Regy(レグウィー)
前回、突然7年の月日が流れた事に少なからず困惑したかもしれませんが、この7年の間に何があったのかは、後々明かされていくので、ご了承下さい。
Real・Gadget・yield”。通称Regy。
7年前、若干18歳の若者が設立した企業で主にホビー商品を販売している。当初こそ小さな一店舗のみだったが、並べられている商品は今まで見た事の無い画期的な物ばかりで、大手ホビー産業の技術力でも開発する事が出来ない程、クオリティが高い代物だった。
そうなると当然マニアの間で飛ぶ様に売れ、まるで流星の如く瞬く間に事業は全国へと拡大し始めた。そして、たった数ヶ月で歴代のホビー商品最高売上額を塗り替えて見せた。
こうなると株主達は、是が非でも経営に関わりたいと考える。しかし、社長の影野重孝は敢えて上場企業にはせず、完全なワンマン経営を貫いた。開発経緯は一切不明、会社で働く社員ですら知らされていない。
過去に数多くの記者やテレビプロデューサーが取材を持ち掛けたが、全て門前払いを受けた。唯一関わりを得られるのは商品紹介のテレビCM時のみ。しかし、それも社長では無く秘書が全て対応している。
経歴不明、私生活も一切不明。全てが謎に包まれている、そんなミステリアスな魅力を持つ彼に非公式のファンクラブが直ぐ出来たのは言うまでも無い。
「はぁ~、やっぱりカッコいいわ~」
……という記事が書かれているサイトを仕事中に閲覧している一人の受付嬢。記事の最後に張られた影野重孝の写真を見つめながら、溜め息を漏らす。
「スキルも実力もあって、おまけにイケメンと来た。もう非の打ち所が無いわよね~。あぁ~ん、こんな男性と燃える様な夜を過ごして見た~い!!」
両手で自身を抱き締めながら、くねくねと気持ちの悪い動きをして見せる。その様子に出入りする社員は少し引いていた。
「一度でいいから会って見たいな~」
***
Regy社長室。影野は唯一の家具である椅子に座り、机に積み上げられた書類に目を通しては左と右の二種類に仕分けていた。すると扉がノックされる。影野が一声掛けると入って来たのは、秘書の女性だった。
「社長、そろそろお時間です」
「待て、後一分で終わらせる」
「畏まりました」
そう言うと秘書は扉付近で待った。それから一分後、影野は宣言通り書類の仕分けを終わらせ、右側に纏めた書類を持ち上げると秘書の下まで歩き、手渡した。
「これが今回採用する物だ。後は全部却下、処分は任せる」
「畏まりました」
「では行くか」
「はい」
部屋を出た二人は長い廊下を歩く。途中、社員数人とすれ違い、その全員が頭を下げて来た。その内の女性社員達が影野の背中を見ながら、キャーキャーと小さく騒ぐのが聞き取れた。そんな様子に秘書がクスッと笑いながら口を開く。
「モテモテですね」
「そう言うお前こそな」
影野の言う通り、女性社員達程では無いが、何人かの男性社員達も女性秘書に熱い視線を送っているのが伝わっていた。
「どうやら社内では私達が恋人関係なんじゃないかって、噂されてるみたいですよ」
「おいおい、勘弁してくれ」
そんな雑談をしながら、二人はエレベーターに乗った。通常、社員達が使う物では無く、社長のみが使う事を許されている特別なエレベーター。特別というだけあり、他のエレベーターよりも頑丈な造りをしている。扉も二重構造になっている。
エレベーター内に乗り込むと、秘書が階数のボタンに手を伸ばす。Regy本社は200階建ての超高層ビル。部署は勿論、社員達の居住区にもなっている。因みに社長室があるのは最上階である200階。
しかし、秘書が押したのは階では無く開延長ボタン。扉が開きっぱなしになったのを確認すると、今度は1階のボタン、100階のボタン、そして200階のボタンを三回連続で押した。
すると突然、押した階数ボタンと開延長ボタンのランプが消え、勝手に扉が閉まった。ぐんぐんと下へと降りて行く。150……100……50……そして階数の表示が1を指し示した瞬間、更に下へと降り始めた。このビルに地下は存在しない。階段は勿論、階数ボタンにも地下行きは無い。にも関わらず特別エレベーターは一階よりも下に降りて行く。数十秒後、漸くエレベーターが動きを止め、二重構造の扉が開かれる。
