地下1階のゴブリン
エミリオを先頭にゼナ達は、地下1階を捜索していた。ゼナは、ヴェルテに魔力回復ポーションを勧める。
ヴェルテがウルフを倒す為に使用した魔法は魔力消費が激しい。元々、ヴェルテは、剣士としての能力が高く、火の属性を先天的に持っていたとは言え魔力は人並み程度の魔力しか無いからだ。
「まだ序盤だから、ポーションは我慢する〜」
ヴェルテは、自分に言い聞かせる様に答えた。その様子を見ていたキスカは、杖を振るい、魔力持続回復の魔法を唱える。
「微量ながら回復するはずです」
ヴェルテは、キスカに喜びの表現として抱きつく。何時もの調子でキスカは、くるしいですと悲鳴を上げていた。その様子を見ながらゼナは、右側面にグリーンサファイアの原石を見つける。
「エミ兄、グリーンサファイアの原石があるね」
エミリオは原石を確認し、皆に伝える。
「近くにゴブリンがいるかも知れない。原石の大きさから見て、それなりの強さの個体が居た形跡がある」
ゼナ達は、エミリオの言葉を受け警戒心を強める。パキリと前方で音がしギギギと唸る声が聞こえる。その音は周囲からも聞こえてくる。エミリオは、右手に戦斧、左手に片手剣を構えた。
「囲まれたな、乱戦になる!キスカさんを中心に陣取るぞ」
ゴブリンは、その個体の力は平凡な物であるが、集団戦を得意とし、それなりの知力もある為、武器と防具を使いこなす。相手が弱いと感じれば、執拗に狙い攻めてくる嫌らしさも持っていた。
ヴェルテも抜刀しキスカの左側に立つ。右側にゼナが、後方の警戒にミントが目を向ける。
キスカは、杖を振るい戦闘補助の魔法を唱え、ミントは防御用の魔法準備を始めた。
ゴブリンが周囲を囲みながらジリジリと接近してくる。前方と左側側面から、ゴブリンが石斧を投擲してきた。前方からの石斧がエミリオに迫るエミリオは、戦斧の腹で石斧を弾いた。左側側面の投擲に対しヴェルテが盾で受ける。
ゼナは弓を構え、風の加護を加えた、木の矢で投擲してきたゴブリンに矢を放った。前方のゴブリンは、ギッっと唸り倒れる。しかし左側のゴブリンは、盾を使い矢を弾いた。
「くっ 盾持ちが多数いるね」
ゼナは弓を背に戻し、右手には、ミスリルの短剣、左手にはナイフを持ち構える。
ゴブリン達は一斉に襲い掛かって来た。前方では、エミリオがゴブリンの盾ごと戦斧で横殴りに叩き斬る。盾をもった複数のゴブリンは、吹き飛び、倒れたゴブリンに左手の剣で喉を突き刺した。
ヴェルテは体制を低くし、回転してゴブリンの盾の下から、脚を斬る。
ヴェルテの前にいた盾持ちのゴブリンは崩れ、その後ろから来た新手のゴブリンには、ヴェルテの回転を加えた盾の突進をぶつける。複数のゴブリンが盾のチャージを受け吹き飛んだ。
ゼナは、ミスリルの短剣を風刃の大剣に変え、ゼナの前に立ちはだかる盾持ちのゴブリンを斬り伏せる。風刃の前にゴブリンの盾など意味を成さず、ゼナの前方にいた多数のゴブリンは、次々と倒れていった。
しかし多勢に無勢、ゴブリンの集団戦の前に、ゼナ達は致命傷は無くも、徐々に傷を負っていく。
「数が多いな、皆持ちこたえろ」
エミリオが多数の出血をしながら、皆を激昂する。
キスカが回復魔法をエミリオ、ヴェルテにかけていく。
「大地の精霊よ、その偉大なる力、慈愛を我に、大地の息吹にて傷を癒せ」
エミリオとヴェルテを緑色の閃光が包み、二人を癒していく。
ミントも、回復魔法を唱えゼナを回復する。
「清らかなる水霊の力、命の鼓動、聖水となりて汝を癒せ!」
光を伴った水の輪がゼナを包み、ゼナの傷を癒す。
ゼナ達が回復する様子をみて、ゴブリン達は石斧の投擲をキスカとミントに狙いを定め放つ。
ゼナが叫ぶ
「キスカさんとミントを守れ」
ゼナは、風刃の大剣の出力を上げ、石斧を撃ち落としていく。
