野営とカルラの思い
ゼナ達は、エミリオに駆け寄る。
「エミ兄!」
エミリオは、ミントの回復の甲斐もあって、起き上がる。
「不甲斐なくて、すまん」
「いやハイオークを、あれ程、押さえてたんだ、大したものだよ」
クリスが、エミリオを労う。
エミリオは、ゆっくり立ち上がり、皆に言う。
「ドロップを回収して今日は、2階と3階の繋ぐ連絡路でレスト(休憩)しよう」
ゼナ達は、オークの死骸が灰になった場所からドロップを回収していく。オークからは、グリーンメタルの欠片が回収できた。側近オークからは、グリーンメタルの塊、ハイオークからは、オリハルコンの欠片がドロップされた。
ゼナが、ハイオークの使っていた、剣が消えてないことに気づく。
「ハイオークの剣が消えない。これもドロップしたのかな?」
ゼナは、ハイオークの剣を手に取る。ハイオークの剣は、ゼナが持つと大剣の大きさである。
その様子を見て、エミリオが答える。
「ハイオークの剣は、ドロップ品だ!なかなか良い剣だな。かなりの価値があるぞ」
ふむふむと、皆は頷いていた。
ドロップ品を回収を終え詳しい話は、野営の準備をしてからすることになった。
キスカ達に合流し、全員の所持している野営道具と食料、ポーションの確認をする。
全員の道具の詳細は、テントが2、精霊石が8、食料は全員の食料を人数で割った場合、約三日分。回復ポーションは17本、魔力回復ポーションは14本、包帯は4個、毛布は7つ、あとは、予備の矢が20本ぐらいだった。
テントを立て精霊石を使い、加護を付加する。精霊石の加護をテントに付ければ、半日は魔物が寄り付かない。現在、クリスの仲間のジェシカ、ソフィア、とカルラの仲間のレイチェルは、キスカの治療の甲斐もあり、意識は無いが命に別状は無い。怪我人を優先してテントに休ませた。
ヴェルテが、食事の準備を始める。干し肉を一口大にし、鍋に入れる。ミントから水を貰い、塩と胡椒を少し入れ、ヴェルテの魔法で煮込む。
食事が出来るまでの間、鍋の周りに皆で座り、カルラとクリスから、今までの経緯を聞いていた。
ゼナは弓の弦を張り直しながら、エミリオは、皆の武器を手入れをして聞いている。その横でカルラは、ゼナ達に再度、お礼と自己紹介をしていた。
「今回、自分を捜索して下さった皆様には、本当に感謝してます。僕の名は、カルラ・エリエスト!仲間のレイチェルと二人で坑道の探索に来たのだけど、地下4階の入口付近まで行った時に、地下3階に有る、巨大な水晶が急に光だし青い水晶が真っ赤に染まったんだ。何か異変が起きていると感じ、戻ろうとしたのだけど、地下3階に今まで居なかったリザードマンや、ゴブリンリーダーが複数湧いていて戻れず、地下3階と4階の連絡路に逃げて隠れてたんだ。」
カルラの話では、今までリザードマンや、ゴブリンリーダーの複数湧きは経験がなかったとのこと。ゴブリン、シルバーウルフの複数湧きは有っても、オークも湧いて二体程度、ハイオークなど初めての遭遇で、ゼナ達が1階で遭遇したフェンリルに至っては、本来地下4階辺りから遭遇する魔物であった。
ゼナ達より、先に坑道に入ったクリス達は、地下2階までは、魔物に遭遇しなかったらしい。地下3階でリザードマンとゴブリンリーダーに遭遇、戦闘に入り、クリス達の戦闘に気づいたカルラ達が合流し、リザードマンとゴブリンリーダーを撃退したとのこと。その際ソフィアとレイチェルは負傷し、クリス達は地下3階と2階の連絡路まで戻り、二人の治療をして地上に戻ろうとした。治療後、地下2階でハイオークの群れに遭遇し連絡路まで再度退却させられ、絶体絶命の状況でゼナ達が助けに来てくれたとカルラとクリスが語る。
「ゼナ!格好良かったよ。危うく惚れそうになった」
クリスは、ニヤニヤしながらゼナを見る。
「僕も君の勇姿を見て感動した」
カルラも、ゼナを見つめて、微笑む。その姿を見ていたヴェルテは、意識しないまま魔法の力が高まり、鍋が吹き出した。
