は預かる。令嬢フロリアーヌ女史に関しましては、御父君であらせられます伯爵閣下のケルン家の上屋敷に御預けになられるべきかと』
成る程、貴族街にあります上屋敷に、軍服と礼服を預けるという発想がありませんでした。
『やはり止事無い身分であらせられる貴族諸侯の家門に生まれたアンリとナディーネは、封建制度を政治体制に採用している帝国の慣習を自然と身に付けているな』
平民身分からケルン家の伯爵閣下であらせられます御父様の娘となりました私と、上級の騎士様の立場にて御領地と領民を御治めになられていますデュッセルドルフ家に生まれたルネ卿は、封建制度を政治体制に採用しています天命思想の帝国におけます基本的な知識や常識が欠落している部分があります。
『ご教授を頂きまして感謝を申し上げます、アンリ卿にナディーネさん』
万ヶ一私一人で尉官の少尉に仮任官をされて、宮城にて帝国の君主であらせられます皇帝陛下より直臣の臣下でもあります帝国女騎士身分を叙任される手続きを行いましたら、右も左も分からずに混乱をした可能性が極めて高いです。




