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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第三部。三人娘は、アイドルを目指すのだけど。

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52/52

52.変なことの連続だったね

 飛行船が、暗い枯れ木の森に着陸する。

 外からでも見えやすいように透明化を解除してある。

 幸いにも、フェスに参加した少女たちは、全員生存していた。

 最初は飛行船を恐れていたが、アレクたちとギーゼラたちが出てきたのを目にして安心した。

 皆、飛行船の周りに集まってざわついている。


「この人たちをどうやって元の場所に送り返すんですか?」


 アレクが、女神ルーレに尋ねる。


「邪悪な私がやったように直接転移させてもよいのですが、ちょっと力を使いすぎてしまって。

 ですので、全員を飛行船に乗せてお連れしようと思います」


「全員を一度に乗せたら、かなり窮屈になりそうですけど」


「中の広さをある程度調節できるので大丈夫ですよ」


 ゾナのアイテムボックスと同じらしい。

 見た目より内部を広くできるのだ。


「それでは、これから僕たちがみんなを飛行船の中に誘導します」




「これで全員乗ったわね」


 ルナは、残った人がいないことを確認する。


「って、まだいるじゃないの」


 ギーゼラ一味が、飛行船の外にいた。


「責任のある立場である私が先に入るわけには参りませんから」


「何よ、役場で申しこみの時は先に入ろうとしたくせに」


 以前のことを思い出して、むっとするルナ。

 ギーゼラと睨み合いになる。

 そこへ飛行船の中から女邪妖精が出てきた。


「いつの間にか人が増えたなあ」


 気絶していたが、意識を取り戻したのだ。

 とぼけた顔で、ふらふらと空中を飛んでいる。


「うるさくてかなわん」


 男邪妖精も出てくる。


「おっ、喧嘩が始まるのかな」


 女邪妖精が、ルナとギーゼラの様子を見てからかう。


「ああっ」


 突然、うめき声が響く。

 声のする方に目を向けると、女神が苦しんでいる。


「どうしたんです?」


 アレクたちとギーゼラたちが、女神ルーレのそばに駆け寄る。


「邪悪なルーレに祈る者がいるために……」


 苦しそうに頭を抱える女神。


「私からエルールが……再び分裂しそうなのです」


 狼狽えるアレクたち。

 どうすればよいのかわからない。


「しっかりしてください。

 あたしたちにできることはある?」


 ルナが、女神の肩をさすりながら話しかける。


「ヒールしましょうか?」


「ヒールでは効かないわ」


 イヨの申し出を断る女神。


「私に悪い念を……送り続けている者が……この近くに……」


 息も絶え絶えに話す。


「ううっ」


 悶絶する女神。

 体から黒煙のような禍々《まがまが》しいオーラが発せられる。

 ルナは、思わず女神から手を離してしまう。

 地面に倒れた女神がもがき苦しむ。


「この近くに?」


 アレクは、周辺を見回す。

 怪しい存在の姿はない。

 女神から放たれる魔力が強く、他の魔力がかき消されている。

 悪い念というものの出所でどころを感知できない。

 アレクは、さらに意識を集中する。



ᓚᘏᗢ



 アレクは、ルナたち三人娘を近くに呼び集め、耳打ちする。


「そんなことしちゃっていいの?」


「とにかく、今は急ぐから」


「わかった」


 ルナは、ミサキとイヨに目で合図する。

 ミサキとイヨは、火の玉を作り出す。


「フレンドリーファイアー、行けえっ」


 ルナが、間違ったままの技名を叫ぶ。


「あなたたち、何を?」


 驚くギーゼラだったが、ルナは無視して火の玉を右手にまとわす。

 炎の拳の標的はどこ?


