閑話:実録! 私はこうして騙された!
(個人的に大変なことはありましたが、なんとか更新できました。
いやAIきりたん動画あんだけ連投しててこっち更新しないとかないでしょ)
オフトン教教会の地下牢にニクはやってきた。
ハクから送られてきたレイス、悠々と……いや幽々と過ごしているドルチェに会うためだ。その様子は、少し足音が荒く、落ち着きのないようである。
ドルチェは厄介事の気配を感じつつ、かったるそうにニクの前にふわりと姿を現した。
「おやー…? 何か用ですか子犬ちゃん」
「ドルチェ様。相談というか、協力? してほしいのです。実は……ご主人様が目を覚まさなくて」
その相談内容というのは、すやすやと眠るご主人様のことであった。
ドルチェはケーマだけなら放置するところだったが、ロクコも関わっていると聞き、ふぅとため息を吐いた。
「ロクコ様も、となると私が確認しないわけにいかないか……わかった、診せて」
「お願いします」
そうして人化したドルチェをつれてケーマの部屋へ向かうと、そこにはオフトンの中で気持ちよさそうに眠るケーマと、仲睦まじく抱き着いて寝ているロクコの姿があった。
「……呪術の線を疑ってるー……ってことだよね? 起きないってのはまぁ十中八九呪いっぽいもの」
「はい。眠りから覚めない呪いとか、あると聞きました」
「ま、私がこの村にいる限り呪いの神でもなきゃそれは難しいトコだけど……なにせ私は呪いの専門家だからねー、呪術防御も張ってるし……見てみるけどー」
ドルチェは寝ている二人の額にそれぞれ手を当てる。
一切の穢れを感じることができない。むしろ綺麗すぎるくらいに呪われていない。
これはおかしいか? と思いつつ、ドルチェはそういえばハクからケーマは『神の目覚まし時計』という対呪術最終兵器を得ていると聞いた事を思い出した。
その音はあらゆる邪を払う闇神の奇跡。あまりに絶大すぎる効果に創世の神が恐れを成し破壊したという伝説もあるという、旧・神の寝具。
それの所有者であれば、この綺麗すぎる状況もあり得るかとドルチェは一人納得した。
「うん、呪いはかかってない。単に寝てるだけじゃないかなー……」
「えと、大丈夫なのでしょうか?」
「あー、だいじょぶだいじょぶ。よくある事だよ……ほら、ロクコ様ってダンジョンコアだし、ケーマさんだってオフトン教教祖なんでしょ? 神の寝具何度も使ってるし既に亜神化してる可能性もあるね」
「亜神……おお」
食事だけでなく睡眠も不要なダンジョンコアだが、逆にやろうと思えば好きなだけ睡眠を貪り続けることができる。これはダンジョンコアが闇神の子、つまり亜神であるからであり、同様にもしケーマが亜神化しているのであれば信仰を捧げられる限り好きなだけ寝られてもおかしくない。
「とゆーわけで、大丈夫だよー……たぶん」
「なるほど、ありがとうございましたドルチェ様」
「んー、いーよーいーよ。私も仕事だしねー……」
こうして、ご主人様は人を超えた存在であると常々思っていたニクは、呪いの専門家、ドルチェの言葉もあり見事に騙された。
また、ドルチェはドルチェで特に問題なしと判断したので定時報告の時にもそう報告した。添い寝についての報告がメインだったため、起きない事についてはこの時点で忘れ去られてしまったらしい。
*
「ご主人様とロクコ様が起きてこないんやけど」
「しっぽりと仲良くしてるだけでは?」
一方でイチカもニクとは別にオフトン教教会に相談しに来ていた。こちらの相談相手はサキュバスのシスター長、スイラである。
なんやかんやあって協力体制にあるサキュバスのスイラと、ダンジョン関係者のイチカはすっかり腹を割って話す仲になっていた。勿論、ケーマからそうしていい許可は貰っている。
「いやいや、それでも一日起きんのはありえへんて。いちお、見てもらえへん? 夢なら得意分野やろ? こりゃ夢の中で相当ウマいもん食ってるに違いないで」
「はぁ……まぁいいですけど」
というわけで、イチカはスイラをケーマの寝所につれてきた。そこにはオフトンの中で気持ちよさそうに眠るケーマと、仲睦まじく抱き着いて寝ているロクコの姿があった。
「あ、絶対起こさんように頼むわ」
「……起きて欲しいのでは?」
「ウマいもん食う夢を見てて、起きた時ってのは大抵夢の中で食い損ねてるんやで? そんなん許せんやろ。ウチならブン殴る自信があるわ」
「なるほど?」
と言う事なので、細心の注意を払ってスイラはサキュバス――夢魔としての力を使い、夢の中へと潜り込む。
イチカは目の前で黒い粒子になり服ごと消えたスイラを見送った。
ケーマの呑気な寝顔を眺めつつしばらく待っていると、しゅるると影が集まりスイラが戻ってきた。
「どうやった?」
「ええっと、お二人揃ってこの宿ほどの大きさの巨大クラーケンを踊り食いしていました」
「巨大クラーケン」
イカやタコについては、イシダカの教えもあってこの世界では割と普通に食べられている(無論、毒の無い種類に限られるが)。しかし大物ともなると滅多に口にすることはできない。いざ獲ろうにも船を出せば逆に沈められるし。
「襲われて悪夢を見てるっちゅーわけじゃないんやな?」
「クロちゃんが輪切りに切り落とした足を教祖様が魔法で焼いて、ロクコ様とお二人で召し上がっておりましたわ。クラーケンは大人しく足を切られては再生し、を繰り返しており、延々と食べているようでしたね」
「食べ放題やな」
「そりゃもう、脇目もふらずガツガツと。見ているこっちが満腹になっちゃいました」
なるほど、と頷くイチカ。
「それで、起こしますか?」
「いや起こさんでええやろ。夢の中でモノ食っとるなら、食い切るか満腹になったら起きるんちゃう?」
「えっ。夢の中で御馳走を食べきったり満腹になることってあるんでしょうか?」
「ウチはなるで? 起きたら腹の準備が万端で一気にグゥグゥ鳴るけどな」
「完成度高い夢ですね」
というわけで、イチカはケーマ達が自然と起きるまで寝かせたままにしておくことにした。
「ま、もう1日起きてこなかったらまた診てや」
「わかりました」
自分では意地でも起きないだろうと判断したイチカも、このようにして見事に騙された。






































