エピソード21 現実的な目標
「パラッ」
『やはり皇帝陛下から、帝国騎士と帝国女騎士の身分を叙勲された皆様方は、軍場にて武功を挙げられた人物が多数派のようです』
帝都にある帝国最大の蔵書数を誇る、叡智の殿堂でもある図書館にて。この百年の間に皇帝陛下から帝国騎士と帝国女騎士の身分を叙勲された皆様方の名簿に、目を通して調べた感想を述べますと。
『帝国騎士身分のうちの兄貴達も、全員職業軍人だからな』
封建制度を政治体制に採用している帝国の貴族諸侯であらせられる、男爵閣下の御息女でもある令嬢の希望さんが、図書館の向かい側の席に腰掛けて調べ物をしている私に対して、藍色の瞳を向けながら話されまして。
『宮城で官吏として宮仕えしている親父は、爺さんから家督と領地を継承する前に、軍場で武功を挙げて帝国騎士身分を皇帝陛下から叙勲されなかったから。今でも貴族諸侯の社交界では、肩身の狭い下級貴族だな』
封建制度を政治体制に採用している帝国においては、貴族諸侯であらせられる皆様方は、皇帝陛下に対して封土受領之誓いを捧げられまして、代わりに爵位を叙爵されますので。臣下として主君の為に軍役を果たす義務を負われています。
『花のお爺さんは、三十年間帝国軍で勤め上げて、退役して軍人恩給を受給しているのに。平民身分のままなんだね?』
幼馴染みでもあるナディーネさんの隣に腰掛けていられます、私と同じ平民身分である恵さんの疑問に対して。私は瑠璃之青の瞳を、手元の叙勲名簿に向けまして。
『私達の二世代前までは、身分による制約が今よりもかなり強かったようです。祖父の世代に帝国騎士と帝国女騎士の身分を新たに得られた皆様方の大半は、最初からフォンの称号を持たれる、貴族諸侯の家門の生まれとなっています』
私の隣に腰掛けていられる真実さんも、叙勲名簿に緑青色の瞳を向けながら頷かれまして。
『後の世代になる程に、身分や性別による制約が緩和されていますわね。封建制度を政治体制に採用している帝国ですけれど、帝国軍を中心に能力主義が徐々に浸透する変遷の過程が、叙勲名簿から見て取れますわね♪』
帝国女騎士身分を目指されていられる、免状貴族身分の女魔法使いでもあるヴェレーナさんが笑顔で嬉しそうに話されますと。ナディーネさんも同意を示しされまして、灰白色の髪の毛を揺らしながら頷かれますと。
『爺さんからは軍場では、敵は身分や性別を気にしないと、耳に胼胝が出来るくらい繰り返し聞かされてるからな。女魔法使いのアタシ達なら、帝国女騎士身分の獲得は現実的な目標となるな』




