イベント小話 ハロウィン
別荘から帰ってきて
すこし距離が近くなっていた頃の話しです。
25話の前くらいにあたります。
「何だ、これは?」
シャーリーの家に遊びにきた。
しかし約束はしていない。暇だったから来てしまった。
突然お宅訪問!びっくりするかな?
しかし今、僕の方がびっくりしている。
玄関にどでかいかぼちゃが置いてある。
更に顔みたいにくり抜かれている。
僕は近くに寄ってじっーと睨んだ。
何なんだこれは?
また何か面白い事しはじめたらしいな。
「あ、ルース!!おはよう。どうしたの?朝早くから?」
シャーリーが多分収穫したものが入った籠を持って現れた。
「あ、おはよう。えっ?はっ?シャーリー!?」
僕の目の前に歩いてきたシャーリーは魔女がよく着るマントを羽織っている。
「シャーリー?どうしたの?」
「ふふふっ。トリック・オア・トリート!」
「はっ?えっ?何?」
「お菓子をくれないといたずらしちゃうわよ。」
「えっ??お菓子…って…何も持ってないよ。」
「ふふふっ…なーんてね。ルースが知るわけないわよね。」
「このかぼちゃも何か関係があるの?」
「ああ、これ。ジャック・オー・ランタンよ。
今年は割と大きなかぼちゃがなったから思わず作ってしまったわ。」
「ジャック?ランタン?」
「前世にはハロウィンってお祭りがあるの。子供達が魔女やお化けの格好をしてみんなからお菓子をもらうの。このジャック・オー・ランタンはまあ、クリスマスツリーみたいなものね。」
「クリスマス?はっ?何だそれ?」
また、わけのわからない言葉が出てくる。
食べれるのか?美味しいのだろうか?
「おかげで今日はパンプキンパイにパンプキンスープだわ。」
僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
未知の料理の名前が出てくる。
当然食べたことのないものだ。
そう言ったものは決まって美味しい。
しかし待て…
「今パンプキンって言ったよね?パンプキンって何?」
「えっ?かぼちゃに決まってるでしょ。当たり前じゃない。」
「かぼちゃって食べれるの?!」
カルチャーショックだ。
「姉さん!かぼちゃ裏ごししたよ。」
「あら、ジョーカス。さすがね。今年は去年より早いじゃない。」
ジョーカスがやってきた。なんだか敵意を向けられる。
まあわかっていることだ。
何やら彼は黒いマントを羽織っている。
何なんだ?
そのハロウィンってのは黒い服を着るってことなのか?
ジョーカスにふふふん、と何故か勝ち誇った顔をされた。
「ねぇ、ねぇ、今年もかぼちゃのグラタン作ってくれる?」
「ジョーカスはチーズ好きだからグラタンが大好物ね。
作ってあげるわ。」
「やった!」
…グラタン?何だそれ?
チーズが乗っているのか?
あーそういえば王太子殿下の人物紹介に
グラタンってあったな。何故殿下は知っているんだ?
僕がしらないのに!可笑しいだろ!
「せっかくだから栗もいれようかしら?」
「えー!やだ。栗は渋皮煮がいい!!」
渋皮煮??またわけわからない食べ物の名前だ。
そう言えば確かにたまにお菓子はもらうけどシャーリーの料理は食べたことない。
ヴィクセレーネ公爵はシャーリーの料理は見たこともないものが多いが、美味しいと言っていたな。
「シャーリー、グラタンって何?何で殿下は知ってるの?」
「あら?そういえば、以前お父様が陛下に話をしたら王妃様が是非食べたいと言われてレシピを渡したことがあったわね。王宮ではホワイトソースのものを日常に食べているのかしら?」
ホワイトソース?白いソース?何なんだ。
もう!余計わからなくなったじゃないか!!
「おや?ルーズローツ様は姉さんの料理食べたことないんだよね?」
ジョーカスに対して白旗をあげるしかない。
「…うっ…」
「残念だな。すごく美味しいんだよ。とくにハロウィンのかぼちゃ料理は格別なんだよ。食卓全部姉さんの料理が並ぶんだ。」
そうか!そのハロウィンってのはかぼちゃ料理やお菓子を作って食べることなんだな!
「そういえば、ルース。どうしたの?何か用だった?」
「あ、いや。特に…用事は…」
「じゃあ、とっとと帰れば。姉さんは今日は忙しいんだよ。」
「ジョーカス!だめよ。そんな口の聞き方は。仮にも身分は上なのよ。」
そうだよ。何たって王族なんだよ。
そうだ!そうだ!シャーリーもっと言ってやれ!
