力の覚醒
お久し振りです!!
久し振りにこっちの話を投稿します!!
不定期更新ではありますが、どうか暖かい目で見守って下さい!!
アニメや漫画において、主人公が覚醒する切っ掛けの殆どが“怒り”から来ている。友人が殺された。親を失った。愛する人を傷つけられた。理由は様々だが、いずれも感情の爆発によって強くなっている。
しかし、こうは思わなかっただろうか。何故“怒り”なのか?
感情の爆発で強くなるのなら、別に怒りで無くても良いのではないだろうか。悲しみ、喜び、笑いなど多くの感情がある中で、何故主人公の覚醒に至る感情が怒りで表現されているのか。
俺はずっと疑問だった。人間、頭に血が上ると周りが見えなくなってしまう。なら、怒りよりもっと適切な感情による覚醒方法があるのではないか。
悲しみを乗り越えて覚醒する主人公。笑いや楽しいという感情を覚え、覚醒する主人公。こっちの方が怒りで覚醒するより強く思える。何故なら感情に囚われていないからだ。冷静な判断で、物事に対処する事が出来る。
だからいつも思っていた。もし自分が物語の主人公で、覚醒する機会があったら、必ず怒り以外の感情で強くなって見せると……ついさっきまでは。
「…………」
俺は自身の体に違和感を覚える。全身から力が溢れ出す。目線を下ろすとそこには、いつぞやの怪異人の姿があった。
「(あぁ……そうか……)」
この瞬間、俺は理解した。何故アニメや漫画で主人公の覚醒に怒りが多用されるのか。表現しやすいからとか、分かりやすいからとか、そんなメタ的な事じゃ無かった。答えはシンプル、怒りは感情の中で一番“力”が入るからだ。
悲しみを乗り越えて覚醒するより、笑いや楽しいという感情を覚えて覚醒するよりも、全身に力が入る事を実感出来る。
俺の覚醒に対して、怪異人の彼女は狼狽えている様子だった。当然の反応だ。今まで人間だと思っていた存在が、突然怪異人に変化したのだから、驚かない方が不自然だ。
「あ、あなた様はいったい……!!?」
「俺か、俺は……怪異人だよ」
漸くなれたこの姿。今なら彼女とも良い勝負が出来るだろう。
「……例え姿形が変わろうとも、私には敵いませんよ!!」
「…………」
彼女が粘液を飛ばして来る。しかし俺は避けない。ベチャリとヌメヌメとした液体が体に掛かる。飛沫が付いた壁や床はドロドロに溶けるが、俺の体に変化は一切見られなかった。
「そんな!!?」
さすがに驚いているな。俺自身、全く溶けない事には驚いた。いや、何となく溶けないとは思っていたが、まさか一ミリも溶けないとは思わなかった。これは……。
「……想像異常だな」
「まだです!! 溶けないというのなら、握り潰して差し上げます!!」
今度は複数本の腕で掴み掛かって来る。俺は何も抵抗せず、黙って捕まる事にした。
「これでおしまいです!!」
「…………」
全身が締め上げられる。が、そこまで痛くない。寧ろ気持ちいい。まるでマッサージチェアを受けているみたいだ。怒りで強張ってしまった筋肉が解されていく感覚だ。
「ふぐぬぬぬ……!!!」
一向に潰せない事に、さすがの彼女も気づき始めたらしい。握り潰そうとする全ての腕から血管が浮き出ていた。それだけ力を入れているにも関わらず、潰される気配は全くしない。
「成る程……耐久性には問題は無いと……やはりあれは非労運達が強過ぎたのが原因だったんだな」
「何をごちゃごちゃと……」
「悪いな、実験に付き合わせてしまって。じゃあそろそろ、反撃に出させて貰う……ぞ!!!」
「っ!!?」
俺は全身に力を込め、拘束を振りほどく。突然の力の解放に、彼女は仰け反ってしまう。
「ちょっと痛いと思うが我慢してくれよ」
「い、いくら怪異人になったとはいえ、私のボディを傷付ける事は出来ませんわ!! 何故なら私のボディはありとあらゆる攻撃を吸収する様に設計され……っ!!?」
そう言い終わる前に、俺の拳が彼女のプルプルとした体に打ち込まれる。拳を中心に波紋上に衝撃が全体に伝わる。そして次の瞬間、彼女の巨体が周りの物や壁を巻き込んで勢い良く吹き飛ばされる。
