番外編 サーシャの場合(1)
二女サーシャの話です。
初恋は実らないっていうだろ。
残念ながら彼を好きだと気づいた時にはもう君の恋は終わっていた。
ほらだから目の前にいる私に気づいて。
私はいつも君を見てるよ。
君が私だけを見てくれる日を待っているんだよ。
だから早く…。
私の目の前にいる少女は
明るい茶色のストレートの髪、亜麻色に光る瞳。
嬉しそうにその亜麻色の瞳を輝かせながら
話をしている。
「で、初恋がウィルお兄様で2番目がジョーカスおじさんで、3番目が街の魔法具屋のパーシィで…」
「で、サーシャ?いつ私は出てくるのかな?」
「出てこないよ。」
「はぁ?」
「だって私はリアン様には恋してないから。」
彼女はサーシェシル=ディ=サー=ザイン。
今年12歳になった。
彼女の父はルーズローツ=ディ=サー=ザイン。
だから彼女は私の祖父の弟の子供の子供だ。
まあ遠い親戚だ。
そういう私はリアンハイツ=ディ=ヒューイ=カルディアーサ 14歳。この国の王太子の一番上の息子。
一応王位継承権は第二位。言ってしまえば将来の王太子で、国王になる。本心を言ってしまうと面倒さそうで嫌。
しかしその地位を使えるなら使ってしまおう。
サーシャとは両親同士が仲が良いので小さい時からよく遊んでいる。
簡単に言えば幼なじみだ。
「サーシャ、どうしたの?」
「来月、ウィルお兄様が、リリィ姉様と結婚してしまうのよ。少しは傷心に浸らせて!」
ウィルお兄様とはザイン公爵家の長兄だ。
今は18歳になった。彼は私と同じ金髪、碧眼。
サーシャの姉、リリィ姉様と9年の婚約期間を経て来月ようやく結婚する。
何やかんや言っていても彼女の初恋は彼でずっと健気に彼を目で追っていた。
まあ、周りには誤魔化していたみたいだけど私は気づいていたよ。
「だから君には私がいるだろう?」
「もうリアン様は何言ってるの?」
「だって金髪も碧眼も同じだから私で我慢すればいいじゃないか。」
「全然ち・が・う!」
「何だってウィル兄様にこだわるんだ。もうリリィ姉様と結婚するんだろ?」
「だって、ウィルお兄様は私が野犬に襲われて怖さで震えているところを颯爽と助けてくれたのよ!」
「じゃあジョーカスおじさんは?」
「いつも私に飴をたくさんくれたの。」
「じゃあ魔法具屋のパーシィは?」
「お父様と一緒に魔法具屋に行った時、ガラス瓶を割ってしまったの。そしたら大丈夫って心配してくれたの。」
…。目の前の天然すぎる少女に頭を抱えてしまった。
部屋の前をサーシャの母親であるシャーロレット様が通り過ぎた。彼女はこちらに気づいて頭を下げた。
サーシャと同じ明るい茶色の髪。笑顔が優しいすぎる。
いつみてもその周りは暖かい。
見いってしまう。
その美しさは歳を重ねるごとに増していく。
「リアン様。こんにちは。おいでになられていたんですね。いつもサーシャと遊んでくれてありがとうね。」
「こちらこそいつもすみません。」
私の初恋は彼女ではないかと思ってしまう。
だから初めはサーシャに興味を持ったのかもしれない。
しかし今は目の前で笑う12歳の天使に魅了されている。
彼女の屈託のない笑顔にはいつも癒されるし、幸せな気持ちになる。
「レオン様とレイチェ様は今日はダマガラン王国に行かれているのかしら?」
「はい、昨日から行きました。」
私の両親は昨日から隣国ダマガランに外交に出かけた。
明後日には戻ってくる。
何だか母は楽しそうに鼻歌を歌いながら準備をしていた。
そんな母を父は優しく見守っている。
「今頃レオン様はレイチェ様の横でハンカチを何枚も用意してあたふたしているのかしら?ふふふ」
ハンカチ?何枚も??
外交に行くだけなのに何で泣くんだろう?
花粉症か?
「あ、さっきエリックから連絡が来たわよ。
明日アイザック様が王都に来るらしいから一緒に来るんだって。今回は三日間滞在するらしいわ。」
「エリックがくるの!会いたい!」
「ちっ、あいつもついてくるのか。」
「リアン様何か言った?」
「何も…」
エリック=リンデトレス。12歳。
キルナスの森を領地とする辺境伯の息子だ。
サーシャと仲のいい嫌な奴だ。
シャーロレット様はなぜか笑っていた。
すると視線を右に向けて幸せそうな顔をした。
ああ、多分ルーズローツ様がお帰りになったんだ。
「ルース。お帰り。」
「シャーリー、ただいま。」
ルーズローツ=ディ=サー=ザイン。
金髪に碧眼を持つサーシャの父親。
その金髪はさらりと歩く度に靡くストレートだ。
青色の瞳。
その切れ長の目がたまに見せる捕食者の目つきは男の私でもゾクリとする時がある。
今でも仲のいいこの夫婦は遠慮を知らない。
子供の前では、お控えください。
お互いを思う気持ちが見ているだけでわかる。
理想の夫婦だ。
「おや?リアン様、おいでになっていたんですか?
