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『【朗報】プロフェッサー「ノエルちゃんの保護、および病院の刺客のシステム無効化完了。重課金貴族のヘリにて安全な医療施設へ移動中。ギルド長が周辺を確保済み」』


 すごいなリスナーは……ものの数時間でノエル嬢ちゃんの安全を確保してしまった。しかも御剣社長に手を出させないために……


『現在、マジカルアドベンチャーの本社を見張ってるぞ! クロエちゃんにもノエルちゃんにも手は出させん!』

『奈落に向かうアジアド社の車を発見した。通報しました』

『アジアド社の情報操作を未然に防げたわ!』


 数多く寄せられるクロエとノエルを支援するリスナーのコメントを、クロエに見せてやる。


「ほら、見ろクロエ嬢ちゃん。お前も、ノエル嬢ちゃんも……もう一人じゃないぞ」


 俺は目まぐるしく流れる配信画面を、クロエの目の前に差し出してやった。

 そこには、見知らぬ大勢の人々からの、温かく力強い言葉が溢れ返っていた。


『クロエちゃん、もう泣かないで!』

『ノエルちゃんは重課金貴族のヘリで最高の病院に向かってるから安心して!』

『黒猫ちゃんは今日からアビス・プロダクションの家族だ!』


「あ……あ……っ……」


 画面を見つめるクロエの瞳から、ポロポロと大きな涙の粒がこぼれ落ちる。


「なんで……なんで会ったこともない私なんかのために……みんな、こんなに……っ」


「ガハハ! 配信者とリスナーってのはな、画面越しでも繋がってる『仲間』なんだよ!」


 俺は豪快に笑い飛ばすと、ぽんとクロエの頭を撫でてやった。


「凛ちゃん! アリスちゃん! ノエル嬢ちゃんの病気を治すための『薬』を作るぞ!」


「うん、分かったよゲンさん。それでどうすればいいの?」


「はい、私にできることなら頑張ります」


 凛嬢ちゃんは拳を握りしめて気合を入れ、アリス嬢ちゃんはクロエ嬢ちゃんにニッコリと微笑みかけて心のケアをしている。


「実はな……少しギャンブル性の高い素材なんだ。運が絡む素材なだけに、嬢ちゃんたちの戦闘回数も増えてしまうかもな」


「大丈夫だよ」「お任せください」


 2人から力強い返事が返ってくる。


「私も……手伝わせてください。ノエルを元気にさせるのに見ているだけなんて……」


 俺が返事を渋っていると……


「うん! 一緒に頑張ろうね」


「はい! 妹さんを苦しみから救ってあげましょう」


「ありがとう。それとゴメンなさい。あなたたちを襲って……そして、よろしくお願いします」


 ヤレヤレ、クロエ嬢ちゃんは奈落での戦闘を経験してないからね……でも女の子たちでキャイキャイ言い合って、あっという間に仲良くなっている。

 そして掲示板(コメント欄)も……


『アビス・シグナルへようこそ!』

『黒猫ちゃんカワユス!』

『妹ちゃんを元気にするために頑張れ〜』

『おっさん、黒猫ちゃんをアビス・シグナルへ勧誘だぁ〜、俺がグッズを買うから……頼む!』


「そうだな……クロエ嬢ちゃん。俺たちの冒険者アイドル『アビス・シグナル』へ入らないか? この2人と冒険者パーティーを組んでみないか?」


「いいの? 私はあなたたちを殺そうと……」


「ああ、俺たちに被害はないし……今まで暗殺はしたのか?」


 首を横へブルブルと振って否定した。


「なら、大丈夫だ。どうだろう? 日の当たる場所で一緒に笑い合いながら冒険者アイドルをやろう。もちろんノエル嬢ちゃんもな」


「――――本当に……ううん。お願いします。私とノエルをアイドルにしてください」


 泣いていた顔がこれからの希望に満ちた清々しい顔に変わり、ニッコリと笑っている。俺はセラフィムの方を指さして……『あっちにも』とジェスチャーしてやる。


「あ……」


 俺の意図に気づいたクロエ嬢ちゃんは、少し頬を赤らめながら、ゆっくりとカメラ――セラフィムの前へと歩み出た。


 カメラの向こうには、今この瞬間も自分と妹を応援してくれている100万人以上のリスナーたちがいる。


 深呼吸を一つ。

 クロエ嬢ちゃんは、暗殺者の仮面を完全に脱ぎ捨てるように、胸の前で綺麗に手を重ねて深くお辞儀をした。


「画面の向こうの……『仲間』のみなさん! 本当に、本当にありがとうございます……っ! 私とノエルの命の恩人です!」


 顔を上げたクロエ嬢ちゃんの目には、もう絶望の影は微塵もなかった。


「私は今日から……暗殺者の『黒猫』をやめます! 『アビス・プロダクション』のクロエとして、みんなに笑顔と元気を届けられるような……最高のアイドルになってみせます! だから……どうかノエルと一緒に、見守っていてください!」


 満面の笑みで放たれたその言葉に、配信のコメント欄が一瞬止まり――爆発した。


『『『うおおおおおおおおお!! 歓迎!!!』』』

『泣いた。マジで泣いた』

『黒猫ちゃん改め、クロエちゃん爆誕ーー!!』

『【朗報】アビス・プロダクション、3人目の美少女アイドル正式加入!』

『スパチャ(投げ銭)祭り開催!!!』

『重課金貴族「【赤スパチャ 1,000,000円】祝・アビス・プロダクション新メンバー加入&妹君の全快を祈って」』

『重課金貴族様また100万投げてて草www』


「ガハハ! 歓迎の嵐だな! 良かったな、クロエ嬢ちゃん!」


 俺が豪快に笑いながら肩を叩くと、凛嬢ちゃんとアリス嬢ちゃんが左右からクロエに抱きついた。


「改めてよろしくね、クロエちゃん! 私は風間凛だよ。リンって呼んでね。一緒に最高のステージを作ろうね!」


「ええ、とっても心強いですわ。私は結城アリスです。アリスと呼んでください。クロエさん、よろしくお願いいたしますね」


「う……うん! 私は神楽坂(かぐらざか)クロエです。凛ちゃん、アリスちゃん……よろしくね!」


 女の子三人が抱き合ってキャッキャと笑い合う姿に、コメント欄は『尊い』『てぇてぇ』『目の保養』の文字で溢れ返っていく。


「よし! しんみりタイムはここまでだ!」


 俺は肩に担いだ金槌をドスンと地面に下ろした。

 厄介な素材を取りに行かないと……

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