小話 旅行三日前
題名どおり旅行三日前のザイン家でのことです。
少し話が前後してしまいます。
あと三日でシャーリーと別荘だ。
荷物を作るのも楽しい。
突然決めちゃったけどシャーリー大丈夫かな?
着ていく服困ってないかな?
あ、そうだこの間作らせておいたリボンとワンピースを後から持っていってあげよう!そうと決まればサンドラに連絡してっと…ん?
「ルース、ちょっといいか。」
ドアの隙間から父上が覗いていた。
父上に呼ばれた父上の書斎に行った。
「先日の件だが。」
ああ、闇の商人の件か。
「昨日、人身売買の罪でバラダンを捕まえた。」
早っ…まだ三日しか経ってないじゃないか。
「まあ、あの件のおかげで近々人身売買の取り引きがあると言うことがわかったから張っていたんだが、ビンゴだったよ。まあ、少しはお前のおかげだな。ありがとう。一応礼を言っておくが」
「…はい。」
来るよ…多分小言が…。
「しかし!まだ15歳の子が一人であんなところに行くのはなんなだ。いくらシャーリーが危ないと言っても、もう少し父を頼ってくれないか。本当に…」
この間も聞いたよ…。長いんだよね…。
「で、女のことだが…」
ん?ルピアのことか。
「少し前から出入りしているらしい。」
「しかし、闇の商人が学生と…それも平民の人と取り引きをするの?」
「バラダンの女の一人らしい。」
「ちょっと待ってよ。女ってバラダン何歳だよ?あいつはまだ15歳なんだよ?」
「まあ、そういう世界なんだよ。よくあることさ。それだけ執着して手に入れたいものがあるんだろう。」
何が背中がゾクっとした。
執着?ヒロイン?
手に入れたいもの?僕?
そこまでして執着するもの?そんなに大事なこと?彼女にとってそれしか見えないのか?そんな理由で僕を狙う?シャーリーを狙う??おかしいだろう。狂ってないか。気づかないのか。これはゲーム内の世界であっても僕たちは生きているってことに。
「スレギス草の密輸もしていた。ただ、バラダンは何も言わないが全て先日捕まえた奴らから得た証言だ。彼女には証拠は何もないから捕まえることは出来ない。」
そういうところだけ計算してるんだ。
「しかし、いろいろ調べたのだが少し怪し動きを掴んだ。やっかいな案件に出入りをしているようだ。」
さすが父上。仕事早いですね。
「ラリルリ草の件に関係してるんですか?」
父上の目が少し細くなった。
「まあ、お前にはまだ早い案件だな。しかし説明だけはしておこう。ラリルリ草が取れなくなったのはキルナスの森をシルバーサ王国が占領したせいだ。森の半分以上焼き払われていた。」
「シルバーサ王国が?何故??」
「あまり詳しくことは言えないがひとまず今回動かなきゃいけなくなったのはその件だとだけ言っておこうか。
しかし、ルース、お前は知っているのか?彼女は何者で何が目的なのか?」
僕は一瞬父上の目を上目で見た。そんな一瞬の仕草で父上はわかったんだろう。
元ヒロインの転生者でーす。狙いは闇ルート、メリバです!
なんて言っても信じないよな。
すぐに目を逸らした。
「聞いても答えないと思うからあえて聞かなかったが、何故シャーリーが狙われていたのかお前は知っているんだろう?」
僕はうなづいた。父上相手に嘘をついても仕方なさそうだ。
「まあ、言えない事情もあるだろう。単に三角関係のもつれということは無さそうだ。あまりにも彼女はいろいろなことを熟知しているし、動きすぎている。一つだけ聞いてもいいか?」
再度無言で頷いた。
「彼女はザイン家のことを知っているのか?」
僕は頷くことなく父上の目をじっと見た。
今度は父上がうなずいた。
「そうか」
ようやく僕はうなずいた。
父上が近くに来て、頭をワシャワシャする。
兄様、父上は同じようにする。
「お前は優しい子だ。」
そして手を頭に載せたまま話し続けた。
「いくら罪が無くても危険分子だ。このままにはしておけないという結論だ。」
僕が違うと言えば経過観察、そうだと言ってしまうと多分この結論になることは分かっていた。だからすぐには頷けなかた。僕の一言で決まる。怖かった。でも否定すればこの先みんなに迷惑がかかる。僕の大切な人達を傷つけるようなことはできない。
「というと。」
「申し訳ないがルース、お前に頼みたいんだ。多分お前に頼むのが一番いいと思う。」
「大丈夫。父上に言われなくても動くつもりだったよ。」
しまった!!!
「ルース!!今なんて言った?」
「あ、いや…何も…」
「また、一人でやるつもりだったんか!お前はこんなに父が心配してるというのに何故わからないんだ!」
頭の手に力が入った。
…また、長くなりそうだ。
「タチヒア、水。話しすぎた。」
「はい、あなた怒りすぎですよ。」
「しかしルースの無鉄砲さは誰に似たんだ!」
「あら?作戦を無視して、自分の持ち場を離れ、囮として敵地に乗り込んだ私のところに来て何も考えずに敵を攻撃して作戦をぶっ壊したあなたに似たんじゃないんですか?」
「そうか。はは、そうだな。私に似たんだな。ふふふルースは私に似てるんだな。」
「…」
親バカです。
ようやく終話まで書き終わりました。
なので読み返しながら
自分でも少し楽しんでみました。
ごく稀に後書きに↑↑↑みたいな話あがります。
よかったらお付き合いください




