幕間 番外編 ムーのつぶやき
「嫌だわ、話しちゃったの。」
眩しいくらいに長い青銀の髪の美しい女が目の前にいる。
「散々楽しんでいただろ?」
そうこいつが根源の女神だ。
溢れるほどの美は誰もがうっとりする。
全体が輝いて見える。
「あら人聞きの悪い。鑑賞していただけよ。」
しかしオレは違う。
こいつの本性は知っている。
「しかし、あいつはお前に気づいたぞ。」
先ほどのシャーリーの話をする。
「あの子は優しい子よ。だって烏に突かれて怪我した私を助けてくれたのよ。そしてたまたま居合わせたあの子も一緒に手当てしてくれたわ。でもね、もう一人一緒にいたあの女は私を叩いたの!汚いって!!ありえない。あんなに可愛い鳥の姿だったのに!」
美しい顔の眉間にシワがよる。
「可愛いか可愛くないかは個人所感だな。」
オレはもう何年、いや何百年顔を合わせているんだろうか。
「で、スイートポテトをくれたの!美味しかったわ。
あんな味初めて。もう今までで一番好き!今でも一番好き!」
オレはスイートポテトの味を思い出して唾を飲み込んだ。
「スイートポテト…か。あれは美味いな。」
よくシャーリーはスイートポテトを作る。
まだ彼女に姿が見えない時はこっそりつまみ食いさせてもらっていた。
「でしょ!でしょ!」
目の前の女が楽しそうに笑う。
「でももともとあの味を作ったのはあの姉妹の母親なのよ。近所のケーキ屋で働いていたの。どうもあのおばさんはその時に食べた味が忘れられなくてよく買いに行ったみたいよ。結構仲良くなって話し込んでたみたいよ。スイートポテトのレシピも教えてもらってたし。」
だからあの姉妹が言う母親の作るスイートポテトとシャーリーが作るスイートポテトの味は同じなのか。
「あんな美味しいスイートポテトを作る人を尊敬するわ!」
こいつが食べ物以外で人を尊敬したことがあったか?
いや、なかった。
「で、たまに前世のシャーリーのところに食べに行ってたんだ。」
ため息をついた。
この女神は何かやってるんだ?
「だってあの子の近くに行くと分けてくれるんだもの!」
前世も今もシャーリーの根本は変わらない。
優しい…いやお人好しだ。
「でもね、ある日あの子が事故で亡くなってしまったの。
悲しかったわ。割とあの子好きだったからね。」
スイートポテトが目当てじゃなかったのか?
「あの子は優しいのよ。いつも私が窓のそばの木に停まるとすぐに気づいて話しかけてくれたの。でもね、いつも寂しそうな顔をしてるのよ。私に話しかける時は笑ってくれたりするんだけど…。子供のこと、仕事のこと、最近読んだ本のこと、いろいろ話してくるの。楽しかったわ。ついついあの子のところに寄ってしまうの。スイートポテトだけじゃなくて他にもいろいろくれたしね。」
やっぱり食い物に釣られてたんじゃないか。
「心を許して話せる相手が鳥って可愛想じゃない?その原因の旦那がすごく嫌な奴だったからどうしてもざまぁさせたかったの!」
ざまぁ…ってその世界の小説読みすぎだよ。
前世のシャーリーもよく読んでいたみたいだから、前世のシャーリーからいろいろ情報仕入れてたんだな。
「まあ、だから彼女を転生させようと思ったんだ。」
彼女はふふふんと腕を組んで偉そうな態度をとる。
まさに上から目線だ。
「更に娘達が事故で亡くなって落ち込んでしまって姉妹の母親も塞ぎ込んでいたの。お店も辞めてスイートポテトも作らなくなった。少し様子を見ていたわ。そしたらあの人の声が聞こえた。きっと異世界で幸せに生きているのよね、って。」
あの世界は異世界転生とかの小説や漫画が流行っていた。まあ考えたくもなるか…。
ましてや姉の方はそんなゲームを作っていたから余計にはそう思うのか。
「その願いを叶えただけって言うんだね。」
「そう!あの子達の魂をよび集めるのは大変だったのよ!
