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「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」  作者: ひとみんみん


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【魔女のセイイとの話】「フローリアちゃんに「魔女さんと二人でダンジョン行ってお金稼いできて」って言われた」

「確かに前々からクアトは変な人だと思ってたわ。まあ、アタシそんな人嫌いじゃないけどね! ファイヤー」


 話の途中で出現したスライムを、魔女のセイイのせっちゃんが倒した。

 ゴオッと派手にスライムが燃える。

 おおよそ初級の火魔法だとは思えないような火力だ。

 スライムはあっさりと魔石とスライムゼリーを落として消えた。


 最近はレアドロップアイテムが時々落ちるのが普通になっている。


「僕もせっちゃんは嫌いじゃないよ」


 何も戦闘をしていない僕はとりあえずちょっと笑っておいた。

 せっかく魔法騎士なのに、さっきから技は何も出せてない。


 -----


 この前フローリアちゃんの家で、皆でお互いの事情を話した後、「せっちゃん」「リゾッタ」「ベリーちゃん」からそれぞれ落ち着いて二人で話したいと言われた。


 フローリアちゃんは、


「いつもパーティーで一緒だったから個別で話したこともなかったでしょ? 皆と落ち着いて話すことも大事だと思うの」


 と、曇りなきまなこでそう言った。

 確かに僕はフローリアちゃん以外とそこまで個別で話したことはない。


「パーティーが別行動取る前に一旦稼いできて。私は私でクリスタルフラワー放っておきすぎてちょっと罪悪感感じるし。クアトくんと行動している間そこまで世話しなくても萎れないのが逆に怖いというかなんというか。色々クアトくんとの生活のためにやることもあるし」


 フローリアちゃんにそう言われるとそんなもんかなとも思う。

 魔法騎士になった今ならリリスのダンジョンぐらい楽勝……なはずだ。

 たくさん稼いできてフローリアちゃんに良いところを見せよう。

 今なら、リリスのダンジョンの中ボスたちはまたリポップ(再出現)しているはずだ。


 そして僕はまず魔女のセイイのせっちゃんと二人でダンジョンに送り出された。


 ーーー


 今のところダンジョンでは、せっちゃんがずっと無双していて僕の出番はない。

 戦闘の合間にポツポツとせっちゃんが話をしたり、僕が話をしたりしている。


「アタシの真名、前世のゲームで知っててくれたのね」

「うん、あまり覚えてないことも多かったけどね。『魔王』戦ではありがとう。せっちゃんのスキルがなければ完全に死んでたし、パーティー全滅してたね」

「本当よ本当。本当に皆アタシがいないとダメなんだから」


 途中、1階から10階の雑魚敵では全然やりがいがないので、転移陣に乗って、ボスまで一気に転移した。


 木のボスモンスターではようやく僕の出番で、せっちゃんが「ハイファイヤー」、僕が「火炎剣」を連発してあっさり倒した。

 フローリアちゃんのチートスキルに頼らなくてもボスを討伐できるようになっていた。


「何か始まりそうな気がしたのだけれど。アタシの真名を知っている人が現れて、アタシを冒険者を殴る作業から自由にしてくれる人……。でももう始まる前に終わってたわ。リゾッタが居てくれていつもブレーキかけてくれてよかった」


 次の火の猿のボス戦で、猿がやかましく喚いている中、せっちゃんが聞こえるか聞こえないかみたいな声で呟いた。

 僕は何と言っていいか分からない。


「一回だけ言わせてちょうだい。フローリアに許可は貰ってるの。冒険が始まったころ、アタシ、あなたの事好きになりかけたかもしれない」


 今度は完全に聞こえる声で言われた。

 せっちゃんの真剣な黒い目がこちらを見た。


「……ありがとう。でも僕はフローリアちゃんが好きだから」

「分かってる。これで終わらせるわ。今はなんとも思ってないんだからね! フローリアの事もクアトの事もはっきり仲間として大事なんだから! むしろ自分でもなるほどなって思うけど、接点の多いリゾッタが良いなって」


 ビシィっとせっちゃんがそう言いながら僕を指差す。

 ちょっとせっちゃんの目が潤んでいるような気がした。


 僕は前世から時間はかかったけれど、今回は自分の好きな人をきちんと言えた。

 心残りと言えば、前世でもあの告白してくれた女の人に笑われても何でもいいから、


『ゲームキャラクターのフローリアちゃんが真剣に好きだから付き合えない』


 と言えばよかった。好きなんだから。

 僕は結局社内ではゲームオタクという事は皆分かっていたっぽいし、そこは別に言っても良かった……と今なら思う。

 僕がそうしていたら、もしかしたら僕を殺したあの男も何かあるいは……いや、もう終わっちゃった事は考えるのをやめよう。


「そういえば、せっちゃんはリゾッタが男か女か知ってるの? 良いなって思ってるって事は男?」


 僕は前々から気になっている事を聞いた。

 僕の質問にせっちゃんはにんまりと悪戯を思いついたように笑った。


「え、もしかしてクアト知らないの? ゲームの知識を持っているのに?」

「え、やっぱりせっちゃんは知ってるの?」

「うふふ、さーてね? さあ、そろそろお昼でも安全エリアで食べましょうか? 屋台で美味しそうなもの適当に買ってきたから。ごめんね、アタシはフローリアみたいに料理上手くないから。サンドイッチでも作ろうかと思ったんだけど、なぜか消し炭になっちゃって……」


 せっちゃんがお手洗い近くの安全エリアに敷物を広げた。

 僕はフローリアちゃんに持たされたデザートと飲み物を置く。


「ええぇ、ゲーム知識持っててゲーム世界に転生もしたのに結局リゾッタの性別が分からないのかぁ」

「聞いたらいいじゃない。リゾッタともサシで話す予定なんでしょ?」

「教えてくれると思う?」

「うーん……」


 そんな事をお互い笑いあいながら話して、一緒にご飯を食べた。


 そんな風に色々話しながらダンジョンを攻略して、僕たちは帰路に着く。

 一旦、二人でフローリアちゃんの家に戻ったらフローリアちゃんは笑顔で、


「おかえりなさい。夕飯できてるよ」


 と迎えてくれた。

読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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