ヴェルテは盾で弾き、そのままゴブリンに突進した。そのまま目の前のゴブリンを斬り伏せる。
エミリオは、多数の石斧を撃ち落とすも、全ては落とせず被弾する。被弾しながらも、ゴブリンに突進して行き、戦斧でゴブリンを両断していた。
キスカは、再度回復魔法をエミリオにかけた。ミントは、水の防御壁をキスカと自分の前に築く、ゼナは、水壁を確認すると、弓を再度装備した。盾持ちのゴブリンは、ほぼ全滅している。
「弓で、掃討する!」
ゼナは、風の加護を矢を加え再度弓を速射する。
ギギッ、ギガァ、っと断末魔を上げながら、ゴブリン達は倒れていく。
エミリオとヴェルテは盾持ちを優先して掃討していた。
ゴブリンのリーダーと思われる個体がヴェルテに迫る。鉄兜に鉄の盾、鉄の槍を持った個体がヴェルテに襲いかかった。その個体は、槍をヴェルテに振りかざす、ヴェルテは、盾で槍を弾くも、その威力に体制を崩した。
「や、強い!」
ゴブリンリーダーは、その隙を見逃さず、更に槍を突き出そうとした。
「ヴェルテ!」
ゼナは叫びながら、弓でヴェルテを援護する。ゴブリンリーダーに向けて矢を速射した。ゴブリンリーダーは、矢を盾でガードする。
「ちぃ、盾が厄介だ」
エミリオが側面から、戦斧をゴブリンリーダーに振りかざす。リーダーは、エミリオの戦斧も盾でガードした。
「なんだと?」
エミリオは戦斧をガードされ驚く、ゴブリンリーダーは、ニヤリと笑い、槍をエミリオに振りかざした。
エミリオは、片手剣でギリギリ槍を受けるも、剣は弾かれ、槍を叩きつけられエミリオは、吹き飛ぶ。片膝を着いて、体制は死に体となっていた。
ゴブリンリーダーがエミリオを追撃する。ヴェルテがエミリオを庇いゴブリンリーダーの左側より斬りつける。盾で防ぐ動きを見せた刹那、ゼナは、弓を連射しゴブリンリーダーの右足と右手を狙った。
右足を狙った矢は槍で弾かれる…しかし、グアッ っとゴブリンリーダーは、唸る。右手の甲に矢が刺さり、ゴブリンリーダーは、槍を手より落とした。
その間にエミリオは、体制を立て直し、戦斧を上段から振り落とす。
ゴブリンリーダーは、盾で戦斧を受け止める動きを取る。その動きに合わせ、ヴェルテがゴブリンリーダーの脇腹に剣を斬りつけた。
ガガァっとゴブリンリーダーは、唸り体制を崩す。エミリオの振り下ろしをガード出来ず、戦斧で頭部から両断され絶命した。
ゴブリン達は、劣勢になったと感じ弱腰となった。逃亡しようと動き出す。
しかし、ゼナに狙撃され逃げることは叶わない。玉砕覚悟でゼナに迫るが、ゼナに近づくこと無く、エミリオとヴェルテに斬り捨てられた。
ゼナ達は肩で息をしながら、ゴブリンの死骸を見つめる。
「凄い数のゴブリンだった」
ヴェルテが言う。それにエミリオが答える。
「これ程の数は、初めてだよ三十以上、居たんじゃ無いか?」
ゼナは、弓を背に戻し皆を見つめる。
「キスカさんとミントの、おかげで耐えれたね」
キスカは、魔力回復のポーションを飲みながら、照れていた。ミントは、ゼナの肩に乗り微笑む。
ゴブリン達の死骸は、灰となり崩れ落ちる。中から、グリーンサファイアの原石、または、石炭が回収出来た。ゴブリンリーダーの死骸からは、ダイヤの原石が回収できた。やはり強い個体は、希少価値のある鉱物の可能性は高いのかも知れない。
ゼナ達は、エミリオの指示の元、ゴブリンからの回収が終わり、地下2階の階段を目指す。
連戦が続き、体力が失われているのと、武器の整備をする為だ、どんなに優れた武器も整備しなければ、破損するし、ナマクラになってしまう。安全な場所でエミリオが武器を整備出来る様に、先を急ぎ階段向かった。
ゼナ達は、地下1階と2階を繋ぐ階段で、少し休憩を取ることにしたのだった。