「ぎゃうっ」


 女邪妖精だった。

 火に包まれた女邪妖精が、地面にたたきつけられる。

 ギーゼラたちも男邪妖精も、状況が理解できず呆然としている。

 女邪妖精は、体から煙をくすぶらせ動かなくなる。

 生き死にも判然としない。


「ああ、ごめんね」


 ルナは、女邪妖精のそばにしゃがんで謝る。

 女邪妖精の反応はない。


「お、お前、なんてことを」


 男邪妖精が、恐怖に震えながらルナに詰め寄る。


「俺たちが何をしたってんだ」


「それは、その……」


 ルナにも説明できない。


「ルーレさんの状態がよくなったよ」


 アレクが、ルナを呼ぶ。

 ルナは、女邪妖精を抱えてアレクと女神のそばへ走る。


「思った通りだったよ」


 アレクは、ルナの腕の中で気絶している女邪妖精を見て頷く。


「これは、どういうことなのですか?」


 女神が、ゆっくりと上半身を起こす。


「この邪妖精が、あなたを苦しめる邪悪な祈りの媒体になっていたのです。

 おそらくは、この邪妖精にその意思はなく、誰かに利用されていたのでしょう。

 ただ、それを説明してもわかってもらえないかもしれなかったので、悪いとは思ったのですがむりやり気絶させて……」


「そうでしたか」


 女神は、女邪妖精に申し訳なさそうな視線を送る。


「でも、アレク、どうしてこいつが原因だってわかったの?」


 ルナは、女邪妖精を抱えたまま質問する。


「この邪妖精から微妙に変な魔力が放たれているような気がしたんだ」


「えっ、『気がした』ってだけ?」


「邪妖精が気絶している時に女神とエルールが融合しただろ。

 邪妖精の存在が関係しているのかもって考えたんだ」


「はあ……」


 納得しきれないルナ。

 きょとんとした顔で固まる。

 代わって、ミサキが尋ねる。


「邪妖精が無関係であったらどうするつもりであったのであるかこん?」


「その場合は、謝るしかないだろうね」


「さ、さようであるかこん……」


 アレクにしては珍しく性急な判断だったことに驚く。


「邪妖精さんが目を覚ましたら、またルーレさんが苦しむのでは?」


 と、イヨ。


「たぶん、この邪妖精には、邪悪な祈りを伝達させられる魔法がかかっているのだと思う。

 もしかしたら、イヨのレベルアップした治癒魔法なら、その魔法を解くことができるかも」


「私の治癒魔法で……」


 イヨは、自分に可能なのか不安だ。

 だが、意を決して治癒魔法を試みることにする。



ᓚᘏᗢ



 イヨが、ルナに抱かれた女邪妖精に治癒魔法を施す。

 焦げていた女邪妖精の皮膚が、たちどころに回復する。


「ぶはっ」


 意識を取り戻した女邪妖精が、親指大の何かを地面に吐き出した。


「うわ、何これ」


 ルナが目を近づけてよく見ると、石を粗く削った人形だった。

 素朴だが、どこか不気味な顔立ちだ。

 いかにも呪いの人形といった雰囲気が漂う。


「これが邪悪な魔力の原因だったのか」


 アレクは、石の人形を木の枝でつつく。

 特に反応はない。

 異様な気だけを放っている。


「あれ? どうしたんだろう?」


 女邪妖精は、きょろきょろとあたりを見回す。


「何で君が抱いてるの?」


 ルナの腕から飛び出す。

 ルナにパンチを食らったことへの文句は言わない。

 パンチを食らった前後の記憶がないらしい。


「ええと、どうしてかなあ」


 ルナの目が泳いでいる。

 フレンドリーファイアーのことなど思い出されては困る。

 どんな仕返しを受けるか考えると恐ろしい。


「ていうか、どうしてそんな石の人形なんて飲みこんでたのよ?」


 地面に転がる石の人形を指さす。


「どうしてだったっけなあ」


 腕組みをして考えこむ女邪妖精。


「そういえば、ある女の人に食べ物をもらった時、何か喉に引っかかった気がするなあ」


「ある女の人って?」


「忘れた」


 女邪妖精は、あっけらかんとしている。


「忘れないでよね。

 ていうか、あんたみたいな邪妖精が人に食べ物をもらうって、どういう状況なのよ」


 ルナは、呆れて溜息をつく。

 女邪妖精は、にやにやと笑っているだけだ。

 問い詰めたところで答えは期待できないだろうと諦める。


「それで、女神様は?」


 女神に話題を移すルナ。

 今のところ、女神に異変はない。


「全く苦しくなくなりました」


 笑顔で答える女神。

