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神聖国

久々のLP視点です!

毎日19時頃投稿予定です。

~LP's View~


小型ジェットが高度を下げ、窓の外には広大な大地、そしてその先に威容を誇る神聖国の首都が視界に入ってきました。事前に収集した情報に基づき設定した、ランデブーポイントに向かいます。


「わぁ!あれが神聖国なんだね!すごい!」


隣に座るシエナ様が、瞳を輝かせて窓の外を指差しました。彼女は初めて見る神聖国の姿に、非常に強い感情的な反応を示しています。人間の純粋な喜びという感情は、私にとって常に興味深い観察対象です。


「はぁ……はしゃぎすぎよ、シエナ。まだ着陸もしてないのに」


ミロンが、呆れたようにため息をつきました。その表情は一見すると冷淡ですが、声のトーンには微かな優しさが含まれており、彼女の、意図せず生まれてしまった「ツンデレ」プログラムが稼働中であることを確認しました。


「でも、見て!あの建物、空に届きそうだよ!私、初めて見る!」


シエナ様の興奮は収まりません。ミロンは、そんなシエナ様に向けて呟きました。


「仕方ないわね。あの塔は『天光塔』と言って、神聖国のシンボルになっているのよ。最上部には神がいるなんて、馬鹿げた伝説もあるけど」


ミロンの口から発せられた情報は、事前に送り込んであるロデア弐号機が入手したデータです。


彼女は、シエナさんの問いかけに応える形で、表面上はぶっきらぼうに、しかし確実に必要な情報を提供しています。そして、「神がいるなんて馬鹿げた伝説」と断じるミロンの言葉。AIである彼女にとって、観測できない、論理的な根拠のない存在を否定するのは当然の帰結でしょう。


しかし、私には、その「伝説」という言葉に、わずかながらデータ上の整合性の欠如、すなわち不可解な違和感を覚えました。神聖国の信仰体系、そしてこの星の魔法技術の特異性。それらが単純な「馬鹿げた伝説」で片付けられるとは、システム的に判断できない何かがそこに存在するように感じられます。


「テンコウ塔?」


シエナ様が首を傾げるのを見て、ミロンの説明に補足を加えます。


「天に光と書いて天光塔です。これは神聖国の核となる、モナト教を象徴するシンボルで、その実は謎に包まれた建造物です。かなり古い時代に建造された塔であることが予想され、場合によっては神聖国が国として成り立つ前から存在している可能性があります」


「そんなに古くから!? あんなに大きな塔が、です?」


「ほんとかしら。どうせ弐号機の情報が間違っていたとかいうオチよ」


「その可能性も否定できませんが。基本性能は私やあなたと同じです。正確性のある情報しか送ってこないと思います。……しかし、自分の能力を疑うという行為は重要ですね」


「……フンッ。アンタ理屈っぽいのよ。言われなくても分かっているわよ。……弐号機の…能力は、べ、別に本気で疑ってるわけじゃないんだから」


最後は付け足すように、聞き取れるか聞き取れないかくらいの小声で、不本意なニュアンスが込められているように感じられました。


……ミロンは高性能な能力でツンデレを実行しているようです。


「もうじき、予定地点へ到着します」


機体は、徐々に人里離れた森の奥深くへと針路を取りました。木々の間を縫うように、静かに高度を下げていきます。


「この先、人間の活動痕跡は極めて少ないため、不審に思われる可能性も低いと判断しました。しかし、魔獣の生息域でもあります。注意してください」


私は二人に警告しましたが、二人とも特に気にしていない様子です。


シエナ様は一見ただの少女ですが、その実態は魔王軍での従軍経験があり、強力な傀儡魔法の使い手でもあります。


ミロンも私と同程度の格闘能力を有しています。いえ、出力で言えば私以上でしょう。ミロンはロデア零号機で、プロトタイプという背景があるため、継戦能力では劣るものの、出力は出来得る限りの最大値で設計されています。


私とミロンでシエナ様を防衛する陣形をとれば、大抵の魔獣は問題ないでしょう。


あれこれ演算している内に、機体は広々とした自然の空き地に静かに着陸しました。周囲は深い森に囲まれ、人の気配は全くありません。情報通り、完璧な隠蔽地点です。


「ここを仮拠点とします。機体は完全にステルスモードに移行し、外部からの探査を遮断します。シエナ様、ミロン、ここからは徒歩での移動となります。このエリアの詳細な地図データをミロンに転送しました。確認をお願いします。ミロンは常にシエナ様から離れないように行動して下さい」


「アンタに言われなくてもそうするわよ」


「よろしくです。ミロン」


「フン、ちゃんと私の傍に居なさいよね」


マスターの目的を達成するため、この星の謎を解き明かすため。ここからが、私の本格的な活動の開始です。

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