新たな仲間
前回、姫宮レジーナとの戦いに勝利した影野。
今回は仲間にした姫宮と近藤を引き合わせる回になります。
「……と、言う訳で新しく仲間になった“姫宮レジーナ”だ」
「姫宮レジーナです。どうぞよろしくお願いします」
「…………」
俺様事、“近藤強”は目の前に広がる光景に酷く動揺していた。切っ掛けは、この“影野重孝”という男が俺様のテリトリーに無断で侵入して来た所からだった。
当然、俺様は影野と戦い、あと一歩という所で負けてしまった。敗者が勝者に従うのは自然の摂理だ。俺様は影野の部下になった。
そして何と驚くべき事に影野も俺と同じ野望を抱いていた。怪異人の怪異人による怪異人の為の世界。その為に影野は俺が与えた情報を頼りに仲間捜しへと出掛けた。正直、見つけられないと思っていたんだが……その予想は見事に外れた。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「あ、あぁ……何でもない。ちょっと考え事をしていただけだ」
ナメクジの様な見た目からは想像も付かない程、可愛らしい声。心なしか、眉間に寄せたシワも緩む。
「それで? 何か質問はあるか?」
が、影野の声を聞いた瞬間、再び怒りの感情が沸き上がった。俺様は今、めちゃくちゃ怒り心頭だった。何故なら……。
「幾つか……幾つか聞きたい事があるが、まず何よりも先に……」
ビシッ!! と、近藤は住居兼秘密基地のキャンピングカーを指差す。キャンピングカーは、粘液で汚れまくっていた。外側は勿論、中は見るも堪えない光景になっていた。飲み物でも取ったのだろう、冷蔵庫の中も粘液まみれだった。
「掃除しろぉおおおおお!!!」
二度目となる近藤の怒鳴り声が響き渡る。
***
「……何故、俺がこんな事を……」
姫宮を連れ帰った俺は、本来ならば感謝される立場だ。それなのに現在、粘液まみれになったキャンピングカーを“一人”で掃除している。
「口より手を動かせ、手を」
近藤が偉そうに命令する。おかしい。立場や実力でも上の筈なのに、どうしてこき使われているんだ。いや、それよりも気に入らないのは……。
「あの……私も手伝った方がよろしいのではないでしょうか? 元はと言えば、私の粘液に原因がありますし……」
「あぁ、良いから良いから。姫宮さんはそこで見守ってやって。そもそもこいつが無許可でキャンピングカーに乗せたせいだから、気にしなくて良いよ」
「そ、そうですか?」
気にしろよ。でも、確かに姫宮が手伝ったら、余計な所に粘液が飛んで、結局掃除する場所が増えるだけか。それなら大人しく掃除に専念した方が良さそうだ。
「それじゃあ掃除が終わるまで、姫宮さんの身の上話を聞かせてよ。怪異人になった理由と、仲間になった経緯は聞いたから……それ以外で」
「私の話なんかで良ければ……そうですね、あれは私が物心付いた頃の事でした。お母様と一緒に…………」
あちらは楽しそうに雑談しているみたいだが、全く呑気な物だ。まだまだ問題は山積みだって言うのに……。
***
粗方掃除を済ませ、二人の下へ歩み寄る。
「それで俺は言ったんだ『必ずビッグになって帰ってやる!!』ってな」
「強さんって、本当に面白い殿方ですね」
「それって褒めてるの?」
「勿論です」
「なら良かったぜ。あはははは!!!」
「うふふふ」
ちょっと見ない間に随分と仲良くなったらしい。それはそれで少し寂しい気持ちがある。俺があれだけ苦労したというのに、こいつはものの数分で絆を深めた。
「おっ、掃除は終わったのか?」
「あぁ、隅から隅までバッチリだ」
「そりゃあ良かった。それでだ、早速聞きたいんだが……お前達、いったいどうやって戻って来たんだ? 電車……は使える訳が無いしな」
近藤の言う通り、電車は使えない。姫宮がいるからな。じゃあいったいどうやって戻って来たか、俺はゆっくりと目を閉じた。
「おい、何寝てるんだ? ちゃんと説明しろ」
