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欠陥品

前回、何とか谷原を倒した影野。

今回、彼が途中で倒れてしまった理由が明かされる!!

 「……んっ……」


 谷原が目を覚ますと、そこには見知った天井ではなく、こちらを上から覗き込む暑苦しい組員達の顔が広がっていた。


 「「「「「若頭!!!」」」」」


 「……離れろ……鬱陶しい」


 谷原が目を覚ました事に歓喜する組員達。むさ苦しい男達がはしゃぐ中心で寝ている谷原にとって、そこはまさにサウナその物だった。組員達を下がらせ、谷原は上半身を起こそうとする。


 「ぐっ!!?」


 が、それは出来なかった。体に力を入れた瞬間、電流が走るが如く激痛に襲われ、全身から尋常じゃない汗が吹き出して来た。


 そんな苦痛に苛まれる谷原に、下がった組員達が慌てて駆け寄る。


 「無理しちゃ駄目ですよ。若は三日間ずっと眠っていたんですから」


 「三日だと……そんなに寝てたのか」


 「幸いにもマスターグレーの所にいた脳ミソが、点滴を打ってくれました」


 よく見ると左腕には、病院などで見掛ける点滴が付いていた。


 「命を助けられた訳か……それであの二人はどうした?」


 「はい、この三日間足繁く若の見舞いに来ています。多分、そろそろ来る筈です」


 『もう来てるぞ』


 声のする方向に顔を向けると、そこには影野と花村の姿があった。


 「貴様ら、勝手に入りやがって。ノック位したらどうなんだ!?」


 不法侵入した影野達に正面から突っ掛かる組員。


 「したよ。でも誰も出なかった。だからもしかして目が覚めたんじゃないかと思って、勝手に上がらせて貰った」


 「だとしてもな……」


 そう言いながら影野は組員を押し退け、谷原の下まで歩く。まだ不満を言い足りない組員の肩を花村がポンポンと叩き、こちらに振り向かせる。


 「心配しなくても玄関は鍵穴を傷付けずにピッキングしたから安心して」


 「いや、そういう事じゃないんだが……」


 サラッとピッキングした事を述べる花村。更に傷付いていないという事は、不法侵入した形跡すら残っていない事を表している。つまり、例え裁判で訴えたとしても勝てる可能性は限りなく低い。


 この鮮やかとも言える犯罪行為に、谷原を含めた組員達は苦笑いを浮かべる。


 「よっ、やっと起きたか。寝坊助さん」


 「迷惑かけちまったみたいだな」


 「そうでもないさ。それなりの収穫はあった」


 「どういう事だ?」


 「花村」


 「はいはーい」


 影野が花村に声を掛けると、アシスの胸が門の様に開いた。中には小さなクッションが入っており、その上には谷原が落とした指輪が置かれていた。その指輪を取り出し、影野に手渡した。


