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鎧の魔物奮闘記  作者: 晴れ甲羅
第一章 転生編
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第八十四話〜アーガスさん〜

投下です!


***


「ささ、座ってくれたまえ」


そう言ってアーガスさんが椅子を指差す。

ていうかこの部屋あれだな、取調室みたいな雰囲気だな。

調度品とかは明るい色が基調の上等そうな奴なんだけど……

窓に鉄格子があるのとかやけに分厚い扉とかを見ると何とも言えない気分になる。


「失礼します」


そう言ってソファに腰掛ける。

腰掛けると言っても半分空気椅子みたいなものだ。

普通に座るとソファが傷んじゃうからな。


横にシーニャさんにシュンヤ、女の子と並んで座る。

三人組は向かいに座っているが見るからに萎縮している。


「で、先ずは話を聞かせてもらおうか。こんな非常事態に君たちは一体何をしていたんだい?」


アーガスさんが目を細めてそう問う。

うひゃー、生徒指導の怖い先生みたいだ。

それとは比べ物にならない程の威圧感ではあるが。


「そ、それは……」


坊主の男が口を開くも、後めたさからか口籠もる。


「おっと、キミの前にそこの黒髪の少年から話を聞こうか。名前は?」


「は、はい。シュンヤです」


「ふむ、シュンヤくんか、その目と髪……転生者かね?」


「そうです」


アーガスさんの元から細めの目が更に細くなる。


「……仕方ないか」


そう呟くように言うとアーガスさんは後頭部に手を遣り、ため息を一つついた。

そして、


「気が変わった、今日のところはキミ達はもう帰りたまえ。登録だけ済ませて早く戦いに備えるんだな」


そう言った。

驚いたような顔をするシュンヤと三人組と女の子。

そりゃそうだ、普通はびっくりする、俺でもびっくりする。


「シーニャと連れのキミは残るんだ、いいね?」


こちらを見てそういうアーガスさん、その顔は真剣そのものだったが、目の奥は笑っていた。

底の見えない人だ。


***


「お茶でもどうだい?」


シュンヤ達が出て行った後、そうアーガスさんが切り出した。

シーニャさんも喋らないしどうしようかと困っていたのでちょうど良かった。


「では遠慮なくいただきましょう」


「わかった、ここで話すのもアレだからついて来てくれ」


アーガスさんに言われるがまま部屋を移動する。

するとそこは正に偉い人の執務室といった風の部屋だった。

重厚な作りの執務机の前には会談でも行うのか、革張りのソファと机が備え付けてある。

イメージとしては海外な豪華な大学の校長室と言ったところか。


「そこのソファに掛けておいてくれ、僕はお茶を入れてくるよ。机の上にある菓子は自由に食べてくれて構わないよ」


「ありがとうございます」


カツカツと足音を響かせながら執務室を出て行くアーガスさんの背中を見送り、扉が閉まる。

ふう……なんだか疲れた、アーガスさんのそばにいると肩に力が入って仕方がない。

そうそう、二人の関係をシーニャさんに聞いてみるとしよう。


「シーニャさん」


「どうかしましたか?」


「アーガスさんとはどう言った関係なんですか?」


「ふむ……アーガスとは……」


少し思案するような素振りを見せるシーニャさん。

そんなに悩むような関係なのだろうか、まさか爛れた関係とか⁉︎

……いや、そんな事を考えるのはやめよう、それにもしそうだったとして何だと言うのだ。

シーニャさんの男性関係なんて俺には関係無い事だ。


「そうですね……古い友人です」


「古い友人? それは……」


それはどう言った……と続けようとして口を閉じた。

まずい、地雷を踏み抜いたか?

シーニャさんはいつもの無表情ながら、少し触れられたく無いという雰囲気が伝わってくる。



沈黙が続く。

うーん、気まずい。

人には触れてはいけない過去というものが誰しもあるはずだ。

俺にだってもちろんある。


無言のまま机の上の菓子を一つつまみ、兜の隙間から口に放り込む。

うん、美味しい。

見た目はクッキーのようだが味は……これは揚げているのか?

ほんのり蜂蜜の甘味が舌を刺激する。


「シーニャさんもどうですか?」


「ありがとうございます」


しばらく無言で菓子を食べるボリボリという音だけが執務室に響く。

やけにその音が大きく聞こえて落ち着かない。


「お待たせ、お茶を淹れてきたよ……何かあったのかい?」


「いいえ、別に」


その言い方に何か感じるところがあったのだろう。

アーガスさんはそれ以上何も言わずに向かいに座った。


「美味しいがクセのある茶葉を使っているのでね、口に合うと良いんだが」


「いただきます」


バイザーを跳ね上げ、カップに口をつける。

すると少しスッと鼻を抜けるような香りがする。

確かにこれは人を選ぶな、だが俺は好きだ。

昔、母が淹れてくれたハーブティーに似ている味だ。


「美味しいですね、このお茶」


「おお! 気に入ってくれたかい! いやー、中々好きな人が居なくてね、良かったら茶葉をあげようかい⁉︎」


「ぜ、是非とも」


きゅ、急にグイグイくるなこの人。

そんなにこのお茶を好きな人が少ないのだろうか。

まるで布教してるヲタクみたいな勢いだ。


「うんうん、このお茶が好きな人とは仲良く出来そうだ! シーニャとの相性もそりゃあ良いだろう!」


「え、あ、はい」


「アキトさんが困っているじゃ無いですか、さっさと本題に入って下さい。まさかお茶を振る舞うために読んだとか言い出しませんよね?」


ギロリ、そう擬音がつきそうな程の目つきでアーガスさんを睨みつけるシーニャさん。

特段機嫌悪い訳では無いのだろうが……それでも怖いものは怖い。


「悪かった悪かった」


そう悪びれる様子もなく言うアーガスさん。

このやり取りを見ていると友人だと言うのも頷ける話だ。


「じゃあ早速本題だが、シーニャ、君にはこの戦いを」


「却下です」


「だがそれではキミが保たないかも」


「何度も言わせないで下さい、私も戦います」


待て待て待て、一体何の話をしているのだ。

さっきからハテナマークが頭の上を飛び回っている。


「あ、あのー、さっきから何の話を……?」


そう聞くとアーガスは意外そうな顔をした。

なんだその表情は。


「シーニャ、キミはあの事を」


「アーガス!」


「……悪かったシーニャ、キミの思いを尊重しよう。アキトくん、ここでの事は聞かなかった事にしてくれ」


アーガスさんが有無を言わせぬ視線向けてくる。

俺は、何も言えず、ただ頷くだけだった。


「じゃあ登録だけして帰ってくれ……そうそう、アキトくん、茶葉を渡すから下で待って居てくれ」


「……わかりました」


階段を降り、シーニャさんと一緒に受付に並ぶ。

いつでもさっきの話が何か聞くことは出来た。

だがその間、俺は何も言えず、ただ俯いてシーニャさんと目を合わさないようにする事しか出来なかった。

あそこまで声を荒げるシーニャさんは初めて見た。

余程聞かれたくない事情があったのか、さっきアーガスとの関係を聞いた時とは比にならない反応だった。

気になる、非常に気になる、が、怖くて聞くことができ無かった。


怖かったのだ。

知ることがでは無く、教える事は出来ないと面と向かって言われることが。


いかがだったでしょう?

ギリギリにはなりましたが何とか投稿できました。

次回投稿は十七日の土曜日とさせていただきます。

感想や評価、ブクマ等頂けると作者は喜びに咽び泣きます。

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