「ちょ、ヴェルテ!鍋っ、吹いてる!」
ゼナの言葉にヴェルテは、我に帰る。ヴェルテは、少し拗ねながら、食事の準備ができたと皆に伝えた。
皆に、干し肉が入ったスープと堅焼きパンが配られる。クリスが、ゼナに食べさせてと、甘えている。その姿を見て、ヴェルテがクリスに食べさせていた。クリスは、少し残念そうだ。
キスカも治療を、ずっとしていたので疲労困憊であったが、食事を取ることにより笑顔が戻る。やはり食事は、大事だとゼナは思った。温かいスープは、身も心も癒してくれた。
「「「「「美味しい」」」」」
皆が美味いと唸る。ヴェルテは褒められて、さっきまで拗ねていたことは、忘れた様だ。
食事を取りながら、今後について話し合いが始る。現在、3人が行動不能であり、回復を待って動く案。もしくは、他の捜索隊が、ここまで来るのを待ってみる案。救助隊を呼びに行動力のあるメンバーで地上に呼びに行く案。
皆の意見を精査し、エミリオがプランを決めた。
食料は約三日分、ハイオーククラスの魔物が帰り道に湧いた場合、行動不能者を抱えて戦うのは、不可能と判断する。1日回復を待って動けない状態なら、地上に救助隊を呼びに行くことで決まった。
キスカとエミリオとクリスは負傷者の居るテントに向かう。引き続き治療をする為だ。見張りは、ゼナ、ヴェルテ、カルラ、ミントで対応することとなった。
ヴェルテが、カルラに聞く。
「カルラさんは坑道には、いつ頃から探索に入り始めたの?うちらは、エミリオ以外は、今日が初めてだったんだよ〜」
カルラは、さん付けは、辞めてと言い、答える。
「半年ぐらい前から、入り始めたの。僕は坑道の最深部まで行きたいんだ。最深部には、伝説の古代武器が眠ってるとか、財宝が眠ってるとか色々噂があるし、誰も行ったことが無いってことに惹かれたの」
ヴェルテとゼナは、興味深々で聞いている。二人も坑道の最深部に行きたいと思っているからだ。
「でも、今回の騒動で分かったことは、装備も実力も、まだまだ足りないって痛感したよ」
カルラの言葉に二人は、頷き、ゼナがカルラに答える。
「うちらも初めてで、こんなに凄いとは、思わなかったよ。森で狩りしてるのとは、全然違うし、あと、うちらの戦力だけでは、厳しいのはわかった。」
カルラは、ゼナ達が、商業ギルドの仲間だとは、わかって居たが、当初は傭兵かと思っていた。
ゼナから、雑貨屋を営んでいること、皆で素材集めをして製品を作っていることを聞き目を輝かせる。
「僕も仲間に入れてくれないかな?雑貨屋アリアンワースの仲間になりたい!」
カルラの家は、他の都市に商品を販売する大商人の家であった。しかし、大商人の娘ということで、何もさせて貰えず、護身用に武術だけは、師範を付けてもらい指導を受けた。成人し、自ら坑道に通う様になったが、今回ついてきてくれたレイチェルが負傷したことにカルラは、自分の我儘で、もうレイチェルに迷惑をかけれないと考えていた。レイチェルは、エリエスト家の使用人である。
「エリエスト家って言ったら大商人の家だよネ!うちらは、小さい雑貨屋だよ〜」
ヴェルテが、カルラに言う。それでもカルラは、引き下がらない。
「もう、レイチェルには、ついてきてとは言えないし、君達に興味があるんだ!純粋に素材を集めて、皆で加工して販売してる話を聞いて、一緒に作りたいと思ったんだ!」
ゼナは少し考えて、カルラに両親の許可を貰ったら一緒に坑道に入るのは、良いかもと答えた。
「もう16だし自分ことは、自分で決める!でも、ゼナ達に迷惑は、かけれないから両親の許可は、必ず貰うよ!」
カルラは絶対仲間になると、ひとり闘志を燃やし、仁王立ちしている。
その様子をゼナ達は微笑ましく見つめていた。
三人は、交代で仮眠を取りながら、見張りを継続し、装備品のことや、雑貨品のことなど、朝まで語りあった。