二人が降りるとそこに広がっていたのは、巨大な地下施設だった。200階建てのRegy本社よりも広い土地のその場所では、ホビー商品とは到底思えない様な近未来の兵器を製造していた。機械が機械を作る中、その間を大量の人影が動いていた。が、よく見るとそれは人では無かった。全員漏れ無く怪異人だった。上の階で人間の社員達が働く一方で、地下では怪異人達が潜伏していた。
二人が立っているのは展望フロア。上から見下ろす形で、彼らを後目に二人はそのフロアを後にした。
辿り着いた先は長方形の広い部屋。大理石の床と壁、天井には何かの絵が描かれていた。部屋の最奥には壁に固定された椅子というより、玉座に近い家具が置かれていた。しかし、それ以外家具は置いておらず、上の社長室と同じ位殺風景だったが、不思議と神聖な雰囲気が感じられた。
そんな玉座に影野は腰を下ろす。その瞬間、錠が描かれた画面が空中に浮かび上がった。
『パスコードをどうぞ』
無機質な声が画面から聞こえて来る。影野は目の前に浮かび上がるキーボードを操作し、パスコードを入力していく。
『指紋認証をどうぞ』
パスコードを入力し終えると、今度は手の枠が描かれた画面が新たに浮かび上がる。影野は右手を画面に押し付ける。すると一本のブルーライトが下から上へと流れたかと思うと、全体が緑色に光った。
『網膜認証をどうぞ』
続いて現れたのは目の枠が描かれた画面が現れ、影野はその画面に目を近付ける。すると再び一本のブルーライトが下から上に流れ、やがて全体が緑色に光った。
『声帯認証をどうぞ』
今度はマイクの枠が描かれた画面が現れた。影野は椅子に座り直し、ゆっくりと口を開く。
「“マスターグレー”」
影野の言葉を読み取った画面は全体が青くなり、しばらく静止した後、緑色に光った。
『全認証動作完了。お帰りなさい、マスターグレー』
無機質な声で出迎えられたかと思った矢先、複数の画面が空中に次々と浮かび上がった。それを確認した影野ことマスターグレーは、漸くといった様子で両肩を落とす。
「お疲れ様です、社長」
「ここでは違うだろ」
「これは失礼致しました。マスターグレー」
「あぁ、だからそろそろお前も素に戻ると良い。“花村”」
「……うん、そうさせて貰おうかな。いやー、やっぱりハイヒールって歩きづらいね」
先程までの清楚な女性から一変。ハイヒールを脱ぎ捨て、キッチリ留めていたYシャツのボタンを外し、だらしなく胸をさらけ出す。
「おい、いくら機械とはいえ体つきは女性だ。もっと恥じらいを持ったらどうだ?」
「えー、だって男の人ってこういうのが好きなんでしょ?」
そう言いながら、服の隙間から見える胸の谷間をチラチラと見せ付ける。
「男の人って、お前だって男じゃないか」
「僕は第二次成長期が始まる前に脳味噌だけになっちゃったからね。男女がどうとか、よく分からないよ」
「……というか、この7年で性格変わってないか? 敬語はどうした?」
「逆にもう7年の付き合いなんだから、二人きりの時位は許してよ。僕との仲だろ?」
「まぁ、他の連中の前でしなければ別に構わない」
「良かった。それでこれからどうする?」
「もうすぐ会議が始まる。お前は先に出席しておいてくれ。この管理システムの調整が終わったら俺も向かう」
「オッケー。なるべく早く来てよね。幹部の皆はマスターグレーに忠誠を誓ってるけど、幹部同士は仲が悪いから早く来ないと最悪殺し合いに発展しちゃうよ」
「あぁ、分かってる」
それだけ伝えると花村は脱ぎ捨てたハイヒールを片手に持ち、裸足で部屋を出て行った。一人残った影野は管理システムと呼ばれる画面の操作を始めた
やがて調整も一通り終わると、管理システムの画面を閉じた。そして静寂に包まれている空間を見回す。
「7年……あれから……あの忌まわしき日から7年……漸く……漸くここまで準備が整った。必ず成し遂げて見せる。怪異人の怪異人による怪異人の為の世界を!!」
玉座の手すりを強く掴み、決意を顕にする。その時、部屋の扉が勢い良く開かれる。血相変えた様子で飛び込んで来たのは花村だった。
「た、大変だよ!!」
「どうした!? 何があった!?」
「幹部同士で殺し合いが始まっちゃったよ!!」
「な、何だと!!?」
謎の女性秘書の正体は花村大悟でした!!
そして次回、新生・秘密結社グレーの幹部連中が登場!!
次回もお楽しみに!!
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