 「落とし物だ」


 「成る程、確かにそれなりの収穫と言えるかもしれないな」


 「この三日間、ここにいる花村に指輪を調べて貰った。すると面白い事がいくつか分かった」


 「面白い事?」


 「ありがとうマスターグレー。ここからは僕が説明するね。まずこの指輪、粗悪品だって言ってたけど、実際はもっと酷い欠陥品だね」


 「何だと?」


 「そもそもパワードアクセサリーは、非労運専用に作られた装備品だから、前提条件として放射線による突然変異が必要不可欠なんだ」


 「あぁ、だから俺みたいな普通の人間が扱えば、最低でも数日の間は筋肉痛になると言われた」


 「それは嘘だね。僕達怪異人と互角の非労運を何十倍も強くするんだよ? 筋肉痛程度で済む筈が無いよ」


 「だが、俺はその指輪を受け取る時に直接元政府関係者に聞いたんだ」


 「その全身を駆け巡る痛みが証拠だよ。いくら筋肉痛だからって全く動けないなんて不自然じゃないかな?」


 「まさかあの野郎、この俺にガセを掴ませたっていうのか……」


 「それは分からない。もしかしたら何も知らなかったかもしれない。確かなのは、この欠陥品を普通の人間が使えば、最悪命を落としてたと思う」


 「なっ!!?」


 筋肉痛程度に考えていたのが、まさか命を落としていたかもしれないと聞かされれば、驚くのも無理はない。だが、ここで当然の疑問も浮かび上がる。


 「待て、それなら俺はどうして生きているんだ?」


 「それは君がある程度鍛えていたのと、戦い自体が早期決着だったのが要因だね」


 「つまりこういう事か。俺が実力を図ろうと値踏みをした結果、その相手に命を助けられたと……」


 「結果的にだけどな。感謝しろよ」


 「……ここらが限界か……」


 「何だって?」


 「おい、お前ら!!」


 「「「「「はい!!!」」」」」


 怪我人とは思えない程の声量で、組員達に声を掛ける。谷原の一声に組員は一列に並び、背筋を真っ直ぐ伸ばして返事をする。


 「本日をもって我々怪真会は秘密結社グレーの傘下に入る!!」


 「「えっ!!?」」


 谷原のまさかの言葉に影野と花村の二人は、思わず声を上げる。しかし、そんな二人を無視して谷原の言葉は続く。


 「文句のある奴はいるか!!? いるなら前に出ろ!!」


 「「「「「いえ!! ありません!!」」」」」


 満場一致。誰一人文句を言わない事に谷原は満足そうに笑みを浮かべ、漸く影野の方に顔を向ける。


 「……という事だ。俺達怪真会はマスターグレー、あんたの下で働く事にした。よろしく頼む」


 「「「「「よろしくお願いします!!!」」」」」


 組員達に頭を下げられ、困惑を隠せない影野。


 「い、いや……勿論、大歓迎だ。そもそも仲間にするつもりで来た訳だからな。だけど、本当に下で良いのか? 俺としては対等な関係でも構わないんだが……」


 「命を助けられたんだ。これ位は当然だ。命には命をもって返すのが礼儀……なら、俺達は全力で手を貸す」


 「そうかい……そういう事なら、遠慮なく貸して貰うとするかな」


 そう言いながら影野は握手を求める。谷原もそれに気が付き、握手を返した。


 「……っ……!!」


 「?」


 一瞬、影野の表情が強ばるが、谷原が気が付くよりも先に周りが一斉に沸き立った。


 「うぉー!! これからやって来るんだ!! 怪異人達の時代が!!」


 「その歴史的瞬間に立ち会えるだなんて……」


 「最高だぜぇええええええ!!!」


 「これからよろしくお願いします!! マスターグレー!!!」


 「花村のアニキもよろしくお願いします!!!」


 「ア、アニキ!? ぼ、僕がアニキか……えへへ、何だかちょっと嬉しいかも……」


 組員達にアニキ呼ばわりされ、少し嬉しそうにする花村。


 「それでこれからどうするつもりなんだ? 俺達はいつでも動けるぞ」


 「焦るな。まずはその傷を完全に癒してからだ。普通の人間とはいえ、お前にはこいつらをまとめ上げるだけの統率力がある。しばらく近くで学ばせて貰うぞ」


 「こんな俺ので良ければ、いくらでも学ばせてやるよ」


 「ふっ、楽しみにしてるぞ。それにしても人数が多いせいか、ここはムンとするな。ちょっと外の空気を吸って来る」


 「ん、あぁ、分かった」


 「花村、少しの間こいつらといてくれ。俺は外の空気吸って来る」


 「分かったよ。じゃあ次は今後グレーに導入しようと考えている新兵器について語るよ」


 「うぉおおおお!! 新兵器って言葉聞くだけでワクワクするぜ!!」


 「俺もだぜ!! さすがは花村のアニキ!! 頭の出来が違うぜ!!」


 いつの間にかすっかり組員達と仲良くなった花村。そんな彼らを尻目に、影野は部屋を後にする。


 「…………くそっ……」


 一人になった影野は、谷原と握手した右腕を押さえながら皆に聞こえない小声で呟いた。


 「(“部分成長”……細胞も無理矢理急成長させた反動がここまでとは……三日経っても全然痺れが取れない。正直、この技はもう使わない方がいいな。あの指輪同様、“欠陥品”だ……)」


 細かく痙攣する右腕を見ながら、影野は静かに物思いに耽るのであった。












 「……皆、集まった様だな」


 姫宮家の別荘。今やここはグレーの秘密基地と化している。地下のとある一室、広々とした劇場の様な空間に奥には壇上があった。


 そんな場所に近藤、姫宮、花村は勿論の事、治療を無事に終えた谷原と組員達が集まっていた。


 全員が揃った事を確認した影野が壇上より現れる。花村に頼んで付けて貰った自動スポットライトが影野を照らす。


 「遂に我々は組織としてのスタートラインに立つ事が出来た。ここに秘密結社グレーの設立を宣言する!!!」


 「「「「「うぉおおおおおおおおおお!!!」」」」」


 「非労運達に!! 政府に!! 世界に見せ付けてやろう!! ここから我々の革命が始まるのだ!!!」


 影野が怪異人になって半年。遂に世界に対する反撃の狼煙が上がるのであった。

遂に秘密結社グレー設立!!

ここから彼らの本格的な活動が始まるのだ!!

次回もお楽しみに!!

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