「はーい。姉さん、ごめんなさい。でも今日は僕の為にグラタン作ってくれるんでしょ。早く食べたい!」
「はいはい、可愛い弟の為にがんばるわ。お手伝いお願いね。」
「うん!」
嫌な奴だ。弟と言う立場を存分に使いやがって。
「と、いうことなの。だからルースごめんなさいね。今日はあなたを相手をしてる暇ないの。」
ジョーカスに手を引かれてシャーリーが楽しそうに歩き出した。
慌てて後を追う。
「シャーリー!僕も暇だから何か手伝うよ。」
「邪魔!」
「もう!ジョーカス。さっきも言ったでしょ?そんな言い方は駄目よ。」
「だって慣れてない人がいたら邪魔だよ。」
「大丈夫!手先は器用だ。僕も手伝う!」
シャーリーとジョーカスの後を無理矢理ついていった。
「ルース、何かあったら手伝ってもらうからすこしそこで待ってて。」
シャーリーが黒い魔女のマントを脱いだ。
「…???!!!」
メイド服…じゃないか…!
「ふふふ。姉さん可愛い。」
「ジョーカス、お世辞はいいわよ。」
「ちゃんと僕があげたの使ってくれていて嬉しいんだ。」
いやいや、お世辞じゃないから!可愛すぎるだろ。
「いつもの服だと粉だらけになってしまうから助かってるわ。ありがとう。でもちょっと丈が短いわね…」
交流会の時より長いよ。しかし膝上だ。
「きっと姉さんの背が伸びたんだよ。」
「そうかしら?でもジョーカスは成長期ね。また伸びたんじゃない?来年には抜かされそうだわ。」
「じゃあ今年のクリスマスに新しいのプレゼントしてあげる。」
「ありがとう。ふふふ。じゃあジョーカスは何か欲しいものある?」
「何でもいい??」
「ええ。私にできる範囲にしてね。」
「ん……」
ジョーカスが僕の方を見た。
ニヤリと笑う。多分シャーリーに聞こえないくらいの声で
「姉さん。」
と囁いた。
僕の眉はピクっと動いていただろう
「ん?何?ジョーカス何て言ったの?」
「ん〜何も。考えておく!!」
僕は顰めっ面をしているに違いない。
僕の前には姉弟という入れない壁がある。
楽しそうだ…。
クリスマス?さっきも言ってたな?何なんだ?
当然ジョーカスはわかっているよな。
なんか疎外感だ。
弟って…いいな。美味しすぎだろ!!
でも僕は婚約者だ!
…ってシャーリー知らないんだよな。寂しいな…。
いつの間にか寝ていた。
うつらうつらとしていたら目の前にゆらゆら揺れる白いものがある。
ひっ?お化け?!お化けが出た?!
「トリック・オア・トリート。お菓子をくれないといたずらするよ〜」
「ひっ!」
僕は椅子から落ちた。
「えっ?ルース!大丈夫!!」
白いシーツを慌てて外してシャーリーが僕の手を取る。
心配そうに僕を見る目がまた可愛い。
悪戯するぞじゃなくて、もうしてるでしょう!
シャーリーの手を思いっきり引っ張ってやった。
当然シャーリーは僕に向かって倒れてきた。
「あっ!ルース!何を…えっ!」
案の定勢いがありすぎて受け止めれなくて
二人して床に倒れこんだ。
シーツがふわりとシャーリーの上にかかる。
僕はここぞとばかりにシーツの上からシャーリーを抱きしめた。シーツをかぶったシャーリーの顔は僕の肩の上に押し付けられている。シャーリーは顔にシーツがかかり視界が真っ白な状態だ。僕の右手はシャーリーを受け止めために彼女の腰にある。
そんな状態で床に倒れている。
「いや!前見えない!ルース!外して。嫌!
ごめんなさい!もうしないわ。」
「ふふふ。仕返し…」
…あ…いや、ちょっと待て…。この柔らかいのは…
当然倒れたのを受け止めたのだから僕とシャーリーは密着している。つまりこの胸の付近にあたるものは…
「シャーリー…また大きくなった?」
ぴくりとシーツの中のシャーリーが肩を上げたのがわかった。
しまった!口から出てしまった…!
シャーリーが思いっきり手で僕を押した。
シーツが外れて真っ赤になったシャーリーが目の前にいた。
しかし倒れている状態で女の子に押されて状況が変わるわけでもない。腰に回っていた手に力を入れた。
「もう!服が埃だらけになっちゃうわ!離して!」
真っ赤になって彼女は怒っている。
「ふふ、シャーリー可愛い。」
そのまま反対の手をシャーリーの頭に回して彼女を引き寄せて頬にキスをした。
怒るのは辞めたようだ。
真っ赤になって俯いていた。
本当、僕の婚約者は可愛い。
ちなみにお昼ご飯にかぼちゃグラタンを食べさせて貰った。
ジョーカスの視線が痛かった。
しかしジョーカスのグラタンの方がチーズが多かった。
やはり弟の特権なんだな。
仕方ない。あと数ヶ月したらシャーリーは僕のものだ。
そのくらいは許してやるよ。
僕は寛大なんだ。
おやつには僕も手伝ったかぼちゃのクッキーを食べた。
グラタンもクッキーも美味しかった。
ねぇ、シャーリー。
早く新年にならないかな。
早く僕だけの為に作って。
前にも書きましたが
どうしても現実のイベントに合わせて小話をあげたかったんです。
夢でした!
単にイチャイチャしてるだけです…
すみません