七十五話〜アクセラレーションポイント〜
投下です!
***
『お……い、お………くだ……い』
ん……?
『おーい、起きて下さーい!』
うおっ!びっくりしたじゃないか……そんな大きい声を出さないでくれよ。
この展開、何回目……ってあれ?
(声が出ないぞ)
『当たり前じゃないですかやだー、鎧に声帯なんて付いてませんからね』
そういえばそうだな、コミュニケーションが取り難いことこの上ないが仕方無いだろう。
対策はまた考えれば良い。
『じゃあ早速どんな感じか試しましょう。場所は……そうですね、銃を作った森の開けた場所があったでしょう? そこで良いでしょう』
(了解)
***
『この辺で良いでしょう』
(了解)
銃の改造やら爆弾とかの新しい武器の開発やらをしまくっているからか、どんどん広くなって来ている広場に立つ。
ここに来るまでにも身体の変化は感じた。
なんというか、こう……身体が動きやすいのだ。
例えるならそう、長時間重いリュックサックを背負って急に下ろしたら身体が軽く感じる。
そんな感じだ。
その時は実際の力が上がっている訳では無いが、これはどうなのだろうか。
早速試すとしよう。
先ずはパワーだな、これが強化されてなきゃどうにもならない。
手近な大木を選ぶ、一撃で折れてしまわないようにだ。
これ以上森林破壊を進めたらなにかと祟りがありそうだからな。
全力では無い程度の力で裏拳を打ち込む。
すると木はバギィッ! と轟音を立てて幹の直径の三分の一ほどが吹き飛んだ。
なんつー威力だ……とても自分が出したとは思えないほどの力だ。
振動で千切れたのか、緑色の葉っぱがハラハラと散っている。
『凄い威力ですね、大成功ですよこれは。鎧の魔物としてのポテンシャルがかなり引き出せていると言っても過言では無いでしょう』
(それは何よりだ)
『そうそう、もう一つ解放、もとい使えるようになる能力があるんですよ』
(どんな能力なんだ?)
『身体の形を変えられます。例えば、手を剣の形にして攻撃するといったことも可能です』
刃を作るのは大変ですけどね、とシージア。
そうか、意識して変えられるのか。
でもそう考えたら確かに慣れてからじゃないと不味いな。
自分の形がちゃんと分からなくなって元の姿に戻れなくなってしまう可能性が高い。
先ずは試しに拳から三本爪を生やしてみる。
イメージとしてはウ○ヴァリンだな。
他の部分から金属をもってくるような感じだ。
なんと言うかこう、にゅにゅにゅーって感じだ。
半分個体で半分液体のような……って難しいなこれ、どうしても引っ張られて他の部分が歪んでしまう。
そんなこんなで三十分ほど経ってやっとこさそれっぽい形にはなった。
だが切れ味はお察しの通りだ、まず刃というものが付いているのかさえも怪しい。
『やっぱり難しいですか?』
(ああ、かなり難しいな。大まかな整形はなんとか出来るようになって来たけど細かいところがどうしてもな)
『練習あるのみですからね……諦めずに頑張って下さい』
(もちろんさ)
***
その日は能力と身体のパワーに慣れるための訓練をし、鎧をスムーズに、精神世界に行くことも無く着ルことができた。
そしてその夜、宿に戻って中身を戻した時の事だった。
「か、身体が重い……!」
『鎧のパワードスーツとしての役割を果たす魔力を消費してますからね』
「先に言ってくれよ……」
『忘れてました、てへぺろっ!』
……てへぺろって言ったぞ。
古い、もう十年近く前のギャグだぞ。
いや、シージアからしたら十年など一瞬に過ぎないのか……?
って違う、今はそんなことを考えている場合では無いのだ。
ちょっとどころではなく、というかかなり身体が重たいのだ。
中身の筋力だけで動かしていると言っても過言では無い程の負荷だ。
木張りの床で転んだりしたら大変だ。
ここは二階だから良くて傷が入る、最悪の場合は床が抜けてしまう。
そうなったら目も当てられない。
「あー、クソっ、身体が重い。明日から仕事だぞ? 大丈夫なのか?」
『鎧に魔力が回れば済む話ですから、すぐにとは言いませんが一晩寝たらすっかり良くなってますよ。多分』
多分ってなんだ多分って、関西人の良く使う知らんけど、と同じ類だな。
一気に心配になるじゃないか。
『ん? なんだか不穏な魔力が……デカイですよ! 距離は五百キロ、要塞都市の方向から感じます!』
ただならぬ雰囲気だ。
シージアの声が一気に緊張感を帯びる。
「お? なんだなんだ、俺の兜にも投影してくれ」
『わかりました!』
そう言って魔力が見えるようになった俯瞰図が兜の内側に映し出される。
どれどれ、要塞都市の方向はこれだから……本当だ、かなり多いな。
しかも種類と数が尋常じゃ無く多い。
それにいくつか魔力量がやけに高いのが居るな。
「これって魔物だよな?」
『ええ……多分そうですね。さっき突然現れました、数はおおよそ九万です、一体何があったのか。光学視点じゃ見えないから予測するしかありません』
「赤外線は?」
『きちんと反応してますね……あ、魔力反応は消えましたが熱反応は残ってますね。かなり高度な隠蔽魔法ですがジャミングでは無いので観測可能です』
「一体誰が?」
『うーん、これだけの魔物を呼び出すとなればかなりの量の魔力と材料が必要なはずなんで……まさか、そんな事を、いえ……』
シージアが急に狼狽しだした。
一体どうしたと言うのだ。
「何かあったのか?」
『考えてみて下さい、もぬけの殻になっている要塞都市、最近良く聞く誘拐事件、突然現れた大量の魔物達、この森に居ないはずのゴブリン、そこから考えられるのは』
「……誰かが要塞都市やこの国の人間を使って魔物を召喚したって事か?」
『はい、そうです』
「シージア、聞いたら後悔すると思うんがあえて聞く、あの規模の魔物を呼び出すのに必要な人の数は何人だ?」
『……あの魔力規模から察するに少なくて四万人、多くて七万人です』
「多いな」
多い、多過ぎる。
ましてやこの世界だ、農業も医療も魔法があるとはいえ、未発達のこの世界で七万人だ。
「その魔物達の目的はわかるか?」
『はい、この夜の闇に乗じて移動するようです。見晴らしの良い街道や草原を通らず、森を主な移動ルートとすると考えると……こちらに向かっています。何が目的かはわかりませんが、この王都を狙っている可能性は十分に考えられます』
「まずい、誰かに知らせないとまずいぞ」
このまま無防備なままであの大群が押し寄せて来たらいくら戦時中の警戒体制とはいえ非常にまずい。
『いえ、その心配は無さそうです。城壁から斥候らしき兵士達が馬を出しています。誰かが気がついたのでしょう、下手をすれば一般人でも気がつくような魔力量でしたからね』
「全く何も感じなかったんだが……」
『今は鎧の魔力量が少ないですからね』
「そう言うことか、それはそうと侵攻してくるなら装備を整えないとな」
『ですね』
遅くなって非常に申し訳ありません!
次回投稿は明日の予定です!
ここから物語が加速していく……はずです!
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