幕間 番外編 カールのつぶやき
間に合ったので、カール兄様視点の話を入れました!
何故か書いていて彼が一番お気に入りです。
20時には
回収しきれなかったところを小話としてあげます。
(前、中、後編+ムー視点のおまけ幕間の四話あります。)
今日は前編のみ。
5日は中
6日は後
7日はおまけ幕間
の19時一日一話更新です。
今日は少しハードな仕事だ。
この頃シルバーサ王国があからさまに敵意を見せ始めた為、いつ戦争になってもおかしくないような
切迫した状況だ。
そんな中、国王の在位20年の式典があった。
たくさんの来賓がある中、当然暗殺者までも勝手にお祝いに駆けつけてくれた。
もう本当に君たちはお呼びではないんだけどな。
仕事が増えるだけだからやめてほしい。
愛しい妻、ラリサと触れ合う時間が少なくなるじゃないか。
・・って隣にも機嫌悪そうなやつがいたな。
「もう帰っていい??」
「いいと思うけどな?父上に聞いてみないと分からないな。私では判断できない。」
「じゃあ父上のところに行ってくる!シャーリーが待っているんだ。こんなところに長居なんでできないよ。」
身長は伸びて、金色のストレートの髪が風になびく。
目も切れ長になり、あごのラインもスッとしている。
細身の体だがそれなりに鍛えてはいるようだ。
あの小さかったルースが立派に大人になっている。
初めてルースと会ったのは8歳の時だったかな?
ルースはまだ3歳だった。
突然父上がルースを連れて帰ってきた。
金髪に少し青よりの碧眼。
誰から見ても父上が浮気をして出来た子供だろう。
姉様は明らかに嫌悪感を示し、母上は実家に帰るために荷物を作り始めた。
私も仕方なく自分の宝物をカバンに詰め込んでいた。
父上は誤解だ!と叫ぶばかり。
しかし母上は聞く耳持たず。
魔法で防音壁を作り着々と荷造りを進めていた。
そんな時、陛下からの手紙が届いた。
なにやらいろいろ書類があって遅くなってしまったようだ。
そこに添えられていた陛下と妃殿下の手紙によってようやく我が家に平和が戻った。
父上は疲れ果てていた。
父上と母上の間の誤解が解けた後、ようやくルースが私たちに紹介された。
陛下の子であること。母親は妃殿下の幼馴染の使用人であること。その母親は半年前に亡くなってしまったとのこと。王太子殿下と異母兄弟になるため政当時私は治的な争いを避けるためにザイン家に連れて来られたこと。
父上と母上が話し合った結果、当時8歳の私、12歳の姉さまには誤魔化しきれないということで、真実を伝えられた。
初めて会ったルースによろしくと手を出した。
しかし彼はその出した手に応えることはなかった。
無言でずっと私たちを見ていただけだった。
笑わない。必要以上に話さない。常に隠れたように一歩引いている。
どんなに私たちが仲良くしよう手を差し伸べても彼は自分の殻から出てくることはなかった。
たいした変化もなく3年くらいが経った。
私や姉はなるべく話しかけるようにして欲しいと父上から言われていた。
私も弟になった彼の笑顔を見たいと思っていたからめげずに話しかけていた。
今思うと本当に自分も根気強かったな。
ある日、仕事に行った両親が予定の時間を過ぎても帰らないことがあった。
私や姉は心配して連絡用の魔法石の前で座って待っていた。
いつの間にかルースが隣で立っていた。
何も連絡のないまま夜が過ぎようとしていた。私たちはずっと両親からの連絡を待った。
執事のガーシュインも当時まだサイン家の使用人だったサンドラも心配そうに私たちについていてくれた。
姉が泣き始めた。私は泣くのを必死で我慢していた。ルースは表情を変えずにじっと立っているだけだった。
ガーシュインが大丈夫ですよと声をかけてくれるのだが、かえって悲しくなってしまう。
そしていつの間にか朝になっていた。
結局朝になるまで魔法石は光らなかった。私たちはずっと起きていた。
姉様が口を開いた。
「ガーシュイン、陛下に報告を・・・」
