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幸運付与師~追放された僕は、美少女たちに幸運をもたらし最強に育て上げる。  作者: 秋ヶ瀬胡桃
第一部。アレクが自分のパーティーを作るまで。

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1.どうしてクビなんだ?

「だからさ、お前、出てけや、このパーティー」


「えっと、何のこと……?」


「わかんねえ奴だな。

 クビだって言ってんだよ」


 ここは、モローニョという城壁都市にある冒険者ギルドの建物の一室。

 特級冒険者パーティー「憤怒ふんどしょう」専用の部屋だ。

 クビを宣告している男は、団長のエルベ。

 団長用の立派な椅子にふんぞり返っている。

 若くて美男子だが、性格は悪そうだ。

 憎らしげに相手をにらんでいる。


「だ、だから、どうしてクビなんだ?」


 クビにされたのは、団長より若い少年。

 いきなりのことで頭が混乱している。

 問い返す言葉もしどろもどろだ。

 少年の名前は、アレク・シャッセ。

 十五歳。


「役に立ってないんだから当然だろ」


 横から口を挟んだのは、キューボック。

 エルベ同様に性格の悪そうな男。

 巨大な剣を常に背負っている。


「そうそう、ほとんど詐欺みたいなものよ」


 魔導師のカーラが言う。

 妖艶な雰囲気の美女だ。


「幸運付与師だなんて言うけど、何をしてくれてたわけ?」


「だ、だから、運がよくなるように幸運値にバフを……」


「全然実感がねえんだよ」


 エルベが怒鳴りつける。

 アレクは、びくっと体を縮める。


「今まで全部俺たちの実力でやってきたんだ。

 お前の力なんかなくても、どんな戦闘も楽勝だった」


 キューボックは、背負った剣のを握り、かちかちと音を鳴らす。

 アレクは、納得ゆかない表情だ。

 しかし、何も言い返せない。


「お前らもそう思うだろ」


 キューボックは、他のパーティーメンバーに同意を求める。

 部屋の端に二人いる。

 一人は、いつもニヤニヤ笑っているヌールという名の男。

 笑いながら何度も首を縦に振る。

 もう一人は、お下げ髪で眼鏡をかけた治癒魔法師のイヨという少女。

 心配そうに様子を窺っていたが、仕方なくといった感じで頷く。


「わかったでしょ?

 あんたなんて、何もしてなかったのと同じなのよ」


 カーラは、エルベに寄り添って、仲の良さをアピールする。


「てなわけで、お前は追放な」


 エルベが、改めて宣告する。


「そ、そんな……」


 アレクは、立ち尽くしたまま動けない。

 突然追放を告げられても、何をすればよいのか。

 弁明の言葉も思い浮かばない。

 今後の身の振り方は?

 様々なことで頭が混乱する。


「何突っ立ってんだよ!」


 どすっ!


 エルベの蹴りが、アレクの腹に食い込む。


「うっ」


 アレクは、腹を押さえて床に倒れる。


「さっさと消えろ」


 キューボックが、アレクの体を足で転がす。

 まるでゴミをどけるかのように。


「あ、あの……」


 イヨが、小声で何かを言おうとする。

 周囲の視線を見て、言葉を引っ込める。


 アレクは、部屋の外に放り出されてしまった。

 閉ざされたドアの向こうからエルベたちの笑い声が聞こえる。

 アレクの目に悔し涙がにじむ。

 うように歩きながら、部屋から遠ざかる。

 自分の不幸を悲しみながら。



ᓚᘏᗢ



 アレクは、よろめきながらギルドのラウンジに出た。

 いくつかのテーブルが並ぶ、レストランのような場所だ。

 多くの人が、会話や食事を楽しんでいる。

 アレクを気遣う者はいない。

 ギルドでの暴力沙汰は珍しくないからだ。


「幸運付与師のはずなのに、自分がこのざまじゃなあ」


 情けなさそうに心の中でつぶやく。


「とにかく、仕事でも探すか」


 ギルドの掲示板に募集の公告がないかを確かめに行く。

 しかし、都合よく自分に向いた仕事はない。

 がっくりと項垂れる。

 仕方なくギルドの建物の外に出る。


 その時、アレクと同時にギルドの門をくぐった人がいた。

 アレクと同世代の女の子だった。

 肌の露出の多い動きやすそうな服装からして、女冒険者らしい。


「あなた、その様子だと、いい仕事がなかったとかですか?

