第159話 サブリーダーの彼は
阿澄卓也は、端末からの着信のメロディに驚いて声をあげそうになった。
現在、再びコールドスリープのポッドに戻ってVRMMOの運営への仕事に戻った同期らの様子見をしていたのだが。端末であるスマホの着信は固定したものでも、滅多にかかってくるものでないからほかの部下らに離れることを告げたあとに、廊下へと移動する。
着信が途切れないことを心配しながら通話のボタンを押すと、『お疲れ様です』と電子音のかすれた声が耳に届く。
「……どこにいるんだ。加東」
立場上では阿澄の方が部下であれど、状況が状況なので素のスタイルで呼んでしまった。だが、奈月の方は特に気にしていないのか『すみません』と先に謝罪される。
『こっち側の俺は今移動中なので。『第一病院』のポッドに向かうようには主治医に頼みました』
「……そこで、誰に『見つけろ』と指示を出したかったんだ?」
『ハル先輩の妹ちゃん優先ですね?』
「……健常者じゃない子になんて無茶を」
『本人じゃなくて、シゲ先輩に来てもらいたいんですが……リンク、剥がれそうにないんですか?』
「わかっているなら、聞くな。こっちもこっちで困っているんだ」
SF内容のゲームにいる気分ではあっても、リアルはリアルに変わりない。成樹らの救出確保のためにポッドへ移したとはいえ、これが最終目標でないのは阿澄も関係者なので知ってはいた。一度か二度、彼らは『スカベンジャー・ハント』からリンクを剥がしてくれたが……ここ二、三日は起き上がることすら出来ないくらいにダイブをしまくっていて、救急態勢でいる医師らにもかなりの心労を与えてしまっている。
無理に切り離すことも出来なくはないが、そうすると心因性のストレスを大きく与えるきっかけになってしまうため……そればかりは、最終手段でしかないのだ。それをするかしないかの最中で、奈月からの連絡がきたのだから救済措置を求める阿澄が驚いたのも当然だ。
『向こうの『俺』が少し指示出ししたんで。身じろいだら声掛けだけしてもらっていいです? それこそ、居眠り学生に叱りつけるみたいに』
なのに、奈月自身はのんきな指示出しくらいしかしてくれなかった。本気で、そんな滑稽なものでいいのか信じていいのかあやしくなるくらいに。
「そんなけでいいのか?」
『彼が自分の恋人に会いたい気持ちが強いでしょうしね? それくらいで済むように、補助はしてきたので回復処置とかはお願いします』
「……わかった。信じてみる」
『信用してくださいよ? これでも社員一同を死なせないために頑張っているんですから』
「最低死者らが、『転生』出来るような裏チャンネルも登録できるようにしてるのか?」
『それが、まさに。VRMMOの仕事ですよ』
「……そうか」
どうしても、の、被害者への慰霊について何もせずにいたのはそのためか。阿澄が下手に関わり過ぎると、宇宙開発関係者のルートで下手な横やりが増えるために……このタイミングで告げたのだろう。
それで奈月との通話は切れてしまったが、すべきことはわかっているので部下らにポッド内のスピーカーを『最大ボリューム』にさせて、阿澄の声で『怒号』並みのボイスを投下してみれば。
『『うわ!!?』』
成樹と美晴のポッドだけからスピーカー越しに声が響いたので、成功だと言えよう。ほかのポッドについてはまだそのままがいいかもしれないが、コマンドだけ打って起床の合図を促せば『なんだなんだ?』と自然に声が上がった。
そのポッドの中に、『まちゃ』と『メメ』もいたのだが。彼らはまだ並行世界側からの帰宅がうまく出来ていないのかで起き上がることはなかった。なら、ここは次の指示通りに彼らを本当の意味で『帰宅』させるしかないと運搬業者を呼ぶことにした。
次回はまた明日〜