私はあの子達を幸せにしてあげたかったのよ。」
確かに幸せにはなるにはなったが…。
「じゃあ、普通に幸せにすればよかったじゃないか。なんであんな周りくどいことをしたんだ。」
シャーリーなんか大変だったんだよ。
「せっかく姉妹の姉が楽しそうなゲームを作ってたんだから利用させてもらったわ。母親も試作品をやっていたみたいだし、かなり家族でゲームの話で盛り上がっていたから、内容は把握していたでしょう?」
やはり…楽しんでいただけのようにしか聞こえない。
お前もそういう小説を持ってきては興味深々で読んでたもんな。暇な女神だ。
「どんだけみんなを巻き込んだら気が済むんだ。」
本当、迷惑な女神だ。
「えー、ひどい言い方。嫌な子ね。
みんな普通に定められた運命や寿命で死んじゃってから転生させたわよ。巻き込むなんてひどい言い方しないでよね!」
人の運命や寿命を変えてはいけないのは当然だ。
まあ、そこはちゃんと分別あってよかったよ。
「はいはい…でも結局楽しんでいただろ?」
いつも楽しそうに見ていたよね?
「違うわ。さっきも言ったけど見守っていただけ!」
…言ってたか?
「あの子達に用意したのは舞台と配役だけ。
どう動くかはあの子達次第。ただ、ちゃんと適材適所をして、材料を与えたつもりよ。」
確かに適材適所は褒めてやれる。
あれ以上の配役はないだろう。
名(迷?)監督だったな。
「左様ですか…。たまに手を出してなかったか。」
オレは見た。
いろいろ修正してたろ?
「まあまあ、そこは大目に見て。」
まあ仕方ないか。
オレもこれが一番いい終わり方だと思ってる。
「ただ、計算違いが一つ…」
あったのか?
「姉妹の母親が運命を受け入れすぎた…のよ。
彼女だけには娘達が転生するのを教えていたの。」
いつの間に…
「だから自分を含めみんな幸せになれるようにいろいろ考えてくれると思ってた。あの人には自分の幸せを掴んで欲しかった。私の大きな誤算…。」
だから人間は面白いし、目が離せない。興味が湧く。
惹きつけられるんだ。
「これが彼女の考えた幸せなんだよ。母親は子供の幸せを願うものなんだよ。」
目の前にいる女神は遠くをみていた。
「そうね…彼女は自分の幸せではなく、前世の娘達の幸せ、今世の息子の幸せ、そして前世と今世の友達の幸せを願った。」
女神は目を伏せたてうなずいた。
「みんなが幸せになること。それこそが彼女の一番の幸せなんだよ。」
オレはため息を吐いた。
うまくいくこと、うまくいかないこと…
両方あるのは仕方ない。
これからみんなが幸せになるように願うだけだ。
「ねぇ、シャーリーは今日スイートポテト作るの?
私の分も持ってきて!ちょーだい!」
は?さっきのシリアスな話から何故一転した?
「はいはいはい…」
でも、さっきシャーリーはルースの奴に
ズルズルと部屋に連れていかれたな。
「しかし多分今日はないな。週末だな…。」
オレの予想だと今日はもう一日お楽しみになるはずだ。
「えー!やだやだやだ。食べたい!なんとかして!」
本当、こいつ女神か…。
今日一番大きなため息を吐いた。
「シャーリー、いいよね?」
「ルース、だめ。」
「あっ、こら、ムー!つまみ食いしないで!」
「あームー!僕より先に食べちゃダメだよ。」
「熱っ!」
「ほら!一人だけ抜け駆けするからだよ!」
「あら?数が足りない。もうルース!やっぱり食べたでしょう!」
「お前も食べたんじゃないか。」
「僕じゃないよ!」
「熱っ…!」
「「「えっ??」」」
「…父上…。何やってるんですか…。」
エドワードお父様…何故かザイン家の方々が、書いていて一番楽しかったです。
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長らくお付き合いいただきありがとうございました。
何とか完結となります。
ブックマークをしていただいた皆様、評価をしていただいた皆様
読んでいただいた皆様 感謝です。
本当にありがとうございました。
ぼちぼち書いていきますが性格上、終話まで大筋が書き終わらないと怖いので(未完になりそうで・・・)また新しい物語ができましたらお付き合いいただければ嬉しいです。
ぼちぼち番外編も書くつもりです。
ザイン家の皆様方が好きすぎて・・・そっちの方面から番外編を書きたいと思っています。
(まだ何もない白紙ですが・・・。)




