番外編 リリィの場合
その後の話です。
「断った??いい話じゃないか?」
「は?何で?」
弟は不機嫌そうにその青い瞳を細くした。
手で流れるような金髪を掻き上げた。
長い脚を組み替えた、
「何でリリィを王太子の奴の息子に嫁がせなきゃならないんだ?」
王太子殿下には第一王子となる5歳の男の子がいる。
ちなみに今ニ歳になる第二王子もいる。
更には現在三人目がお腹にいるらしい。
先日ルースの手元に彼の娘のリリィと第一王子を婚約させて欲しいという手紙が来たようだ。
「何でと・・・いわれても、だって第一王子だぞ!ゆくゆくは王太子、国王だよ?」
「別にそんなのは必要ない。リリィが本当に好きなやつならいいんだが相手は5歳だぞ?何がわかるんだ。もしかしてボンクラな奴に育つかもしれないし、他に好きな奴ができてリリィが悲しむかもしれないだろ?将来の王太子と婚約なんてもし悪役令嬢なんかにされたらたまったもんじゃない!」
ん?悪役令嬢??何だそれ?
そんな会話をしていたら息子のウィルとリリィがそろってリビングにやってきた。
ウィルヴェス、通称ウィル。私の9歳になる長男だ。
金髪、碧眼。少し癖毛。親バカかもしれないが利発ないい子だ。魔力も問題ない。ザイン家の跡取りだ。
リリーシア、通称リリィ。ルースの7歳になる長女だ。
明るい茶色の髪。シャーリーに似てフワフワしている。
青よりの碧眼だが、光に寄って輝く宝石眼だ。
はっきりいってかわいい。今、目を細めて私を嫌そうに見ている弟の子だとは思えない。両親のいいところばかり詰め込んでいる。
「ウィル?どうしたんだ?」
二人はお互いに顔を見て笑っていた。
「父上!僕たち結婚したいんです!」
「お父様!私たち結婚したいんです!」
「は?????」
飲んでいた紅茶をこぼしそうになった。
今なんて言った??
二人は手をつないでお互いを見て笑っている。
ルースは紅茶を一口飲んでから二人の方を見た。
「ウィル、リリィ、ちゃんと二人で話し合った?」
ルースは落ち着いていた。
「リリィはウィルが好きなの!
好きだから一緒にいたいの。」
「僕だってリリィのこと好き!」
私はあわててウィルを止めた。
「ウィル・・・ちょっと待て。」
しかしルースはすぐにその言葉を遮った。
「いいんじゃない。」
二人の言葉に驚いた以上にルースのその言葉に驚きを隠せなかった。
私はきっと動揺して落ち着きがなかっただろう。
紅茶の入ったカップをガシャンとテーブルに置き、
代わりに両手の手のひらをテーブルに置いてルースの方を見た。
ルースはゆっくりを紅茶のカップを口に近づけて味わいながら飲んだ。
「は??おい!ルース!そんな簡単に決めていいのか?
仮にもリリィの婚約を王太子殿下に断ったばかりなのに!!」
「いいんじゃない?ウィルなら願ってもない相手だ。こちらからお願いしたいくらいだったからね。」
「は???」
ちょっと待て!なんでウィルならいいんだ?
しかし王太子殿下の婚約を断って、すぐにウィルと婚約したなんて知れたら大変だ!
お前、ザイン家の印象を悪くするつもりか〜!
「じゃあウィル、リリィを頼んだよ。これから君がリリィを守ってあげてね。」
「はい!!」
大きな声で返事をしてウィルとリリィは手をつないで嬉しそうにリビングを後にした。
「ルース!王太子殿下にはなんて言って断ったんだ。」
「別に、嫌だって返事をしただけだよ。」
「は?」
ったくこいつは相手は王太子だぞ!
もっと礼儀があるだろう!!
「だって、王族にはリリィはもったいないからね。」
「もったいない?どういうことだ?」
ルースは椅子から立ち上がり窓を閉めた。
「兄様。ここからの話はあまり人に聞かれたくないんだ。」
やはり何かあるのか?
私は紅茶を入れなおすから少し待ってくれと言った。
そして使用人にしばらくこの部屋に誰も近づけないように伝えた。
「兄様、多分私に聞きたいことがあるよね?」
確かにある。だからコクンと頷いた。
以前から不思議だったことがある。
ルースがシャーリーと結婚して大きく変わったこと。
それは魔力がとてつもなく強くなったということだ。
もともとザイン家の魔力はとびぬけて強い。だから赤の魔法が使える。
しかしルースは国王陛下の子だ。つまり私の父方の従兄弟にあたる。いくら赤の他人ではないにしろルースはザインの血はない。養子のルースにはザイン家の子供が受け継ぐ魔力はない。魔力は無くは無いが普通だった。
シャーリーと出会ったくらいの12歳くらいには人より多いかなと思うくらいだった。だから何とか赤の魔法をぎりぎり使えていた。しかし難しい赤の魔法は無理だった。
多分あれはシャーリーを結婚してすぐのことだったろう。突然魔獣と召喚獣の契約を結んだ。それも四大魔獣の白虎だ。
あれには家中びっくりした。
それから今までルースの魔力は桁違いに強くなった。
多分私に引けを取らないくらいだろう。
いや今はそれより強いかもしれない。
魔力が突然強くなることなんてあまり聞かない。
どう考えてもシャーリーの存在を考えてしまう。
シャーリーがザイン家に嫁いできて一緒にいる時間ができた。私の魔力も少し強くなったような気がするのだ。
そのうちルースに聞いてみようかと思って今に至る。
「シャーリーなのか…」
私は聞いた。
ルースは頷いた。
「シャーリーのスキル…あ、いや、能力なんだ。」
「やはりな…」
「シャーリーの魔力は使うわけではない、影響を与えるんだ。だから近くにいるだけで魔力があがるんだ。」
私は考え込んだ。
つまり…結婚してやることをやればさらにその影響が出るってことか…。おっと…言葉が悪いな…。
だからルースだけが桁違いなのか。
「王太子殿下はダメでウィルがいい理由はそこか…。
リリィはそれを受け継いでいるのか?」
「そう。だからウィルがいいと思う。
だって王族に魔力はあまり必要ないでしょう?