「ちょっと黙ってろ。集中しているんだ」
「なっ……分かった」
大人しく黙る所を見るに、それなりの上下関係は理解しているらしい。
心の奥底で熱い炎をたぎらせる。それは怒りに近い感情。あの時の感覚を手探り状態で見つけ出し、高まらせる。俺の予想が正しければ、もう一度あの姿になれる筈だ。
「うぅ……うぉおおおおお!!!」
「!!?」
予想通り、館でなった時と同じ怪異人の姿になれた。今度は偶然では無く、意図的に。
「そ、それがお前の“本当”の姿か……」
「(本当の? あぁ、思い出した。確か、こいつには人間に擬態しているって、嘘付いていたんだっけな。まぁ、今さら本当の事を言ったって無駄に怒らせるだけ。それならこのまま貫き通すだけ……)」……そう言う事だ。この力で姫宮を持ち上げ、一飛びしたんだ」
「成る程、これだけの力があれば確かに姫宮さんを持ち上げるのは可能だな」
「私の為にわざわざ運んで下さって……本当にありがとうございます」
そのぶよぶよとした大きな体を使って、必死に頭を下げるも、体型の関係で残念ながら上半身だけでは無く、下半身も一緒に動いてしまう。端から見ると、巨大な幼虫がのたうち回っている様にしか見えない。
「気にするな」
だが、別に何とも思わない。それは近藤も一緒だった。怪異人の辛さや苦労は、同じ怪異人にしか分からない。
「さて、無事に仲間が増えた訳だが……正直、全然足りない。このペースじゃ、数十人集めるのに十年以上は掛かってしまう」
「「…………」」
「問題はそれだけじゃない。例え仲間を大量にスカウトする事が出来たとしても、肝心の場所が無い。いつまでもキャンピングカーという訳にもいかないからな」
「あっ、それなら私良い場所を知っております」
「本当か!?」
「はい、私がまだ人間だった頃……よく家族で遊びに行っていた別荘があります。人里離れた場所なので、そう簡単に見つかりません」
「よし、姫宮の案を採用しよう。近藤は何か質問はあるか?」
「いや、何にも無い」
「助かった。ありがとう姫宮」
「いえ、お役に立てて光栄です」
「さてと、取り敢えず場所は確保出来たが……人数がな……」
「出来れば一気に集めたい所だけど……そうだ!!」
全員が頭を悩ませる中、近藤が何かを閃いた。俺と姫宮を呼び寄せ、こっそりと耳打ちする。
「……どうだ?」
「駄目だ、危険過ぎる」
が、俺はその計画を断った。あまりにもリスクが高かったからだ。
「下手すれば死ぬかもしれないんだぞ」
「駄目で元々、人生はギャンブルだ。それにこうでもしないと、仲間なんて一生集まらないぞ」
「駄目で元々、人生はギャンブル……そうですよね」
「姫宮……?」
「私、強さんに賛成です」
「……っ!!!」
「殿方ばかりに重荷を背負わせては、姫宮家の恥ですから。それに私だってやる時はやります」
「だからってお前……」
明るく振る舞うその姿は健気に見えるが、俺達は気が付いていた。彼女の手が少し震えている事に。だが、それを言ってしまえば間違い無く彼女を傷付けてしまう。せっかく勇気を振り絞ってくれたのに。そんな人の想いを無下にする事は出来なかった。俺達は互いに目配せし合い、口を閉じた。そして代わりの言葉を発する。
「……分かった、頼りにしているぞ」
「はい!!」
「よし、次の作戦は決まった。決行は一週間後、それまでに各自準備を整えるんだ。分かったな?」
二人供頷く。俺もそれなりの準備しないといけない。それ程までに今回の作戦は危険が伴っている。今までの身内同士の争いじゃない。完全に他人を巻き込んだ犯罪行為をしようとしているんだからな。
「場所はテレビ局。俺達は配信をジャックするぞ!!」
影野達の次なる目標はテレビ局!?
たった三人で果たして生き残れるのだろうか!?
次回もお楽しみに!!
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