「っと……ちょっとやり過ぎたか? 意外に力加減が難しいな。まさか今ので死んだりしてないよな?」
慌てて彼女の安否を確かめに行くと、そこに彼女の姿は無く、破損した物や瓦礫だけが残されていた。
「いったい何処に……ん?」
その時、上からパラパラと木屑が舞い落ちる。見上げると天井に大きな穴が空いていた。どうやらここから抜け出したらしい。
「一先ず生きてて良かったが……どうやって上に行くか……階段を見つけるのが無難だが……今の俺ならその場でジャンプするだけで上に戻れる筈……只、あんまり力を入れ過ぎないで……っと」
両足に力を込め、俺は飛び上がった。すると一瞬で地下から一階に戻る事が出来た。力加減も成功し、何とか天井にぶつからずに済んだ。
「さて、何処に行った……二階か」
後を付けるのは容易だった。何故なら彼女の通った後には粘液が付着していたからだ。粘液の後は三種類に分かれていた。一つ目は玄関に向かっており、二つ目は地下に向かっており、そして三つ目は二階に向かっていた。
当然、俺は三つ目の後である二階へと足を運んだ。
***
「この部屋か……」
二階に上がると長い廊下が続いており、幾つもの扉が設置されていた。床に残された粘液の後を辿ると、一つの扉に辿り着く。俺は恐る恐る部屋の扉を開ける。
「……うぐっ、臭っ!!? 何だこの臭い!!?」
部屋の中は鼻が曲がりそうな悪臭で包まれていた。なのに窓は開いておらず、カーテンも完全に閉じられていた。部屋の中はこじんまりとしており、キングサイズのベッドが一つ置かれているだけだった。
そんなキングサイズのベッドには、何かが横たわっていた。辛うじて生き物としての原型は留めているが大量の蛆虫とハエが集っており、謎の汁がベッドから染み出していた。臭いの原因は完全にこれだろう。
そんな得体の知れない生物の側に彼女がいた。複数本の腕をフルに使い、集っている蛆虫やハエを取り除いていく。
「その人は……「お母様よ」……やっぱり……」
何となく察してはいた。あの地下には怪異人の死体が無かった。姫宮金造が書き残したレポートには二体の内、一体は駄目になってしまったと記されていた。なのに何処にも死体が無いのは不自然だった。
勿論、事前に処分していた可能性も無くは無いが、貴重な人造怪異人のサンプルを簡単に捨てられるだろうか。それにこの時、姫宮金造には金が殆ど無かった。死体を片付けるのにだって金はいる。金が無い状況で余計な出費をするとは、考えにくい。
結論、死体は残っている。そして見つけた。他の死体とは異なり、丁寧な扱いを受けていた。
「教えてくれ、あの白骨死体はお前が殺ったのか?」
「……そうです」
やはり彼らを殺したのは彼女だったか。となると必然的に父親を殺したのも……。
「あの人は……最低の人間です……私とお母様がずっと側で支えていたのにも関わらず……その優しさを無下にして実験体にしました。殺されて当然です」
「お母様……さっきもそう言ってたな。という事はやはりお前は……」
「はい……私は姫宮グループの令嬢にして、姫宮金造と姫宮・W・ネマーの一人娘、“姫宮レジーナ”と申します」
そう言うと彼女……“姫宮レジーナ”は、複数本の腕で器用に礼儀正しくお辞儀を交わす。
「それでいったい何のご用ですか? ここまで来たという事はやはり……」
「あぁ、そうだよ」
「……出来る事ならもっとお母様の側にいたかったのですが……仕方ありません」
何か覚悟を決めたのか、全く抵抗の意思を見せないレジーナ。まぁ、その方が俺もやりやすい。
「よし、それじゃあ……俺の下で一緒に働かないか?」
「…………え?」
「え?」
「「え?」」
その瞬間、俺とレジーナの間に微妙な空気が流れた。
遂に怪異人になれた影野。
その圧倒的な力でレジーナを追い詰める。
そして彼女を勧誘するが、果たして上手く行くのだろうか!?
次回もお楽しみに!!
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