新メンバー合流
「ハロー、ミスターゲン! マイネームイズ……」
俺の目の前には、俺よりも頭一つデカい金髪の美少女。
俺に英語なんて分かるわけがない。
「てやんでぇ! 何言ってるかさっぱり分からん……こちとら日本男児の下町育ちだぞ。文句あるか?」
俺が腕まくりをしながら金髪美少女に威勢よく言うと……彼女は青い目をキラキラと輝かせた。
「おお、日本男児! 素晴らしいです、本当に言うのですね! 失礼いたしました、ここからは日本語で……私はサリーです! マーク・ウォーカーの娘です、プロデューサー・ゲン!」
「マーク・ウォーカー? 誰だ? 嬢ちゃんたちは分かるか?」
そう聞くと、メンバー全員から深々としたため息が聞こえる。
「ハァ……あのね、ゲンさんも知ってるでしょう? 私たちが武術を教わった……」
「おお! あのやたらとペタペタと触ってくる外人かぁ! そうか、お前さんのオヤジさんだったんだな……それで?」
またまた全員からため息が……。
「ハァ、おじさまにもお伝えしたはずですが、彼がハンドルネーム『ギルド長』……彼女は『アビス・シグナル』の新しいメンバーになるために来日されたのですよ」
「はい、その通りです! あッ、すみません。忘れていました。『ツマラナイモノ』ですが……」
そう言って渡してきた木箱入りの高級日本酒……ほう、お前さん、日本人の心をよく分かってるじゃねぇか。
「若いのに……気に入った! メンバーでも何でもなりやがれ!」
「良いのですか!?」
「ああ、もちろんだ。男に二言はねぇ!」
「お姉ちゃん、ドワーフさんが物に釣られてるよ」
「シーッ! ノエル、ゲンさんに聞こえるわよ……(でも本当のことだけど)」
「おい、聞こえてるぞ! 物に釣られたわけじゃねぇ、彼女の情熱と『気遣い』を評価したんだよ! 思いやりと察しだ!」
『『『絶対お酒に釣られただけだ……』』』
呆れ顔のメンバーたちと、ニコニコ顔のサリーだった。
「ふふっ、ありがとうございます、プロデューサー! 私、一生懸命頑張ります! あ、ちなみに私も自分で曲を作ってきたのです!」
「おっ、曲か! サリー嬢ちゃんの曲か、聴かせてみろ!」
「はい! 曲名は……『ハラキリ・祭り』です!」
「……」
楽屋に静寂が訪れる。
やっぱり『アビス・シグナル』のネーミングセンスは、誰一人としてまともじゃなかった――。
「さて……実は全国での公演を終了したら、俺たちは再度『奈落』に行くことが決まった。これは日本政府からの強い要請だな」
「ふぇ〜! ええっ、国からのお仕事なの、ゲンさん!?」
「ああ。奈落から俺たちが生還できて、こうしてアイドル活動や会社なんかをやっている。真似をするヤツが多いだけじゃなくて……ここだけの話だが、他国に奈落の資源を狙われているらしいな。そうだろう……サリー嬢ちゃん?」
「――――!!! ご存知でしたか? そうですね。私の母国フランスはもちろん、西側諸国なども動いています。こちらは正式な交渉ルートですが……しかし、大陸の方の国などは、もう少し乱暴な手段をとってくるでしょうね。そこで私は父からも要請されました。もちろん日本の文化は大好きなので即オッケーでしたけど……!」
「そういう事だ。今や『奈落』は不要な人材の廃棄場所ではなく、人類最高クラスの超巨大資源埋蔵施設になっている。ダンジョンが現れる前の石油なんて目じゃないレベルだな」
「うわ〜、ボクは緊張しちゃうよ。いきなり日本や外国なんて……でも同時にワクワクしちゃうね、お姉ちゃん」
「フフフッ、ノエルも変わった子ね。でも、私の腕でどこまでできるのか試してみたいのもあるわね。この前は暗殺者としてだったから、ゆっくりと探索なんてしてないもの」
そこで、難しい顔をしていた凛嬢ちゃんに声をかける。
「どうしたんだ、凛嬢ちゃん? この依頼に何か不満か?」
「ううん! 不満じゃなくて……奈落の底へ続く大穴があって、奈落の底の地面もゲンさんの『ねる』でフカフカにしてるから誰でも行けてしまう。なら、その大穴を塞ぎながら降りていけば良いんじゃないかな? しかもそれを配信しながら……そう、世界中に『奈落に来ても無駄だし危険』って分からせるのがベストかなぁ〜って!」
「「「それだ!!!」」」
さすがは『アビス・シグナル』のリーダー。確かに穴を塞いで下へ下へと降りていけば、容易に降りることもできなくなる。難攻不落の高難易度ダンジョンに逆戻りだ。
帰還する時とは逆に、地上から下へ降りていく配信がそのまま「奈落の危険性の周知」と「アビプロの宣伝」になる。
「オー! さすが凛ね、ベリーナイスアイデア!」
サリー嬢ちゃんも喜んでいるということは、国連側もそういう堅実な管理を望んでいるんだな。でも……
「ガハハッ! 嬢ちゃんたち、それだけだと俺たちまで毎回遠回りをしながら降りなくちゃダメになる……専用の『鍵付き出入り口』を作るのが正解だな!」
「さすがはおじさまですわ。それなら専用の魔法鍵を取り付けて、私達だけでなく許可を出した調査隊だけが出入りできるようにしませんか?」
「おお、それはいいな!」
「それなら、縦穴は相当深いですから、何箇所も岩盤で塞いで『階層』を作るのはいかがですか?」
「おお、さすが元・特別渉外課の斥候だな。それも採用だ!」
「はいはい! ボクからも……リーダーやアリスちゃんみたいに強くなりたいな。ダメかな?」
ん? 確かにノエル嬢ちゃんやサリー嬢ちゃんの強化・レベリングも兼ねて『新生・奈落』へ挑むとしよう。
こうして、俺たちの次なる大事業――『アビス・シグナルによる奈落封鎖&新ダンジョン階層化配信プロジェクト』が動き出したのだった!




