第七十六話〜装備開発は急ピッチで〜
投下です!
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『よーし、じゃあ早速何を作るか具体的に決めましょう。できれば思いつく限り作りたいですが資源も時間も無いので数種類に絞りましょう』
「そうだな」
いくら武器本体を作ったところで弾薬や使い手がいなければただの鉄屑と同じだ。
まあ鈍器くらいにはなるかもしれんがな。
『先ずはライフルですね、これはもう決定でいいでしょう。作る素材さえ考えれば鈍器にもなりますし銃剣を使えば簡易的な槍にもなりますからね』
「でもライフルじゃちょっと単発威力が低くないかな? でっかい魔物とかだったらそこまで有効打にならない気がするんだけど」
いくら十二・七ミリとは言え、この世界の魔物に対しては威力不足感が否めないのだ。
さっきも言った通り、小さい魔物だったら一撃だろうがワルドサーペントみたいな巨大な魔物だったら何十発も打ち込まないといけない気がする。
そんなに撃ってる時間があったら接近されてパックンチョされちゃいそうだ。
では、この対策はどうすると言うのか。
単発火力の不足は致命的だからな、それに単発のボルトアクションだから連射も効かない、一秒あたりの投射量は物凄く少ないだろう。
『なので迫撃砲を作ります。まあ迫撃砲と言ってもグレネードランチャーの強化版みたいなのですけどね。炸薬もユウゴさんが持っている火薬でいいでしょう、高性能爆薬には劣りますがあれも立派な火薬です』
「確かにそうだな、それで成形炸薬弾頭とか作ればかなりの攻撃力になりそうだな」
成形炸薬とは金属を薄く、スリバチ状に成形した反対側に爆薬を詰め、爆発させるとモンロー/ノイマン効果によって爆発の衝撃波を一点に集め、金属の噴流で目標を貫徹するという代物だ。
ロケットランチャーの代名詞とも言えるRPG-7についてる菱形の弾頭があれだな。
『ですね、ライフリングは彫らずに安定翼を使って安定させる方式を取ればかなり工程も簡略化できるはずです』
「他には何か作るか?」
『うーん、悩ましい所ですが……拳銃は一応欲しいですね。アキトさんだけじゃなく、他の人にも渡しておけば最低限の自衛はできるはずですからね』
「そうだな……リボルバー式のヤツを何丁か作っておこう」
リボルバーはセミオートマチックに比べればかなり、というかめちゃんこ簡単に作れるからな。
ライフリングと弾は一つ作ってしまえば量産はまだ楽な方だからな。
『後は……ダイナマイトでも作りますか?』
「え゛、そんなものが作れるのか?」
『理論上は可能ですが……問題はいくつかありますからね。検討段階といった所です』
「ちなみに、どうやって作るんだ?」
『ニトログリセリンさえ作ってしまえばこっちのもんです、濃硝酸と濃硫酸を一対三の割合で混ぜ、そこにグリセリンを冷やしながら混ぜれば完成です。ね? 簡単でしょう?』
「待て待て待て待て、どこが簡単なんだ。確かに作り方は簡単だが、作り方“は”簡単だ。でも材料が難しすぎないか?」
『いえいえ、意外とそうでも無いですよ? 地球だと硝酸も硫酸も八世紀にはもう見つかってますし、探せばこの王都にもあるかもしれません』
シホ先生も持ってるかもしれません、とシージアは言う。
八世紀にはもう作られていたのか、それなら確かに普通にシホ先生も持っているかもしれないな。
『そんでもってグリセリンは石鹸を作るときに大量に出来ますからね、石鹸屋さんにいって頼むか売ってもらうかすればいいでしょう』
「あれ? 意外と簡単にできそうだな?」
『でも取り扱いがひじょーに難しいので気をつけて下さいよ?』
「ああ、もちろんだ」
確かノーベルの弟もニトログリセリンの事故で死んでいたはずだ。
やはり用心するに越したことはないな。
「でもダイナマイトって何かにニトログリセリンを珪藻土に染み込ませなきゃいけないんだろ? それはどうやって調達するんだ?」
『いえ、別に珪藻土じゃなくても大丈夫です。多少は安全性は下がりますが、おがくずや綿などでも大丈夫です』
「そうなのか、じゃあその問題は解決だな、材料が揃うかもわからないけどな」
『ですね……まあ悩んでいても仕方ないので出来ることをやりましょう! じゃあ寝るまでに十二・七ミリを二百発作ってから寝ましょう!』
「え゛」
『え゛、じゃないんですよ! ほら、さっさと材料を取ってきますよ! 魔力切れがなんですか!」
「ヒィィィィ……」
『はっはっは、今夜は寝かせませんよぉ!』
「その台詞、こんなところで聞きたくなかったよ……」
結局その日は寝るまでに二時間かかりましたとさ、めでた……くない。
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『おはよーございますっ!』
「ふぬあぁ⁉︎」
『そんなに驚いてどうしたんですか?』
「どうしたもこうしたもあるか! し、心臓が止まるかと思ったぞ!」
まだ心臓がバクバクしている。
こんなに驚いたのは久しぶりだ、それにしても一体何をそんなにテンションを上げているのか。
『ほら起きた起きた! 起き抜けに十二・七ミリ弾を十発作りますよ!』
「ええ……」
起き抜けに弾作りなんて出来るわけ……あるか。
普通に型に当てるだけだ。
『時間は有限です! しかもこの非常時に何を呑気にしているんですか!』
「でもまだ攻めてくるって決まったわけじゃないんだろ……?」
『魔物の侵攻ルートが割り出せましたよ! 八割方ここに来ますよ!』
「そりゃまずい」
さっさと弾作りに取り掛からなければ。
そんでもって下に降りて朝飯を食おう。
そう思い、爽やかな朝日の中で弾作りを進めるのであった。
***
「おはぁ……よーございます」
あくびを噛み殺しながら下に降りると何やらマーサさんが深刻そうな顔をして鍋をかき回していた。
「ああ……おはよう」
「どうかしたんですか?」
あくまで何も知らないといった体で話しかける。
ここで知っていたらどう考えてもおかしいからな。
「今朝シーニャから連絡があったんだが、ここに魔物の大群が攻めてくるそうだ」
一体なんの手段で連絡が来たのだろう……と、今はそうじゃない。
「それは……大変ですね」
「意外と冷静だね、もっと叫ぶかと思ってたよ」
「いえいえ、これでもめっちゃ驚いてますよ、もう心臓が飛び出るくらいに」
「そういえば今朝、何か叫んで無かったかい? 悪夢でも見たのかい?」
「全然大丈夫ですよ!」
確かに考えてみればかなり叫んだりシージアと喋ったりしてるからな……
一人で何かしら言ってるヤベー奴みたいになっているのだろうか、これからは少しは控えめに喋ろう。
「と、今はそんなことはどうでも良いんだ。店を閉めて戦いに備えるからね、当分の間は休みになるよ。そうそう、このことは誰にも言うんじゃないよ、国がキチンと発表するまで待った方が良い。噂に尾ひれが付いて一人歩きしたらたまったもんじゃない」
「わかりました」
じゃあシーニャさんはなぜ知っているのか、という話だがそれは自分で確認したのか何かしたのだろう。
気にしたら負けだ。
「ああ、なら良い。アキトも何かしら備えておくんだよ」
「わかりました」
よーし、ではお言葉の通り装備を新調させて貰うとしよう。
遅れて申し訳ありません……orz
次回こそは予定日を守れるように頑張りたいと思います……
次回投稿予定日は余裕を持って三日後の三月二十日とさせていただきます!
感想等をいただけると非常にうれしいです。