 少し前の苦しみが嘘のようにすっかり元気になったようだ。

 その後、しばらく様子を見たが、何も問題は起こらなかった。

 イヨの治癒魔法は効果があったようだ。

 石の人形は、森の土の中に埋めることにした。

 他に処分の方法が考えつかなかったのだ。




「あんたたち、この森に残るの?」


「今ルーレの町に行ったってしょうがないしね。

 この森って、私たちにとっては気分のいい場所だし」


 女邪妖精が答える。


「まあ、邪妖精に町に来られても、いろいろと厄介だからねえ」


 ルナは、肩をすくめる。


「それに、私らがいるせいで女神に迷惑がかかるといけないしね」


「意外と殊勝な態度ね」


「関わりたくもないし」


 男邪妖精が、醜い顔をゆがめてつぶやく。


「気が向いたら、またどこかの町に遊びに行くかもしれないし、その時にまた会えるかもね。

 そんじゃ、バイバーイ」


 女邪妖精は、ルナたちに別れを告げる。

 二人は、暗い森の中へ飛び去った。

 アレクたちとギーゼラたちと女神ルーレは、飛行船に乗りこむ。

 花の町ルーレへ出発だ。



ᓚᘏᗢ



 飛行船がルーレの町に到着したのは夜中だった。

 フェスの会場だった場所に着陸する。

 人の姿はなく、設営された舞台と観客席がさびしく風に吹かれていた。

 転移させられたフェスの参加者たちは、無事の帰還を喜び合う。


「あまり多くの人に見られたくないので、私は帰るわね。

 あなたたちには感謝しているわ」


 女神が、アレクたちに告げる。

 さっさと飛行船に乗って帰ってしまった。

 アレクたちは、夜空に消える飛行船を見送る。


「行っちゃったわね」


「行ってしまったのであるこん」


「行ってしまいました」


「もっといろいろと話を聞きたいことがあったんだけどなあ」


 四人とも、複雑な表情だ。


「変なことの連続だったね」


「でも、いい経験になった気もするわ」


「イヨっちの魔法も強化されたのであるこん」


「まだあまり実感はないのですが」


 そんな会話をしていると周囲が騒がしくなる。

 行方不明者が帰ってきたことが町の人々に伝わったのだ。




 アレクたちが質問攻めから解放されたのは、明け方近くだった。

 宿泊していた旅館に戻ると、すぐに爆睡。

 目が覚めたのは、真昼だった。

 アレクたちは、昼食を済ますと気分転換のために町に散歩に出かけた。

 もちろん、アイドル衣装ではなく普段の服装でだ。


「誰もが神隠しのことばかり話しているのであるこん」


 ミサキが、ケモ耳を動かして町を行く人たちの会話を聞く。

 少女たちの失踪事件を神隠しと呼んでいるのだ。


「質問攻めのせいで眠れなかったから、その話はもう勘弁してもらいたい」


 アレクは、まだ少し眠い目を押さえる。


「そういえば、コンテストの順位はどうなったのかなあ」


 歩きながらルナが言う。

 自分たちの順位はあまり気にしていないが、何となくつぶやいたのだ。


「あのようなことがあったのであるから、大会自体も中止だと思うのであるこん」


「ま、そうよね」


 四人は、女神像のある庭園に来ていた。


「改めて見ると、よく似ているよね」


 女神像を見上げるアレク。


「誰が作ったのかしら」


 不思議がるルナ。


「女神様に直接会った彫刻家がいたのでしょうか」


 イヨは、眼鏡をかけ直し、女神像の顔に目をこらす。


「あら、あなたたち、まだこの町にいらっしゃったのですの?」


 出し抜けに嫌な声が耳に飛びこんでくる。

 ギーゼラだ。

 当然、三人の取り巻きも一緒だ。


「あんたたちこそ」


 またしてもルナとギーゼラの睨み合いだ。


「お互い大変な目に遭いましたね」


 アレクが、二人の間に入り、作り笑いでギーゼラに話しかける。


「アレクさんって、女装も素敵ですが、やはり男らしい服装がお似合いですわ」


 ギーゼラは、アレクの全身をなまめかしい目で見つめる。


「一応報告しておきますけど、フェスティバルの優勝は私たちに決まったと実行委員会から連絡がありましたわ」


「あっそう」


 ルナは、悔しそうな様子を見せない。

 拍子抜けするギーゼラ。


「そんじゃ、あたしたちは、これからこの町を出ることにするわ。

 食費や宿泊代がかさんできちゃったしね」

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