第174話 災害鎮火??
音が聞こえる。
微かなモノから、じわりじわりと大きなものへとボリュームが上がっていき、音域まで広範囲となっていく。
地面以外の建物も凍り。
その上に下水道が壊れたかで開いた穴から水があふれ出して、せっかく車の移動が可能になっていたのが無駄足になるなど。
避難していた者らは、元旦から起きた震災並みの災害にどう対処すればいいのかわからず。とにかく、無事な建物に避難していた。
とあるひとつの建物では、電光掲示板がいきなり作動をし始め、運営会社がニュースでも流すのかと思ったのだが。
「これ、『クロニクル=バースト』の新曲だよ!」
避難している中に、ネット情報に詳しい者でもいたのか。聞こえてくる音源と自分の端末がまだ動く範囲で同じ曲を流してくれた。
創作集団『クロニクル=バースト』は少し世間から危険視されていたが、この事態を解決に導こうとしているのか。それにしては、ニュースもトレンドも特に何も上がっていない。自分の端末を確かめてみると、その予想に反して、トレンドは『クロニクル=バースト』だらけで埋め尽くされていた。
「選抜者……能力者。そんなじゃない。科学の文明はきちんと立証されている??」
SNSの投稿のいくつかにその文言が綴られていた。馬鹿げた文章でしかないが、曲が耳に届くと外の氷がまた砕けていく音も聞こえてくる。それに合わせて、まるで合唱でもしているかのように曲が奏でられていく。
シンガーは男性だが、どこか中性的な雰囲気を醸し出しているようにも感じ取れる。この声の主は誰なのか。気になるが、確かめようがない。自分の端末をもう一度動画サイトなどで検索し直している間にも、外の光景はさらに目をみはるくらいに変わっていく。
「~♬」
電光掲示板を見れる位置にいた自分は、その動画がどんなのか確認するのに少し前のめりになって見上げた。AIを加工した少女と少年の舞みたいな和風の曲と動画。青と黒の球体を混ぜ合わせ、広げて波打つようにして地面に広げるようなホログラフィック。それが現実にも起こり、水が浸水するのを逃げるようにして避難民が動くのは仕方がないと言えよう。
これは、なんの撮影かアニメの公開演出なのか。
そう思えるくらいに、意図的に災害を落ち着かせるための儀式とも思えた。
「……なにが、したいの?」
安宅直海は聞こえてくる音源に心を震わされる感覚が止まらないでいたが、しっかり見ていても動画とその曲に合わせての災害鎮火らしき光景が信じられないでいる。すぐに自衛隊らしき災害救助隊が建物に入るように促してきたので動画は見れないようになってしまったが。彼らの声から『水が引く』とか『氷がまた割れる。上部注意』などと激しいものが届いてきた。
映画演出でも、イベントの撮影でもなんでもない現実が過ぎて十日くらい経ったが。この現実と向き合うのに、『クロニクル=バースト』たちは待っていたと言うのか。現実生活の救済措置とやらのために、自分たちの醜聞を晒してまで。
意味が分からないだらけでも、やるべきことがわからない。せめて、もう一度インストールし直して関連性のあるアプリたちから情報共有をやり直してみることにした。会社員のOLだからって出来ることはなにかあるはずだと、周りの避難民たちも自分の端末を使い始めているのだから。
次回はまた明日〜




