第104話 責任を取れとは言ったが……
サナを介して、『ナツ神』はクルスとリーナの行動にいささか呆れていた。
(たしかに。責任を取れみたいなことは……夢路を通じて伝えたにしても!!)
真昼間から、『そういうこと』をしたのが合意どころか互いに『寝ぼけ』て実行したことには呆れる以外何もない。
女でもそれなりに大事にしている『最初』を。合意もなく実行したというのには、ナツであれ『馬鹿か』と言いたくなりそうになった。
そのあと、二回目を実行しなかったまではまだいいが。共に風呂へ入る仲にまで至ったとは。
果樹園の管理をしつつも、サナを通して『種の楽園』を見れたナツはどうしたものかと思わずにいられなかった。
(婚姻の申し込みをしたけど。……いきなり、夫婦ねぇ?)
ハル神と互いに支えている『地球』とは世界事情が違うため、慣習もあちらよりだいぶ古い。君主がいて、貴族が支え、兵士が城を護る。そんなファンタジーじみた世界が成り立っているのだから、古いのもなにも関係がない。
だからとはいえ、ムードぶち壊しからの婚姻が実現してしまうのは神側としては無下に扱ったのと同じだと後悔してしまう。
(……仕方ない。『サナ』の記録を解除するしかないわ)
疑似人格というか、表層意識で『サナ』でいただけだから。管理者にしていた『美晴』は、実はほとんどこちらを運営していなかった。彼はサポートスタッフとしてバグの修正をしている以外、あまりポイ活の作業をさせていない。
だから、そこを妹の藍葉に頼み、彼女の進行具合に合わせてアップデートに力を入れていたのだ。
(ON.OFF……コード、ON.)
切り替えのスイッチをサナを介して行い、ゴーレムだった媒体を『人間』のように見せた疑似生命体に変換させた。ゴーレムは『皮』程度なので、いつでも変換することが出来る。
とりあえず、クルスらが風呂から上がったことを確認してから、出入り口で待機。扉が開いて、『誰だ?』と彼らに怪しまれるのも想定内。サナの面影があまりないようにしているのはわざとではないが、これが『ナツ神』だとわかってもらうためだ。
「……誰なん?」
「私は、ナツ神よ」
「「は!?」」
リーナにも『声』だけしか認識させていなかったので、この姿がわからないのも仕方がない。
ふたりの方に近づき、交互に驚いたままの顔を見て吹き出しそうになるが……そこを堪え、まず、クルスの頭を軽く小突いた。
「責任を取れとは言ったけど。寝ぼけて……だなんて、お互い無用心過ぎない?」
「な、な、なんで!?」
「神だから」
「……お姉ちゃん。見て、たの……?」
「いいえ。この表層意識が出てくる前は『わかってた』程度」
「「うう……」」
間接的とは言っても、致したことへの暴露はそれなりに恥ずかしいのか。クルスは女扱いに慣れているようじゃないし、リーナはそもそもクルスが初恋でほかに男を知らない。そんなふたりの感情が爆発したのが『正気じゃない』ときに起きるのは、ナツとはいえフォローはこのくらいしか出来なかった。
「とにかく。私は『サナ』と交互に出てくるけど。あなたたちが、『夫婦』になったのなら仕事以外の接触はしないようにするわ」
「……いや、それは」
「神関係なく、リーダーはクルスよ? そこは履き違わないで」
「「……はい」」
子どもではないが、大人になり切れていない感情はどうしようもないというか。ひとまずは、軽い説教をしたあとにふたりで今後の生活をよく考えるように、と、言い聞かせる。
『サナ』はもともとひとりだったし、ハル神がこちらに来る気配があるのならそれはクルスらと同じ生活をすることになるのだ。その邪魔はしてほしくなかった。
次回はまた明日〜




