第五十七話〜裏聖女〜
投下です!
***
「……私はこの国の教会の聖女として育てらました」
「ッ⁉︎」
教会だと⁉︎
と言うことは神々の手先か!
流石にシーニャさんを相手取るのは無理だ。
「ふふふ、そんなに警戒しなくても大丈夫です。今はもう私は聖女じゃありません、ただの、普通の侍女です」
普通の侍女……?
普通はあんなに強くないと思います。
そんな事を考える間にもシーニャさんの話は続く。
「さっきも言った通り私はこの国の境界の聖女として育てられました。幼い頃から訓練に次ぐ訓練の日々、そんな生活を私は不自由だと思ったことはありませんでしたし、今も思っていません。それにしても聖女で戦闘訓練とはおかしいですね」
そう言ってふふ、と笑うシーニャさん。
確かにそうだ、普通はもっと箱入り娘的なのをイメージする。
「この国の聖女には表の聖女、裏の聖女あります。一つは対外向けの聖女です、これは容姿も良く、魔法の才、特に回復魔法に秀でた者が選ばれます」
ふむ、これが俺のイメージする聖女像だな。
では裏の聖女は一体どんなものなのだろうか・
「そしてもう一つの聖女、これは主に孤児、そして二歳以下の者が選ばれ、戦闘訓練から他国語、神学といった英才教育を施されます。主な任務は非常に強力な魔物の討伐です」
ほうほう……強い聖女とかなんのロマンだよ。
カッコ良すぎるじゃないか。
だが、それだけでは済まされない何かがあるのだろう。
「……ですが任務はそれだけではありません」
要人の暗殺とかかな?
「表に出せないような仕事全般です、暗殺から拷問、果ては“接待”まで。私は幸いと言うべきか接待はさせられませんでしたが……この国の上層部は欲望に塗れ、汚れ切っています。唯一のまともな仕事とも言える魔物の討伐さえ損耗率などは眼中にありません、このレベルの戦士を育て上げるのは難しい為、昔はもっと待遇が良かったと聞きますが……今は人手不足がさらに部隊の損耗率を上げるという悪循環のようです」
そう言い、手をギリリと握りしめる。
その顔はいつものように表情に乏しい、だが確かな怒りを湛えていた。
接待……そう言うことか。
それはそれとして、ふーむ、暗殺や拷問から正面切っての戦闘も強い忠誠心の強い部隊を使い捨てのように扱う……か。
何やら怪しい匂いがするな。
(これって、そう言うことだよな)
『ですね、神々が一枚噛んでいるでしょう』
やはりそうか、だがここで一つ疑問が生まれる。
何故シーニャさんはここにいるのか? そこが問題だ。
「じゃあどうしてシーニャさんはここに居るんですか?」
シーニャさんは深呼吸を一つ、
「やはり気になりますか……ここまで話した以上、仕方ないでしょう。私は任務で聖女を引退、侍女として活動することになっていたのです。ですがその任務が中断されてしまい、侍女のままとなっているようです」
「ようです?」
「はい、部隊に伝手があるのでそこから聞いた話です。上はお気に入りの娘の機嫌を取るのに夢中のようで私の事など忘れているようです、部隊に戻りたくない私としては好都合ですがね」
「戻りたくない?」
「はい、私は数々の任務を通してこの国の教会、そして神々が忠誠を誓うに値しないのではないか、と思うようになったのです。しかも教会は……いえ、これは関係ありませんね」
以上が私の秘密です、とシーニャさんは締め括った。
だが俺にはまだ疑問がある。
「いくつか質問をしても良いですか?」
「はい、どうぞ」
「まず一つ、シーニャさんは何の任務で侍女になっていたのですか?」
「すみません、それは言えません。ですが私が教会を、この国の神を信じられなくなったのはこれが原因の一つです」
これは言えない、か。
気になるところだがここはあえて聞かないでおこう。
そしてもう一つ質問はある。
「結局その薬は何なんですか?」
「ああ、そういえば言っていませんでしたね。これは魔力代謝を上げる薬です。私の魔法の特徴として相手を攻撃するたびに力を奪うというものがあるのですが、相手が魔物だと悪い魔力が溜まってしまうのですよ」
「そう言う事なんですね、ありがとうございます」
「いえいえ」
(なあシージア、シーニャさんが洗脳されているという事は無いよな?)
『はい、予測にはなりますが生まれ持った魔法耐性が高過ぎて効かなかったのでしょうね』
なんだ、生まれた時からチートだったのか。
そんな人が小さい頃から鍛えたら強いに決まってるよな……
「他に何か質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です」
知りたいことはある……が、今聞いてはいけない気がする。
完全なる勘だけどな。
でも何か忘れてたような……
「あ、そうだ」
「どうかしましたか?」
「輝夜にちょっと顔を見せても良いですか?」
しばらく会っていなかったからな。
そろそろ俺も寂しくなっていたところだ。
「はい、あちらにいますよ。私はこの薬を飲んできますね」
「ありがとうございます」
シーニャさんと別れ、少し奥に行くと輝夜が丸まって眠っていた。
亀なのに犬みたいな寝方をしてるぜ。
「おーい、輝夜、久しぶりだな」
「グゥゥゥ」
こちらをチラリと見ながら喉を鳴らす。
どうやら少し寂しかったようだ。
「しばらく会いに来れ無くて悪かったな」
そう言って輝夜の背中に寄り掛かる。
前にも増し育った植物たちが柔らかくて心地好い。
「キュゥゥ……」
「そう言えばかなり強い魔物と戦ったんだよ、その話するか?」
「クルルル」
「おう、じゃあ話してやろう。あれは━━━━━━」
シーニャさんも気を使ってくれたのか、気が付くと小一時間ほど輝夜と喋っていたようだ。
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