第99話 己の役割は何か
美晴と同一のようで違う『神』と名乗った、ハル神が消えたあと。
藍葉はクロードともう一度話し合うために、サイドテーブルに置いていたノートパソコンに視線を向けた。成樹以上にハーフらしい顔つきの男性が、ディスプレイの中でぽかんとしている様子は見えたが、それはそうとして。
藍葉には、為すべき仕事が与えられたのなら……成樹に会うためにもこなさなくてはいけないのは理解した。
「……クーちゃん。知ってた?」
敬語を使わないのはもう一切気にせずに、この段階までの経緯を知るべく、クロードに質問を投げかけた。その声にはっとしたのか、我に返ったクロードは画面越しでも見える淡い金髪を軽く掻きだした。
『……関係者やしな? 藍葉は熊谷になーんも聞いとらんかったん?』
「なにも。シゲくんたちは『仕事』についての機密情報……特に教えてもらってなかったの」
『それやと、ポイ活以前の『成り立ち』から説明せんといかん。VR使わなくてええんなら、そこは端折らんと説明したるわ』
「ありがとう」
『藍葉。まず、『加東奈月』って男知っとるか?」
「? ううん? どんな人?」
『簡単に言えば、想像したもんを現実化したのを予言した人物』
「は?」
『嘘やないで。普段はクリエイター集団のトップやけど……自分の命かけて、地球で起きる世界災害をぎりぎりのレベルまで予測しとった。世間には知られにくいように、刷り込ませる感じにメディアへ流してたんや』
「……アニメとかじゃないよね?」
『ちゃうちゃう。この現実の状況をここまで抑えれたのも、あいつのお陰や。藍葉はインターンやから二十歳やろ? あいつは、多分今二十六くらいか?』
成樹たちより年下の男性が、この災害にも等しい静寂な時間を生み出すきっかけを作ったのか。それにしては、静か過ぎて『被害が最小限』でしかない。死者がいないわけではないが、ニュースで知れる範囲の情報では震災レベルの被害が出ていなかったから。
「……その人も、『寝てる』の?」
『多分な?』
「わからないの?」
『さっきのハル神のように、『行き来』出来る人物やし……体が弱いせいで、意識を抜く以外は生命維持装置の中にいるとしか知らん。それもほんまか、怪しいけど』
「すっごく、怪しい」
ついさっきまでいた、幻にも見えた兄に似た人物の登場の仕方もだが。まさか、普段使用していた『異世界ファーム』がその名の通りに等しい世界だと想像出来るわけがない。しかし、現状は『誰かが』指示を出さないと地球側もあちらも何も解決しないとなれば。
事実上、クロードとふたりだけでするか。その『加東奈月』を『起こす』ために、藍葉の出来ることでバックヤード対応していくしかない。
『とりあえず、VRせんで外側からログイン出来るようにするしかないか。さっき言いかけたゲームの中で、おそらく奈月が潜入している可能性が高いんよ』
「まだ、リリースしてないゲーム? 開発途中なの?」
『β版はあるで、『スカベンジャー・ハント』や』
「え゛!?」
『おん?』
「……コミカライズのファンです。『C.C.クロニクル』もいっしょに」
『ああ。打診受けたように見せて、事実俺も含めた『クロニクル=バースト』の仕事や』
「……お兄ちゃんも、関係者??」
『熊谷もな? んじゃ、ログインのURLとパス教えっから、手順通りに『NPC』も選んで』
「うん」
空想科学とかが現実に起きているなんて、引きこもりや飽き性でしかなかった藍葉には関わりのないことだと思っていたが。
恋人や兄を『起こす』ためにも、まずはメールで速攻送られてきた新しい『役割』を学ぶところから始めなくてはいけなかった。並行世界のひとつ、『スカベンジャー・ハント』の入り口として扱われている、β版のゲーム世界に。
次回はまた明日〜




