10.舞香
修正しました。
ご指摘いただいた通り、理佐との交際を告げる肝心のセリフが消えていました。
健一と家の前で話し込んでいたが、
「ん、電話だ。亜弥からか。」
「それじゃあ、俺は帰るよ。」
と健一に言って帰ろうとしたが、
「ちょっと待て!亜弥が恭平がいるなら代わってくれって言っている。」
え、何だろう?と思いながら健一のスマホを受け取る。
「もしもし?」
『あ、和田君、健一といてくれて良かった。お願い!舞香の家に見舞いに行って欲しいの。』
あれ、そういえば今日教室にいなかったような・・・、休んでた?
「えーと、なぜ俺に?」
『だって、幼馴染でしょ?お隣さんでしょ?お願い!見舞いに行って、出来れば話を聞くだけでもして欲しいの。』
なんか必死過ぎる。正直会うのは気が重いけど・・・。
「は~、分かったよ。今から帰るところだったから寄ってみるよ。」
『ありがとう。本当にお願いね。』
そして、健一に代わろうとする前にプツッと切れた。
「切れたよ。なんかすごい必死に舞香のお見舞いに行ってくれってお願いされた。」
「そうか・・・。で、行くのか?」
「まあ、引き受けたしね。果物でも買っていくか。」
「まあ、体調次第だけど、ちょうどいいから少し本音で話してもいいんじゃないか。」
「・・・、ああ、そうだね。それじゃあ、行ってみるよ。」
途中で、あまり大げさにならない程度に果物を買って、舞香の家を訪れた。
舞香のお母さんは相変わらず歓迎してくれて、舞香の部屋へと通された。
お母さんが部屋を出て行った後、しばらく沈黙が続いたが、
「具合はどう?」
と、俺が聞くと、ようやく舞香が顔を上げてこっちを見た。泣いたのか目が充血してる。
うん、今日は舞香の顔をみても俺は冷静だ。舞香は何度か何かを言おうとしては言い淀んでいたが、意を決したように話し始めた。
「体調は別に悪くないわ。精神的なものだから・・・。ちょっと私の話を聞いてくれる?」
そう言って、少し前の俺に対して態度がきつくなった頃からこれまでのことを話し始めた。
俺は、舞香のこれまでの想いを、相槌を打ちながら邪魔しない様に聞いていた。
一通り話し終わった後、謝られた。
「今更だけど、本当にごめんなさい。」
正直、ただの幼馴染だったということを前提として考えると、謝られる程のことをされただろうか?
キツイ態度を取られたのも、好きでない人相手なら、まあよくあることだし。
その時は腹を立てたが、嘘告の時に笑ってたのも、まあ可笑しければ笑うだろうな。
それよりも驚いたのは、舞香が俺のことを好きなことに気づいたと言われても、俺の感情が全くと言っていいほど動かなかったことだ。
「いや、俺の方も、あの後、態度が悪かったし。要は勝手に期待した挙句、失望して裏切られたような気になって、勝手に腹を立ててたってだけだから。」
「でも、元はと言えば私が・・・」
「分かった。謝罪は受けるし、俺も態度が悪かったことは謝る、ごめんなさい。これで手打ちにしない?」
謝罪は要らないと言っても、舞香の気がおさまらないだろうから、受け入れて気が楽になるならそれでいいな。
「でも、いいの?そんな簡単に?」
既に俺の中で大した比重を占めてないから簡単って印象になってるんだろうな。流石にそれを直接言うほど空気が読めない訳ではないが。
「いいんだよ。過ぎ去った後ろばっかり気にしてても仕方ないでしょ。」
「・・・、分かった。ありがとう・・・。でも、もう過ぎ去ったことなんだね。」
悲しそうに呟くのが聞こえたが、実際そうなのでどうしようもない。
なんとなく居心地の悪い沈黙が続いた後、舞香の目に急に力が入った気がしたと思ったら
「一つ聞いてもいい?」
「なに?」
「昨日、一緒に歩いていた子は誰?」
昨日?理佐ちゃんと一緒のところを見たのか。
「ああ、理佐ちゃんだよ。ほら、健一の妹の。」
「え、あの子が?ええー凄く可愛かったけど。」
うんうん、そう思うよね。見た目もそうだけど、態度とか振る舞いとかが可愛いんだよな。
「!!!」
一瞬顔が緩んだのを見られたのか、舞香の目がきつくなる。
「私、さっき恭平の事好きだったって言ったけど、簡単に流されたよね。私じゃダメなの?一切望みはないの?」
やっぱりはっきりしないとダメだよな。なあなあで誤魔化し続けるのも失礼だしな。
「実を言うと、俺は、今度の舞香の誕生日に告白しようと思ってたんだ。」
「っ!!!」
「でも、その前にほら、『ただの幼馴染』『彼氏面しないで』『あんたを彼氏なんかにするわけない』って言われただろ。告白前に振られてしまったからね。」
「そ、それじゃあ?」
「さっき言った、『勝手に期待した挙句、失望して裏切られたような気になって』って言ったのは、そのことなんだ。」
「そんな・・・。」
舞香も言葉が出ないようだが、そのまま話す。
「正直、今、舞香に対して幼馴染としての好意はあるけど・・・、異性としての好意は、もう無いんだ。それで、舞香が見た通り、今は理佐ちゃんとつき合い始めたんだ。ゴメン、自分が随分薄情だなって思うけど、嘘はつけない。」
「そう・・・なんだね。うぅっ、ごめんなさい。私がいっぱいあなたを傷つけたのね。もっと素直になっていればそんなことを言わせずにすんだのに・・・。でも、この状況でも悲劇のヒロインみたいな気持ちにもなってる自分が一番嫌・・・。」
俯いた顔から涙が垂れる。
こんな時、どう言ったらいいのか・・・、俺の少ない人生経験では分からない。
でも、嘘や誤魔化しを言う気もない。
「これからは、今まで通り、幼馴染として接するけど、舞香が嫌なら距離をおかれても仕方ない・・・。」
「ううん、幼馴染として接してほしい。このまま縁まで切られると辛すぎる・・・。」
「分かったよ。じゃあ、これで帰るよ。すごく心配してくれる友達もいるんだから、また学校で。」
「うん。またね。」
来る前の予想以上に重い話になったけど、はっきりさせれて良かったと思う。
舞香には悪いけど、ズルズル引きずって、理佐ちゃんに余計な心配は掛けたくないと思った。