 お互いソロだと大変ね」


 気さくに話しかけてくる。

 アレクは、その明るい雰囲気に少し驚く。

 今の自分と正反対な様子が変に思えてしまったのだ。


「ええ、まあ」


 アレクは、人と話す気分ではなかった。

 軽く返事をして、やり過ごそうとする。


「どうしても植物の採集がしたいんだけど、あたし一人じゃちょっと不安でね。

 でも、そんなのに付き合ってくれる人もいなくて。

 みんな、もっとかっこいいことをやりたがるのよ」


 少女は、一方的に話し続ける。

 ぐいぐい来る感じだ。

 顔を見ると、結構可愛い。

 サイドテールの髪型には、冒険者としての気合いがにじみ出ている。


「あ、そうだ!

 あなたが、あたしと一緒に来てくれませんか?」


「僕がですか?」


 アレクは、誰かと行動を共にしたい気分ではなかった。

 しかし、断る理由も思いつかない。

 少女も怪しい人ではなさそうだ。


「まあ、いいけど」


「よかったあ」


 少女は、幸せそうな笑顔で微笑む。

 アレクは、その笑顔に心が癒やされた気がした。


「あっ、まだ名前を言っていなかったわね。

 あたしは、ルナ・エル・レジナルド。

 これでも、一応、冒険者なんだ」


「そうなんだ」


 アレクも、自己紹介をする。

 さらに特級冒険者パーティーを解雇されたばかりであることも告げる。


「えーっ、いきなりクビだなんて酷い」


 ルナは、自分のことのように憤慨する。


「仕方ないよ。

 僕の実力不足のせいだし。

 特級冒険者パーティーになんて加えてもらえてたのが、そもそもおかしかったんだ」


「そうかなあ。

 あたし、何となくだけど、アレクって凄い人だと思うんだけどな。

 雰囲気っていうか……」


 ルナは、納得できないといった表情だ。


「ところで、植物の採集ってことだけど、何をするの?」


「そうだった。

 あたしが探してるのは、サンダーニカっていう植物なの。

 ある人の依頼で探してるんだけど、凄い効能の薬になるらしいの」


「えっ、サンダーニカだって?」


「知ってるの?」


「この大陸にはない植物だよ。

 エンブダイという大陸にあると言い伝えられているけど、そもそもエンブダイ大陸に行く方法すらわからないからなあ」


「そんなあ……」


 ルナは、がっくりと項垂れる。

 それを見て、アレクが言う。


「でも、もしかしたら、なんとかなるかもしれないよ」



ᓚᘏᗢ



「なんとかなるって、どういうこと?

 サンダーニカは、行き方もわからないような別の大陸にあるって言ってたけど……」


 ルナが驚く。


「でも、やっぱり難しいかな」


 アレクは、自信なさそうに頭をかく。


「もう、どっちなのよ」


「ここじゃ何だから、歩きながら話すよ」


 二人は、ギルドの門前から町中へと歩き出す。




「僕が天から授かった職業は、幸運付与師なんだ」


 この世界では、十歳の時に天の神から職業が与えられる。

 それによって人生が決まるのだ。

 アレクは、家庭の事情で十二歳の時から冒険者を始めていた。

 冒険者になってすぐに、まだメンバーの少なかった憤怒の掌に加入した。

 憤怒の掌は、当初は中級のパーティーだった。

 アレクの幸運付与のおかげで、瞬く間に特級冒険者パーティーとなった。


「幸運付与師?

 聞いたことのない珍しい職業ね。

 人を幸運にするってこと?」


「そうなんだ。

 特に戦闘において、運良く勝てるようにするんだ。

 戦闘でなくても使える能力だと思うんだけど……」


「つまり、偶然サンダーニカを手に入れられるようにしてくれるってこと?」


「まあ、そういうことなんだけど……」


「うわあ、すっごーい!」


 ルナは大喜びだ。

 満面の笑みで跳びはねる。


「アレクと会えたこと自体が、信じられないぐらいの幸運だわ」


 対照的に、アレクの表情は暗い。


「どうかしたの、アレク?」


「肝腎なスキルが大したことないんだよ。

 パーティーをやめさせられたのも、そのせいなんだ」


「そう……。

 でも、あたしは、アレクの才能を信じるよ。

 だって、感じるんだもん」


 特に根拠のある発言ではない。

 冒険者としての勘だ。


「とにかく、その幸運付与ってのをあたしにやってみてよ」


 アレクは、ルナに向かって手をかざす。


「それだけ?

