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鎧の魔物奮闘記  作者: 晴れ甲羅
第一章 転生編
55/110

第五十三話〜一週間後〜

投下です!


***


これは果たして戦いと呼べるのだろうか、そう思うほどに一方的な展開だ。

さっきまで俺を圧倒していた魔物をまるで子犬と遊ぶのかのようにあしらうシーニャさん。


「キィィィ!」


魔物がその長い腕での薙ぎ払い、鋭い尾を使った突き出し、と連撃を繰り出す。

だがシーニャさんはそれをステップでも踏んでいるかのような軽やかさで捌き切る。

そして、


「ハァッ!」


シーニャさんが腕を振るうと魔物の首がごっそり抉れそこから噴水のように体液が噴き出す。

ピッ、と魔物の体液が俺の頬にまで飛び散る。


『圧倒的ですね……』


(ああ、強いとは思っていたがまさかここまで強いとは想像してなかったよ……)


そう言っている間にも魔物は傷を再生する、だが再生速度が追いつかず、段々とその体に傷が増やす。

それとは対照的にシーニャさんは唯の一撃も喰らわずに、的確に急所に攻撃を叩き込むんでいく。


段々と魔物の動きと再生速度が鈍くなる。

注意してみると攻撃の瞬間、シーニャさんのいつも着けている手袋が一瞬魔力を放っているのが分かる。

しかも俗に言う聖なる魔力と言うやつのようだ。

それが魔物の再生や動きを阻害しているのだ。


再生速度の低下もあってか魔物が遂に膝をつく。

魔物は四本あった腕の二本を失い、その鋭い尾も半ばから切断されており、息も絶え絶えといった様子だ。


「ではこれで終わりです」


シーニャさんが腕を振り上げ、その首を断ち切ろうとしたその瞬間だった。


『上から敵です!』


シーニャさん目掛けて路地裏から走り出てきた三人組残りの一人が飛びかかる。

まだシーニャさんは気が付いていない!


「おおお!」


全身の力を振り絞って飛び掛かり、体当たりを仕掛ける。

ギョッとしたようにシーニャさんがこちらへと振り向く。


「ッ! しまった!」


その一瞬の隙を突き魔物が逃げ出す。

恐ろし速い、火事場の馬鹿力に近いものだろうか。


魔物には結局逃げられた、だが俺は生き残ったしアンナちゃんも助かった。

及第点では無いだろうか……


***


「ふっ」


パカーン、と心地良い音を立てて薪が真っ二つになる。


その後一週間が経ち、アンナちゃんも目が覚め、俺のバイト生活は再開していた。

あの後、衛兵が来て事情聴取のようなものを受けたがそれっきりだ。

シーニャさんはしばらく会っていない。

次に会ったら失礼になるかもしれないが、なんであんなに強いのかを聞いてみたいと思う。


「なあシージア、そういえば結局あの魔物って何だったんだ?」


『あー、それはですね、この一週間考えたのですが、恐らくは神の使徒かそこら辺だと思います』


「あの見た目で神の使徒? なんだか笑えるな」


『まあそれは仕方ないというか神々の趣味ですからね……』


神々の趣味だぁ?

この世界はそんなもので左右されているのか、こりゃあ神々が本格的に動き出す前に止めないとな。


「そうだ、輝夜にも会いにいかなきゃだな。アンナちゃんも連れて行けたら良いんだけどな」


『そうですね、アンナちゃんも予想していたより、と言うかほとんど精神的なショックを受けていないようですからね。そろそろ外に連れて遊ぶのも良いでしょう』


マーサさんに後で聞いてみることにしよう。

もちろんアンナちゃんに聞くのは大前提として、だ。

それと一緒にシーニャさんと会えたら嬉しいな。


それと今回の件で俺がまだまだ弱いと言うことがわかった。

今の所の一番の課題が遠距離の攻撃手段だ。

今のままだと格上の魔術師や魔法を使う魔物と出会った時に手も足も出ずにやられてしまうのが見えている。


それを解決する手段として考えているのが銃だ。

だが近代の銃のようにをライフリング刻んだり連発式にすると流石に材料も工作技術も足りない。

そこで俺が考えているのが滑腔砲だ、滑腔砲とはライフリングを刻まずに唯の筒から弾体を発射する方式のものだ。


ライフリングを刻まない為、比較的簡単に製造できる……はずだ。

が、もし滑腔砲にするにしても発射薬の問題や材料の問題など課題は多々ある、実現するのはまだまだ先になるだろう……


「アキト! ちょっとこっちに来てくれ!」


「はーい! すぐ行きます!」


マーサさんに呼ばれて廊下を歩く、ああ、足が軽い。

あの件以来やけに体が軽い、全身から錆でも落ちたような気分だ。


「ちょっとそれを釜戸から下ろしてくれないか」


「わかりました!」


そう言って一抱えもある大鍋を指さすマーサさん。

よし、がっしり掴んで……


「あ!それ熱いから、ってそういえばアンタ鎧着てるから大丈夫な……のか? 熱が伝わって火傷でもしちゃ大変だから後で水に着けておくんだよ」


「あ、はい。ありがとうございます」


うーん、実際熱く無いからな。

何か断熱作用でもあるのだろうか、思い返してみれば火炎放射のような魔法を避けた時もかなり近かったがそれほど熱は感じなかったからな。

そう考えながら水に鎧をつける。


「ああそうだ、良かったらアンナと一緒にシーニャのところに行ってくれないか? ちょっと届けて欲しいものがあるんだ」


「ああ、全然大丈夫ですよ。 俺も丁度シーニャさんに会いたかったんですよ」


「それは良かった、多分シーニャは王城に居ると思うんだが……道は大丈夫だろうね?」


「はい、大丈夫です」


まあ少し不安なところもあるが大丈夫だろう。

あんなに大きい建物だからな。


いかがだったでしょうか?

感想、ブクマ、評価等々頂けると作者のモチベが爆上がりします。

次回投稿予定日は一月十七日の日曜日とさせていただきます!

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