ハクさんとお話
(急いで書いたので、後で手直しするかもしれません。しないかもしれません)
「……ケーマさん、なぜここに居るんですか? ロクコちゃんも」
そして、レオナの言った通りハクさんがすぐに飛んできた。【転移】ではなく飛翔していたので、おそらくそういう魔法だろう。
「姉さま、色々大変だったんですよ」
「ちょっとまって。二人とも本物? 確認していいかしら」
「それを言うと俺達もハクさんが本物かどうかも確認したいんですけど、なにかいい方法あります?」
レオナが来ると言ってすぐ来すぎな気もする。ここは俺達の方も疑っていい所だろう。
「厄介なのは自分が本物と思い込んでる偽物……とはいえ、よほど手の込んだ偽物でなければその目覚まし時計の音で解除されてるでしょうし、そこまで手が込んだ偽物なら簡単には見破れない所ね……何か【超変身】……そうね、この手紙に変身してもらえるかしら?」
「はいはい、【超変身】」
ハクさんが取り出した中身を見せないままの手紙に、ぽんっと【超変身】する。
尚、手紙に【超変身】すると文章までコピーされるらしい。封筒に変身すると中身は無いが。
こうして俺は本人と証明された。【超変身】は勇者スキルで、そうそうコピーもできないからな。
「うん、少なくともケーマさんは本物のようね。私の証明はどうする?」
「あー……ロクコ、どう思う?」
「そうねぇ。共通の秘密でも確認してみるとか……?」
「私とロクコちゃんの秘密を確認してみましょうか。ロクコちゃんの確認も取れて丁度いいし」
と、ロクコとハクさんは俺から少し離れてコソコソと話し始める。……偽物だったら危なかったかもしれないが、すぐに確認がとれたようで戻ってきた。
「姉さま、本物だったわ」
「ロクコちゃんもね」
お互い本人確認が取れたところで、改めて話をする。
「俺達はレオナに拉致られたんですよ。なんかこう、召喚魔法陣的なもので」
「私はレオナに付けていた感知の呪いが消えたので、最終座標を確認しに来ました」
レオナが言っていた、『神の目覚まし時計』でハクさんの監視用の呪いを消してしまったというのは事実だったらしい。
こちらの事情を掻い摘んで話すと、ハクさんは「はぁ……」とため息を吐いた。
「……ドルチェの報告で『ケーマさんは今日も良く寝てるらしい。ロクコちゃんも同様』と報告がありましたが、そういうことですか」
「なんならそのダミーロクコ、渡した方が良いですかね?」
「ええ、下手に処分すると大変なことになるでしょうし……どのようなトラップが仕掛けられているか分かりませんからね。ダミーケーマさんの方も引き取りますよ」
トラップ、そういうのもあり得たな。
「ともあれ、魔法陣で、ケーマさんを……帝国のそれも北の方、ツィーア地方のゴレーヌ村に居たケーマさんを、ダイードの王城まで強制召喚できるというのは……脅威ですね」
「ええ。おちおち寝ることもできませんね」
「ロクコちゃんが巻き込まれたこと、ロクコちゃんのダミー肉人形も用意されていたことから考えて、初めからケーマさんだけでなく『ダンジョンコアも誘拐できる』という事でしょうし……厄介な力を……」
仮にレオナが特定のダンジョンコアを殺そうと思った場合、そいつがどんなにダンジョンの奥深くに隠れていようが『召喚』して引っ張り出すことができるのだ。その射程距離は、少なくとも帝国の南から北の地方まで届く距離ときた。
「ケーマさん、GPは分かりますか?」
「え、あ、はい」
「10GP程あればお父様に不意の転送が起きないように対策してもらえるはずです」
「早速頼んでおきます」
と、メニューを開く。あ、メール機能が復活してる。それと……56GPか、結構増えてるな。
10GPを『父』に献上して要望を……お願いしますお父様っと。これでいいのかな?
「しかし話を聞いただけでもダイード国が大変なことになってる可能性がありますね。あそこは三国の緩衝地帯なので、無くなると多少困るんですが……場合によっては救援が必要ですか」
と、ここでハクさんがちらりと俺を見る。嫌な予感がする。
「ケーマさんにこのまま調査と救援に行ってもらうことは可能ですか? ロクコちゃんは私が責任を持って帝国で預かりますので」
「先ほどそこから逃げてきたのに、また行けと?」
「レオナは撤収すると言っていたのでしょう? であれば、むしろレオナ相手に言えば一番安全な場所かもしれませんよ」
俺が不満をあらわにすると、ハクさんはしれっとそう返してきた。
まぁハクさんの言う事も一理ないわけではない。レオナの言葉を信じるのであればだが。
「緊急時の撤退を考えて、単独で【転移】が使える人材が良いのですよ。現在の国を見てきたことも考えても、ケーマさんが適任でしょう?」
「帝国には俺でなくてもその位の人材いるのでは?」
「ええ、いないわけではないのですが、見失ったレオナの対応をするために使うので手が空いている者がないのです」
「あー、はい。分かりました。まぁ、見に行ってくるだけ行ってきます」
つまり、レオナに付けていた鈴を外した責任をとって働けということらしい。……不本意だが仕方ない。それに、『神の目覚まし時計』での影響がどうなったかも少し気になってたし。
「うーん。ケーマが戻るなら、私も戻った方が良いんじゃないかしら?」
「安全な所に居て欲しいなぁ。それに、戻ったらメール機能がまた使えなくなるかもしれない。その場合はロクコがハクさんにそのことを言って欲しいし」
「……仕方ないわね」
ロクコはあっさりと諦め、ハクさんの側に行く。
「では、そういう事でよろしくお願いします。連絡はメール機能で。ダイード国内で無理ならここまで転移してください。マナポーションを支給しましょう」
「あ、どうも」
と、マナポーションを受け取る。……このマナポーションは飲んでも性別が変わることは無いだろう。
「さて。ケーマさんにもう一つ相談なのですが。……レオナへの嫌がらせを手伝う気はありませんか?」
そして、にこりとハクさんは笑みを浮かべた。





