何かあったに違いない。ひとまず姉様は両親がいない今このザイン家の状況を国王に知らせる義務がある。その時の姉様の凛とした姿は尊敬しないわけにはいかなかった。
泣きはらした目をじっと魔法石に向けて姉様はガーシュインに指示を続けた。
その時、ルースが姉様の隣に移動した。
姉様のスカートの裾をひっぱった。私と姉様は初めて彼の青い瞳が恐怖に潤んでいたのを見た。
そうだ彼は実の母親を亡くしている。人の死に対して私たちより恐怖を感じているに違いない。
優しく姉様がルースを抱きしめた。
「ルース、大丈夫だから。必ず帰ってくる。そして私たちを抱きしめてくれる。」
ルースの目からは大粒の涙が落ちていた。
その時初めて彼の感情にふれたような気がした。
私は仲良くしようとしていた。しかしそれは義務のようなものだったのかもしれない。
母親を亡くしたかわいそうな子。だから私たちが仲良くしてあげなきゃいけない。
手を差し伸べるだけで誰もあの子の心ごと抱きしめることはなかった。
つまり一歩引いていたのは私たちの方だった。彼の心に立ち入って、触れることはしなかったのだ。
私も姉様と一緒にルースを抱きしめていた。
そうやって三人で抱き合ってじっと魔法石の前で待っていた。
お昼すぎだった。
一睡もしていなかったのでみんなうつらうつらとしていた。
するとルースが
「姉様!兄様!」
と、叫んだ。
初めてルースが私たちを姉様、兄様と呼んでくれた。
あわてて魔法石を見た。元気な両親の姿が映っていた。
まずは姉様が泣き始めた。私も恥ずかしながら泣いてしまった。しかしルースが一番大変だった。大声で泣き始めた。魔法石の向こうの父上も母上のかなりびっくりした様子だった。
私と姉様はルースを泣き止ませるのに大変な思いをした。いまでもあの時を超える思いはしたことない。
母上の話だと一緒に行動していた一人が捕まってしまい、その時父上がけがをしてしまい治療に時間を要してしまい、捕まっている仲間を助けに行くのが遅くなってしまったようだ。
母上は本当にしっかりしてよ!と父上を叱咤する姿がいつも通りで安心した。
夕方に帰ってきた両親に姉様と私が飛びついた。
やはりルースは一歩引いて少し離れたところにいた。
「ルース、心配かけてすまなかったな。おいで」
父上が両手を広げてルースを呼んだ。
ルースが顔をくしゃくしゃとして泣きながら飛びついてきた。
父上はそんなルースを抱きしめて、頭に手を置いて髪の毛をくしゃくしゃとした。
父上の癖だ。
そんな大きな手の下で私は初めてルースの笑顔を見た。
まあ、あれからは素直に育ってくれた。
よく私の後をついて来た。本当にかわいい弟だ。
あんなにかわいかった弟も今や私より3㎝ほど高くなり、家族よりシャーリー命だ。
シャーリーがルースと出会ってくれて本当によかったと思っているしさらに隣にいてくれることを望んでくれてシャーリー様様なのだが少し寂しい気もする。
「兄様!」
廊下の天窓が一瞬キラリと光った。
「はあ、まだおいでになっていたのか・・・一体何人ご招待したんだ。」
私はため息をついた。
ルースだけではない。私だって愛するラリサが待っているんだ。早く帰りたいに決まっている。
はあ・・・と、大きなため息をついて赤い瞳で天窓をにらんだ。
するとルースが先ほど光った天窓の隣の窓に向けて攻撃をした。
窓が割れたと思ったら割れたガラスの破片と一緒に暗殺者が落ちてきた。
「ルース・・・殺気出すぎ・・。早く帰りたいのはわかるがあまり王宮を破壊するなよ。」
不貞腐れた顔をしていた。
私はルースの頭に手を置いた。
金色のサラサラした髪だ。
確かに父上でも母上のものではない。
多分実の母親に似たんだろう。
ルースの頭を思いっきり押した。
そしてグリグリ頭を掻きまわした。
「やめてよ!髪の毛がぐちゃぐちゃになるよ!」
いつもは下にあった頭がいつの間にか上にある。
あんなにかわいかったのに・・・な。