ザイン家にはあるならあったほうがいい。特にウィルは次期当主だ。もし今後この能力が受け継がれるならザイン家がいいと思う。」
確かにそうだ。他人の魔力を強くする能力…。
王家の闇として赤の魔法を使うザイン家としては手に入れておきたい存在だ。
「わかった…。お言葉に甘えてリリィはいただくよ。」
ルースは目を閉じて頷いた。
「私はザイン家の子でよかったと思っている。」
ルースは目を開けて私を見た。
「この家族はいつも暖かい。私はこの家族が大好きだ。
リリィをよろしくお願いします。」
ルースは立ち上がり頭を下げた。
そして言葉を続けた。
「そして兄様、あなたの弟になれてよかったです。
ありがとうございました。」
私はルースに近づいて頭をポンと叩いた。
ルースが頭を上げた。
「柄にもないことするな。」
私はルースの頭に手を乗せた。
ルースは笑った。
あの時、父上に手を置かれて笑った時と変わらない笑顔だった。
※※※
「リリィはウィルと婚約させるよ。」
「あら、計算通りなのかしら?」
「早かれ遅かれそうなるんだよ。」
「でも、今朝リリィにはウィルか第一王子がどっちがいい?なんて聞いてたわよね?リリィはウィルに懐いているから聞くまでないじゃない。」
「…」
「それに王太子殿下にはまだ断っていないわよ。何カール兄様やリリィを煽ってるの?」
「まあ、それは兄様の立場を考えていたからで…
殿下の申し出を断ってすぐに婚約したとか…あの兄様のことだ。頭抱えてしまう。だから少しウィルとリリィの事を匂わせようとしたらタイミングよくあの二人が来たんだ。」
「まあ、確かにね。何やかんや言ってお兄様っ子よね。」
「うっ…」
「殿下諦めてくれるかしら?次女のサーシャはアイザック様のところから話があるし…。魔力のこと考えるて出来ればリンデトレスに嫁がせたいところよね。」
「もう!まだ3歳なのに何で今からこんなこと考えなきゃならないんだ!」
「まあまあ、まだ先の話よ。」
「リアンもエリックもどっちでも構わないがサーシャの前に膝まづいて頭を下げた方だ!」
「ルース…落ち着いて…」
「もう!シャーリー、ひとまず男の子が欲しいんだよね?」
「ええ。次は男の子がいいわ。」
「じゃあ早く作ろ。ちょっと予定とは違うけど。」」
「あ。いや、何でそうなるの?」
「そのあとまた女の子を産まなきゃいけないだろ。シャーリー、愛してる。」
「あ、いや!次も女の子でいいから!」
※シャーリーメモ
リアンはレオンハルト様の長男で5歳です。
エリックはアイザックの長男で3歳です。
なんやかんやいってルースはアイザック様とは仲良くやっているらしい。仕事だから仕方ないといいながら楽しそうだ。
割とウマがあうらしい。少し意外。
それと次は男の子でした。
…王太子殿下とアイザック様からもう一人女の子を作れ!と
迫られてます。
ルースはニコニコ笑っています…。
「ルースが断るって言ってきたぞ!あいつは!!
将来の王妃になれるんだぞ!」
「レオン様、そんなに怒らないで下さい。今回は仕方ないですよ。縁がなかったんですよ。私にもシャーリーからも丁寧に謝罪の手紙がきましたよ。」
リリィの方が2歳上だし、ウィルと婚約させるらしいですね。…今回は仕方ありませんね。」
「ん…リリィは頭も良いし、機転も効く。何よりルースの子供にしては惜しいくらい可愛い。まあシャーリーの子だからな。欲しかったがな…惜しいな。」
「父上!」
「リアン、どうした?」
「僕はサーシャが好き!」
「そうか!そうだよな!リアンはサーシャが好きなのか。サーシャはきっと可愛く綺麗で優しく賢い子になるな。じゃあ早速ルースに手紙を書こう!」
「ルース、また殿下から手紙が来てるわよ。」
「見なくても分かるから捨てておいて。」
お読みいただきありがとうございます。
ルースとシャーリーも大きくなりました。