 詠唱とかもしないの?」


 ルナは、きょとんとしている。

 術をかけられた感覚がないのだ。


「なんかよくわからないけど、信じるわ。

 さあ、サンダーニカを探しに行きましょう」


 ルナが走り出す。

 アレクは、ルナの跡を追う。


「探しにって、当てはあるのかなあ」


 ルナをその気にさせてしまったことに申し訳なく思う。

 自分の能力は、役に立たないからとクビになった程度だ。

 遠い異国の植物がこの近辺で見つかる幸運など、作り出せるはずもない。

 ルナが落胆するのも時間の問題だ。




 二人は、いつの間にか、城壁の門を抜けて町の外に出ていた。

 畑の間を通る街道を進む。

 前方に山が見えてくる。


「あの辺りに生えてそうな予感」


 ルナは、山を指さしながら意気揚々と歩む。


「人のよく通る峠だし、どうかなあ」


 アレクは、呆れた様子で後に続く。


「まあ、とにかく行ってみようよ。

 何かあるような予感がするんだよねえ」


 ルナの笑顔は自信に満ちているが、果たしてどうなることやら。



ᓚᘏᗢ



 ルナとアレクは、峠道を上って行く。

 他に通行人の姿はない。

 次第に道幅が狭くなる。

 道の周囲は、草や灌木かんぼくに覆われている。


「何か匂うような気がするなあ」


 立ち止まったルナが、林の奥をのぞき込む。


「鼻がいいんだね。

 僕には、何も匂わないけど」


「匂いというよりは勘かな。

 とにかく、こっちに入っていってみよう」


 ルナは、道のない林に分け入る。

 足下あしもとが悪く、歩きづらそうだ。

 アレクも、仕方なくルナに従う。


 しばらく進むと、林がひらけてきた。

 草地の中をさらに行く。

 すると、前方に小さな木が生えているのが見えた。

 高さは、二十センチほど。

 生え始めてからそんなに月日はたっていないようだ。


「ねえ、アレク、あの木、どことなく尊い感じがしない?」


「確かに周りの木と雰囲気が違う」


 葉に独特の光沢があり、太陽の光を反射してキラキラと輝いている。

 気分のよくなるような香りもする。


「信じられないけど、きっとこれがサンダーニカだよ。

 鳥が種を運んできたのかなあ」


 アレクは、木に近寄ってじっくりと眺める。


「ほんとに見つけちゃったわ。

 やっぱりアレクって凄いよ」


 ルナは、目を潤ませてアレクを見つめる。


「いや、別に僕が見つけたわけじゃ……」


「アレクのおかげで見つかったんだから、アレクが見つけたようなものよ。

 アレクの幸運付与の能力って、普通じゃないレベルだよ」


 アレクは、自分の幸運付与がどれだけ役に立ったのか実感できていない。

 サンダーニカの発見は、あくまでルナの手柄だからだ。

 ルナの賞賛に対して、はにかむように笑うだけだった。




「まだ小さい木だから、葉っぱを五枚ぐらい頂戴するだけにするわ。

 それで十分足りるはずだし」


 ルナは、五枚の葉を腰につけたウエストポーチ状のかばんに収める。

 見た目よりは五倍ぐらい中が広い魔法の鞄だ。


「伝えられている話だと、エンブダイ大陸でのサンダーニカは、途轍もなく巨大な大木になるそうなんだ。

 これが大木になるまでには、どれだけの年月がかかるんだろう」


 アレクは、感慨深げだ。


「ところで、アレクって、サンダーニカのことに詳しいけど、どうして?

 探してたあたしだって、よく知らないで探してたのに」


「本とかで読んで知っていただけだけど」


「結構な読書家なんだね。

 知識のある人って尊敬しちゃうなあ」


「そうかな?

 図書室が好きで、よく適当にいろいろ読んでただけだけど。

 ところで、ルナは、どうしてサンダーニカを探していたの?」


「それが、最高の傷薬ってのを求めている人からの依頼なの。

 サンダーニカの葉が原料だと言われて探していたの」


「その薬って、続断薬ぞくだんやくのことだね。

 手足が切断されても接続することができるから、そんな名前なんだとか。

 さすがに話が盛られているような気がするけど」


「へえ、そんな凄いんだ」


 ルナは、大いに感心している。

 だが、アレクは、不審に思う。

 なぜ実在も不確かな薬を探すのを一介の個人冒険者に依頼したのだろう。

 国家的な事業として船団を組織してエンブダイ大陸を目指すはずだ。


「さて、それじゃ依頼者のところへ戻ろう。

 アレクも一緒に来る?」


「じゃあ、行こうかな」


 二人がその場を去ろうとしたその時だった。

 林の木々がガサガサと揺れる音がした。

 何か大きな生物が近づいている気配がする。


「強そうなののお出ましだわ」

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