11.理佐side2
恭にぃの頬にキスをした後、あまりに恥ずかしすぎて玄関へ駆け込んだ。
玄関のドアを背に呼吸を整えていると、お兄ちゃんが帰ってきたらしく恭にぃと話をしているのが聞こえた。
盗み聞きしているようで気が咎めたが、立ち去る選択肢は無かった。
話を聞いていると、どうやらお兄ちゃんも彼女さんと揉めなかったようで安心した。
そのうち、お兄ちゃんの口から舞香さんの名前が出てドキッとした。恭にぃが今、舞香さんをどう想っているのかは、怖くて直接聞けてなかったから。でも話を聞く限り、心配する必要はないのかな・・・。
と気を落ち着けようとしたが、お兄ちゃんの彼女さんからの電話がきて、何故か恭にぃがこれから舞香さんのお見舞いに行くことになったようだ。
1人で行くのかな?どんな話をするんだろう?言いようのない不安が胸を締め付ける。
その後、夕食を食べ、風呂に入ったはずだが、あまり記憶になく、気が付いたらPCの前で恭にぃのログインを待っていた。
ログインしてゲームを始めても、なかなか集中出来なかった。
私の様子がおかしいのに気が付いて、恭にぃが心配してくれるが、本当に舞香さん家に行ったのかな?何を話したのかな?気になるけど、自分からは聞けず曖昧に誤魔化すしかできなかった。
様子がおかしいことを気にしてくれたのか、明日の放課後も会おうと提案され、不安はあったが会える嬉しさには勝てないので、了承してログアウトした。
ベッドに入った後も、舞香さんとの話次第では、最悪の展開もあるのではないかと思うと自然と涙が出たが、そのまま寝てしまったようだ。
色々悪い想像ばかりしていた為、待ち合わせ場所に着いても落ち着かなかった。
「理佐ちゃん、お待たせ。」
恭にぃが近寄って来るなり、心配そうな顔になり、
「大丈夫?顔色悪いよ。」
「う、うん、大丈夫・・・。」
「じゃあ、座れるところに行こう。」
といって、私の手を取って、どんどん歩いていく。強引に引っ張ってくれるだけでも嬉しい。
お客さんの少ない喫茶店に入り、席に座って冷たいものを注文する。
「理佐ちゃん?体調が悪いの?」
うまく返事も出来ず、首を横に振って否定する。しばらく何かを考えているようだったが、
「健一から何か聞いた?それとも・・・、昨日の玄関先での話を聞いてたのかな?」
思わずビクッと身を震わせた。もうバレバレだ・・・。
「そっか・・・。もしかして妙な誤解をさせて心配かけたかな。ふ~、昨日、舞香の家に行って話をしたよ。でも・・・。」
恭にぃが昨日舞香さんと話したという内容を丁寧にゆっくり説明してくれた。
私は、恭にぃがもう舞香さんに想いは無いという話を聞いて安心したと同時に、そう直接言われた舞香さんの気持ちを考えるといたたまれなかった。
でも、今はもう態度には出さないけど、恭にぃもきっといっぱい傷ついたんだ・・・。癒したいな・・・。
「それで、理佐ちゃんは前に友達からでもいいって言ってくれたけど、改めて俺から言う。理佐ちゃん、恋人として付き合って貰えませんか?」
いきなりで一瞬頭が真っ白になったが、理解するともう、溢れる涙を抑えきれなかった。もちろんイエスしかない。でも口がうまく動かない。
「うう~、も、もぢろん。わだしがらも、おめがいします。」
うまく喋れないから、首を縦に何度も降り、肯定を示す。
「ありがとう。これからもよろしくね。」
と両手を包み込むように握られて、温かい気持ちになった。
それから、これまで遠慮して聞けなかったことも含めて色々な話をした。
ぐっと距離が近づいたことを感じられた。