イベント小話 クリスマス
シャーリーとルースが結婚して初めてクリスマスの話になります。
「ねぇ、シャーリー、これ何?」
「クリスマスツリーよ。」
目の前には僕の背の3倍もあるだろう高い木がある。
「せっかくお金持ち、玉の輿と結婚したんだから贅沢の一つや二つしてもいいかな?」
玉の輿って何だ?
「は?これが贅沢なの?
そういえば前にも言ってだけどクリスマスって何?」
「ん…一言で言うなら聖なる夜?」
はぁ?夜?更にわからないよ。
「まあ、とある偉大な人の誕生をみんなで祝う会よ。」
「みんなで一人の誕生日を祝うのかい?」
「ん…まあそうね。でも美味しいものを食べたり、枕元にプレゼント置かれていたりして、楽しいのよ。」
…誕生会に参加するとプレゼントがもらえる?
あげるんじゃなくて?
「サンタさんがプレゼントを持ってきてくれるの。」
サンタさん?すごいお金持ちの人?
もしくは荷物を届けてくれる配達業者?
「チキンをたべて、ケーキたべて…ふふふっ」
何か一人で思い出してる。
「街中がイルミネーションなの。」
イルミネーション?やはり美味しいのか?
「でね、恋人は一緒に過ごすの。ん〜その日はみんな幸せね。」
いつだって僕は幸せなんだけどな。
シャーリーが何か歌を歌い出した。
僕は幸せに浸って聞いていた。
聖しこの夜…か。
シャーリーは楽しそうだ。
…で、こんな時に仕事かい!!
せっかくシャーリーが家でフライドチキンとやらを作って待っていると言うに!!
父上、酷すぎませんか?
ザイン家ってシャーリー曰くブラック企業ってやつですか?
「ルース…わかったな。」
「あ、えっ?は?」
兄様が僕の頭に手を置いた。
「ったく、ちゃんと聞けよ!」
「ごめんなさい…」
顔をパンと両手で叩いた。
いけない。今は仕事だ。僕一人のせいで誰かが傷つくかもしれない。
今はしっかりしなくてはダメだ。
「大丈夫か?いけるか?」
「はい、大丈夫です。」
父上も心配そうに見る。
そうだ、しっかりしろ!
気を緩めるな!
「ルース!行くぞ!」
「はい!」
なんと片付いたが、もう夜だ。
寒いな。雪がふりそうだ。
「カール、ルースお疲れ様。よくやったな。」
「ルース?大丈夫か?」
「少し相手の攻撃を避けた時に何かにぶつけて切ったみたいです。大丈夫です。」
少し頬から血が出ていたようだ。
「さあ後はガーシュインに任せよう。
いいか?ガーシュイン?」
「はい、今、騎士団が来ましたから後は受け渡すだけです。」
僕達は転移魔法で家に戻った。
自分が傷つくより人を傷つけたほうが何倍も心が痛い。
早くシャーリーに会いたいな。
家の前に三人同時に降り立った、
「は?」
何故かザイン家の玄関には大きな木が色採りどりに輝いていた。
「はぁ?何だこれは?」
「魔法で様々な球を作って光らせているみたいだね。」
「シャーリーの仕業なのか?」
「お帰りなさい!ルース!!」
シャーリーが出迎えてくれた。
「シャーリー?これがクリスマスなのかい?」
「ええ!クリスマスツリーよ!」
「シャーリー、頑張ったね。」
「お義父様ありがとうございます。ふふふ」
「しかし少し寂しくないか?」
「すみません…私の魔力ではこれが精一杯で…」
確かに…光り輝いているが…木の4分の1くらいだろうか。
「それじゃあ!」
兄様が手をふいっと振った。
すると魔法が一筋のリボンのように落ちてきて木に巻き付いて光った。
「カール、やるな。」
父上も手を前に出して指を鳴らした。
すると光が一筋木の上にすっと伸びたと思ったら弾けて
その光の粉がキラキラと木にかかる。
木全体が輝きだす。
「すごい!お義父様!カール兄様!」
シャーリーが手を叩いて喜んだ。
しかし…僕はこの後の見せ場がないじゃないか…
木はキラキラと輝いている。
これ以上何をしろと…ん?ああ、そうか。
僕は木に向かって手を振り上げた。
木の一番天辺に明るい光が灯る。
「ふふふ、さすがルース。」
「だってシャーリー歌っていただろ?星は光りって…」
シャーリーが僕の腕を掴んで抱きついてきた。
「ルース、大好き!」
そういいながらシャーリーの視線はずっとクリスマスツリーに向いていた。
「ほら、二人とも寒いわよ。早く入りなさい。」
母上が玄関から呼んだ。
すでに父上も兄様も家に入っていた。
「はーい!」
シャーリーが返事をした。
「今日はご馳走よ!」
シャーリーが腕を引っ張った。とても楽しそうだ。
クリスマスっていいものだな。
「あ…」
シャーリーが上を見上げた。
「寒いと思ったらやっぱり降ってきたね。」
「ふふっ、ホワイトクリスマスね。」
白いクリスマス?また何なんだ?
シャーリーが少し背伸びをして僕の頬にキスをした。
そして
「ルースにとっておきのプレゼントがあるの。
楽しみにしていてね。ふふふ」
と、笑った。
本当に可愛すぎる。
ご飯食べずに部屋に連れ去りたいくらいだ。
「それは楽しみだな。」
実はレイクルーゼ様にたまたま会った時に
クリスマスにはプレゼント交換をすると言う事を教えてもらった。
僕もちゃんとプレゼントを用意してるんだ。
前の世界だと結婚すると指輪を送るらしい。
一年経ってしまったけど…。
シャーリー驚くかな?
しかし…シャーリーのプレゼントにびっくりさせられて
渡すのを忘れてしまった。
結局渡すのは次の日になってしまった。
来年のクリスマスは三人でクリスマスツリーを見上げるとしようか。
「シャーリー…もしかして太った…?」
「浮腫んでいるのよ!
せっかくルースがプレゼントしてくれた指輪が入らない!嫌〜!!」
「寝ている間にサイズ測ったのにな…」
「だから浮腫んでるの!!」
「おや?シャーリーどうしたんだ?」
「あ、お義父様。何でもありません。ふふふ。」
「クリスマスといい、新年といい、美味しい料理を作ってくれてありがとう。美味しかったよ。少し服がキツくなってしまったよ。ははは」
「…そうですか…ふふ…」
「おや?シャーリー、少し頬がふっくらしたかな?
まあ、つわりも無くていいことだ。」
「浮腫んでるだけです!!」
本当にたくさんの人に読んでいただき感謝しております。
また、今書いている話に煮詰まったら番外編書くかもしれませんがひとまず書きたかったイベント小話が書けて満足してます!