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治せるよ

【特別渉外課・暗殺者クロエ視点】


『美少女暗殺者来たーー!!』

『ドワーフ無双www』

『おお、アビス・シグナルにはなかった属性だ』

『おっさん、忍者少女を確保しろ!』


 リスナーが画面の向こう側で騒いでる。気持ちは分かるけどな。


「よし、身動きできないように縛ったぞ!」


『きたーー! ご褒美だ! おっさん、どんなプレイだ?』

『全裸待機』

『同じく』

『はよーー!』

『お前ら見すぎだからwww』


「お前らバカばかりだな。ちなみに全裸待機は何人だ?」


『全裸待機、現在38,000人!!』

『ノ』

『ノ(※全裸)』

『通報しました』

『おっさんノリノリでアンケート取るなwww』


「おいおい、3万超えは世も末だな! お前らちゃんと服着て配信見ろよ! 母ちゃんに見られて気まずい思いをするぞ!」


 呆れ顔で配信画面にツッコミを入れるゲンさん。

 その足元には、がっちりとロープで身動きを封じられた私が転がされていた。


(うぅ……なにこれ……なにこの空気……!?)


 暗殺失敗。

 捕獲。

 本来なら尋問か、あるいはその場で首を跳ねられても文句は言えない状況だ。

 なのに、この人たちは私を縛り上げたあと、配信画面の向こうにいる「リスナー」とくだらない会話で盛り上がっている。しかも、配信で素顔まで映されて……暗殺者としても終わった。


「う、うぐ……っ! 殺すなら殺しなさい! 私は口を割らないわよ……ッ!」


 必死に睨みつけて叫んでみるものの、ロープが口元に食い込んで全然格好がつかない。


「殺すわけねぇだろ。俺たちは冒険者だぞ。嬢ちゃん達、この子の身体検査をしてくれ。何か武器を隠し持ってるかもしれんからな……それとも俺が身体検査しようか……グヘヘヘ!」


『おっさん、希望!』

『おっさんに一票』

『美少女とおっさん……アリだな』

『おっ、リスナーも……アホだった』


「もう、本当に信じられない。みんなエッチだよ。この子の身体検査は私達でやります」


「そうですよ。女の子の身体を触るなんてハレンチです」


 ◆◆◆◆

【岩本源視点】



「ちぇっ、減るもんじゃねぇのにケチだな……」


 ゲンさんが大げさに肩をすくめると、配信画面には一斉にツッコミの文字が溢れ返った。


『おっさん弾圧されてて草www』

『凛ちゃん&アリスちゃんの「ハレンチ」助かる』

『通報回避! 警察の敗北!』

『重課金貴族「おっさんが触るならスパチャ全額引き揚げていたところだ」』


「……な、何なのよこの人たち……頭がおかしいんじゃないの……!?」


 転がされたまま愕然とする私に、凛とアリスがそっと寄り添ってきた。

 凛の手には、私の腰から没収されたスペアの暗殺毒針。アリスの手には、太もものホルダーから抜かれた小型投擲ナイフ。


「はい、武器はこれだけかな? 暗殺者さん、服の中に爆弾とか隠してない?」


「あ、ありません……! それに暗殺者じゃなくて『黒猫』……ううん、クロエよ!」


「クロエちゃんね! あっ! これは?」


「写真のようですわね……」


「――――返してーー!!」


 うお、ビックリした。身体検査をしていた凛嬢ちゃんとアリス嬢ちゃんも身体をビクッとさせている。

 俺は後ろを向いてリスナー相手に話をしていたが、その声に振り返りそうになる……


「ゲンさん? 今、振り返ったらお仕置きですよ」


「そうですよ。でもクロエさんの大事な写真なのは分かりましたが……」


 リスナーが煩く『振り返れ!』とか『今がチャンス!』とか送ってくるが無視だ!


「クロエちゃん、ちょっとゲンさんに見てもらうね」


「うん、そうした方がいいよ! おじさまならなんとかしてくれるかも……」


「……見たのね? もういいわ。好きにしなさい」


 そうして後ろを向く俺に、クロエの写真が手渡された。


 …………?


「――クロエ嬢ちゃんとか言ったな? なんでクロエ嬢ちゃんと同じ顔した子がベッドに……双子か?」


 病院のベッドだろうか? 上半身を起こしてコチラを見てニッコリと笑う、クロエに似た少女。しかし、その皮膚には白い粉みたいなのが吹き出し、肌を覆っていた。


「妹のノエルよ。私達は双子。でも、3年前に原因不明の病気にかかって……お金が必要なのよ。本当は暗殺者なんてやりたくない。でも私がやらないとノエルは死んでしまうの。この病院だってマジカルアドベンチャーの御剣が……」


「ちょっと、待て! マジカルアドベンチャーが絡んでいたのか? 御剣社長の命令なのか?」


「ええ、『トカゲ』達がやられて私も捕まった。だからもう、私達は御剣に始末されるわ。もう、終わったの……」


 なるほどな。この嬢ちゃんは人質を取られてやりたくない事を……なら!


「『アビス・プロダクション』の業務命令だ! クロエ嬢ちゃんの妹ちゃんを確保してくれ……御剣社長が動く前に……クロエ嬢ちゃん、病院はどこだ?」


「えっ、えっ? どういう事?」


「ん? 今からこの配信を見ている俺達の仲間に、ノエル嬢ちゃんを安全なところへ避難させるんだよ」


 俺はセラフィムを指さして……


「リスナー、100万人が動く! そして、ノエル嬢ちゃんの病気は俺が治す。頼んだぞ……みんな」


「そんな事が出来るの? ううん! 皆さんお願いします。ノエルを……妹を守ってください」


 画面越しに映る涙に――リスナー達の心は1つになった。

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