第三十七話〜メイドさんとご飯Part1〜
投下です……!
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植物園とは名ばかりの森に入って少し歩くと、意外にもしっかりとした全面ガラス張りの温室らしき建物があった。
この文明レベルの国にこんなガラス張りの建物が普通にあるはずがない、大方転生者のうちのが作ったのだろう。
「ここが第一温室です、この王城の敷地にはこれと第一温室から第三温室までありますがここは主に南国の果樹が植えられています。私はここ、第一温室の管理を任されています」
「凄いですね……」
「でしょう?」
そう少し誇らし気に言うシーニャさん、確かにこんな立派な施設の管理を任されるには相応の能力がないといけないだろうしな。
「中で輝夜さん、で合ってますよね?が待っていますよ。どうぞこちらへ」
シーニャさんに促されるまま温室の中に入る。
すると小さい山のような物体がのそりとこちらを伺ってくる。
間違いない、輝夜だ。
「輝夜!」
そう呼ぶと少し目を開いてこちらに歩いて来て俺の顔をベロンと舐める。
輝夜なりに心配してくれているようだ、可愛い奴め。
「それにしてもちょっと見ない内に変わったなぁ」
輝夜の背中には種類はよく分からないが草木が生えていてまるで小さい山のようになっていた。
一体この短時間で何があったのだろうか。
『恐らくこの温室に居た植物を寄生させたのでしょう。前にも話した通りベヘモスは背中の甲羅に一種の生態系を確立せせることが多いですからね』
そういえばそんな事を言っていたな。
だがそれより気になる事がある。
(なあシージア……俺の思考を読んでるよな?)
『いえいえ、そんな事はありませんよ? 貴方が表情に出やすいだけですとも』
ま。マジか……このままでは俺がシーニャさんみたいな人が好みのタイプだと思っていることがバレてしまうじゃあないか!
「……コホン、もう大丈夫ですか?」
「あ、すいません、どうかしましたか?」
アホな事を考えていたせいでシーニャさんの事をすっかり忘れてた。
「はい、今から昼食にしようと思っていたのですがアキトさんも食べて行きますか?予定がなければで良いのですが」
「あ、是非ご一緒させて下さい。しばらく何も食べていなかったのでお腹が減っているんです」
朝ごはんを食べる前にここに召喚されてしまったので何も食べていないのだ。
シュンヤは……多分大丈夫だろう。
「じゃあそこの椅子に少し掛けて待っていて下さい、直ぐに持って参ります……あ、食べ物で苦手な物とかはありませんか?」
「はい、大丈夫です、なんでも食べられます」
実を言うと海老が少々苦手だが多分出てこないだろう。
苦手と言っても絶対に食べられない程でもないからな。
そうして待つ事十分、その間に輝夜の背中に乗ったりして遊んでいたが見られたら恥ずかしいので降りた。
大人しく椅子に座って待っておこう。
よいしょっと。
メキャ
「うおっ⁉︎」
金属製の椅子の足がグニャグニャになっちまった……
『あーあ、やっちゃいましたね。自分の体重を考えないからですよ』
「いや気付いてたなら言ってくれよ……って言うかどうしよう。勝手に直して怒られないかな?」
『まあ直す分には怒られる事は無いんじゃ無いですか?』
「そうだな、よし、直そう」
まずは曲がってしまった足を真っ直ぐに直さないとな。
元はただ単に装飾を施した鉄板を少し曲げただけだから……これだと直ぐに折れちゃうな。
普通の人が座る分には問題ないのだろうが俺が座るには少し脆かったようだ。
曲がっている部分をクニクニ押して真っ直ぐにする。
それにしてもこの椅子はどうやって作ったのだろうか。
継ぎ目が一切無い上に背面の透かし彫りの部分に金属を切断した時の痕が全く無いのだ。
溶接で作るには複雑すぎる構造だしな……
「なあシージア、この椅子ってどうやって作ってるかわかるかな?」
『ああ、もちろんわかりますよ。これは錬成魔法を使用して作られていますね』
錬成魔法?なんじゃそりゃ。
そう考えた俺の表情を読み取ったのか、シージアが説明してくれる。
『では錬成魔法とは何かを軽く説明して差し上げましょう』
「お願いしますシージア先生!」
『ゴホン、えー、錬成魔法というのはですね、要は貴方の金属を加工できる能力とほとんど同じです。違いといえば貴方は金属しか加工できませんが、錬成魔法は鉱物を加工できると言った違いですかね』
「え゛、それじゃあ俺は劣化版錬成魔法使いなのか?」
まさかの<転生者なのに現地民より弱い件>みたいな感じになっちゃうのか⁉︎
『いえいえ、そんな事はありません。貴方の魔法は錬成魔法には汎用性では劣りますが、その他の精度や加工速度と言った点では圧倒的に優っています。それに貴方には圧倒的なセンスがあります、昔から工作の授業とか得意だったでしょう?』
「ああ、確かに工作やら技術の成績はほとんど一位ばっかりだったな」
『そうそう、そのセンスに加え鎧の魔物としての金属加工に関するセンスが加わることによってとっても上手に加工ができます。今は使える材料がそこまで無いので実力に気がつかないかもしれませんが、使える材料が増えてくると真の実力に気づくでしょう』
そう言っていかにも楽しみだ、という風の様子でクスッと笑うシージア。
うーん、センスかぁ、自分に自信を持つようにしよう。
そんな事を話しているうちにあと少しで修理も終わる。
「ここの背もたれを真っ直ぐに直してっと……よし、完了だ!」
『お疲れ様です』
「じゃあこの椅子には座らずに待っとこ……」
そうして待っていると何やら美味しそうな匂いが漂って来た……
遅くなって申し訳ありません……
その代わりと言っては何ですが、もう少しで新作ができそうです!
次回投稿日は……十月十七日とさせていただきます
今度は遅れないよう、努力します!
次回!ご飯回です!