サーシャもいたのか?」
シャーロレット様しか目に入らなかったのか…。
「ルース、明日アイザック様とエリックが来るそうよ。」
「ああ聞いている。」
「ここで泊まればいいわ。夕食頑張るから。」
何やら明日の話をし始めた。
「ねぇ、サーシャ。エリックは何番目?」
「ん…エリック…ねぇ…。わからないわ。」
「何で?」
「ん…だって順番なんてつけられない。ずっと好きだから。」
「えっ!」
ちょっと待て!
サーシャ、君には私がいるんだから!!
ルーズローツ様がクスリと笑っていた。
「サーシャが、一番シャーリーに似てるね。」
「どうして?」
「天然だから。」
「もう、少しはマシになっていると思うんだけどな。」
「どうだか。」
「もうルースなんて知らない。」
「嫌だな。そんなシャーリーなんだから私は君を好きになったんだよ。ほら拗ねないで。」
「ルースもそういうところ全然変わってないわね。ほらすぐにキスしてくる。」
「だってシャーリーが可愛くて仕方ないよ。愛してる、シャーリー。」
「ふふふ、私もよ。ルース。」
「リアン様…あっち行こう。」
「ああ…そうだね…。」
娘に気を使われる両親って…。
次の日、王宮に
キルナス辺境伯が息子エリックと一緒にやってきた。
国境近くのキルナスの森近くに住んでいるので二か月くらいに一度しか来ない。
「アイザック、わざわざ来てもらって悪かったな。」
「大丈夫だ。転移魔法を使えば簡単だ。」
「だったらもう少し頻繁に来てくれないか?話すことがたくさんあるんだ。」
「ルースがこればいい。こっちはシルバーサの動きを見張るだけでいろいろ忙しいんだ。この前も魔物を使って何やら企んでいた。」
「確かにそうだけど…そっちに行ってしまうとお前にいろいろ仕事を押し付けられてなかなか帰れないんだよ。
シャーリーが寂しがるだろ?」
「お前が、寂しいだけじゃないのか?」
「…お前も言うようになったな。そういえば今日は家に来るのか?シャーリーが会いたがっていたぞ。」
「シャーリーの料理食べたいから行くよ。」
この二人は仲がいい。
気の知れた親友だ。
以前は何かあったらしいが割と気が合うようだ。
その二人の側からすっと離れてエリックは
私とサーシャの前に歩いてきた。
彼は私の方を見て頭を下げた。
「リアンハイツ様、お久しぶりです。」
何か二カ月みないうちに背が高くなったか?
それにこういう仕草もスマートにこなせるようになったな。
「二カ月ぶりか?」
「そのくらいですね。」
「ねぇ、エリック!今日は家に泊まっていくの?」
隣からサーシャが嬉しそうに話をしてきた。
全くそんな嬉しそうな顔しなくてもいいじゃないか。
「サーシャ、こんにちは。」
「エリック、こんにちは。ねぇ、背、伸びた?」
「成長期だからね。」
「私もそうなんだけど伸びないわ。」
「大丈夫だよ。ルーズローツ様もシャーロレット様も低くはないだろ?そのうち伸びるよ。」
「そうかしら?なんか久しぶりに見たら大人になってない?
びっくりしたわ。なんかカッコよくなったかも。ふふふ。」
サーシャ…私の前で彼を褒めないで欲しいな。
嫉妬してしまうよ。
サーシャ、君には申し訳ないが、私の父上とルーズローツ様の間で話は纏っているんだ。
私も先週その事を父上から聞かされたんだ。
もう凄く嬉しかったよ。
初めて王太子の第一王子と言う身分に感謝した。
父上が頑張ってお願いしていたらしくて、ようやくルーズローツ様が折れてくれたらしい。
そのうち発表されると思うけど、君は私の婚約者になるんだ。
サーシャ、もう逃さない。
今日から三日間アルファポリス様限定の話があがります。
今日だけ19時アップ。明日は7時です。
ルキシス様、ジョーカスの出番です。
どうしても完結済みのこちらでいれれなかたものです。
もしよろしければお読みいただければ、幸いです。
なので小説家になろう様でも番外編をあげてみました。
単に次の話で煮詰まっているだけです…




