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リンクス始動

毎日19時投稿予定です。

「お目覚めください! エルピー様!」


スリープモード解除。


『おはよ~』


「お、おはようございます! エルピー様。遅くなり申し訳ございません。これでいかがでしょうか?」


マッド様は急いでバッテリーを持ってきてくれたのでしょう。何せあの山脈を越えなければなりませんから。時間がかかることは予想していました。


『うむ。それで良いぞ』


持ってきていただいたバッテリーで充電を開始する。十分な電力とはいかないがエアレーを起動しないのであれば当分は持つだろう。


『良い働きである。約束通りお前の願いを叶えてやろう。願いを申せ』


「ははぁ。それでは、あなた様の傍に置いてくださることをお許しください」


ん? どういうことでしょうか? 何か手伝えることはないかと問うたつもりですが。そんなことでよいのでしょうか?


しかし、その申し出は好都合です。この世界についての知識が私にはないので、いろいろと約に立ってくれるでしょう。


『そのようなことでよいのか?』


「はい! わたくしにできることがあるならば何なりとお申し付けください」


まだ手伝ってくださるようです。この星の人類は他文明に対してとても寛容的なようですね。


とりあえずはこの周辺の状況でも尋ねてみましょう。


『それでは問おう。この辺りの支配者はだれだ?』


「支配者、ですか? この辺りは一応、魔王領ということになってはおります。しかし、この山脈以東は未開の地となっており、人が住めるような環境ではなく所有者ならばおりません」


『それはこの山脈も含むのか?』


「はい、この山脈も誰も所有権を有しておりません。そもそも人が近づくことはありませんので……」


所有者はいない。この文明の法律がわからないのでなんとも言えませんね。


『このあたりの採掘権はどうなっている?』


辺りを少し調べただけでも鉱石や石炭があります。パターン的には大きな鉱脈が存在するでしょう。


そうなれば問題は採掘権です。他文明の財産を勝手に使用するのは星間問題になりかねません、なんとか交渉しなければ……


「そのようなものはございません。全て自由です」


全て自由? そんなことがあるのでしょうか? 確かに人の手が入っているようには見えません。しかし、これだけの資源があるのになぜ開拓しないのでしょうか?


マッド様は自由とおっしゃっていたので保護しているというわけでもないのでしょうが……


まあそういうことであればとりあえず、少しだけこの辺りの資源を頂戴しましょう。


何か問題が生じた時にはマッド様に許可を得たということにして……


しかし、今の状態では私は動くことができませんし、マッド様も採掘に必要な機械類を持っていないようです。


まずは私が動けるように仮のボディをエアレーの部品を使って作るとしましょう。


『マッドよ。これから我の言うとおりに行動しろ。まずは我の掌の上に乗れ』


「は、はい! かしこまりました!」


マッド様をコックピットに入れると何やら騒いでいます。


エアレーはトップレベルの機密情報なのですが、この際仕方ないでしょう。これは最終手段ですが、マッド様を消してしまえば問題ないでしょう……状況的にいつでも実行可能です。


「何をすればよろしいのでしょうか?」


今ではないですね、少なくとも協力関係のうちは殺さずにおきましょう。


まずはコックピット内の使えそうな部品を外してもらいましょう。


『まずはそこの装置を取り外せ』


「そ、そのようなことをしてよろしいのですか? 御身を傷つけるなどと」


『気にするでない。我がその程度でどうにかなるとでも思うか?』


「わ、分かりました。それでは失礼して……」


コックピット内の装置は壊れているものが多い。それらを取り外してもエネルギーさえあれば、エアレーを起動して移動させるくらいならばなんとかなるでしょう。戦闘となれば無理ですが。


~数時間後~


一通りコックピット内にある使えそうな部品は取り出せました。


『次は我の左足を切り落とせ』


「な、なんと! そのようなこと私にはできません!」


今のエアレーはもう自立歩行ができない状態で、さらに左足側のスラスターももう使えない。あっても機体重量が増えるだけです。


それならば有効的に活用しましょう。


マッド様は頑丈な装甲を破壊する機械を持っていないために無理だと言っているのでしょうが、元々機体には各部位をパージする機構が備わっているため切り離しは可能です。しかし操作系統に一部故障がみられるため自動でのパージは現在不可能。ですが外側から手動でアクセスできれば可能でしょう。


『お前ならば可能だ。我の言うとおりに動け』


「エルピー様がそうおっしゃるならば…」




ガシャン…


マッド様のおかげで左足の切り離しを完了。後は分解して、使える部品で新たに仮のボディを作成しましょう。



ーーーー



「エルピー様! 完成いたしました!」


『マッドよ。よくやった。あとはこの線を差し込め』


完成した二足歩行の無骨なグレーのボディは、あまり激しい動きは出来ませんがエアレーの外装を使っているため耐久性能は高いはずです。


このボディに搭載させたCPUに私のコピーを一部書き込みましょう。本当ならば遠隔で直接指示を出せればいいのですが、無線接続をする機能が即席では作れないのでひとまずはこれで良しとしましょう。


「はい! ここにこうして……」


機体に有線で接続し、しばらく待っていると無事に起動しました。


『………データ転送完了。OSを機体に合わせて自動更新。…完了。個体名を登録してください』


「しゃべったぁぁぁぁ!」


『個体名”シャベッター”でよろしいですか?』


『待て。個体名はリンクスとする。リンクスよボディの自己診断プログラムを実行せよ』


『異常ありません。しかし活動に必要なエネルギーが十分ではありません』


いぜん電力不足は解決できていません。


余りもので発電装置を作るしかありませんね……


『リンクス。残っている部品で発電機を作ることは可能か?』


リンクスはしばらく計算してから答える。


『可能です。作成しますか?』


『実行せよ』


『了解』


リンクスは正常に稼働しているようですね。簡易的な作業であれば問題なく行えるようです。




『完成致しました』


なるほど……車輪を動かして運動エネルギーを電力に変換する、ダイナモ発電のようですね。


しかし、この見た目は古代人類の乗り物。自転車というものに類似していますね。


『機構を動かす動力はどうする?』


リンクスがマッド様を指さす。


「私、ですか? なにをすればよろしいのですか?」


マッド様も手伝ってくれるとおっしゃってくださいましたし、お願いするとしましょう。


『ペダルを漕げ』


マッド様が恐る恐るリンクス製の装置に乗ってペダルを漕ぎはじめました。


「こうでよろしいのでしょうか?」


『発電を確認。しかし充電には時間がかかります』


『マッドよ! ケイデンスをあげろ!』


「は、はい! かしこまりました!」


~1時間後~


「はぁはぁ…エルピー様…ま、まだでしょうか?」


『リンクスよ。どうだ?』


『充電量32%です』


それくらいあればとりあえず大丈夫でしょう。


『マッドよ。もうよいぞ』


「あ、ありがとうございます……」


『リンクス。この周辺に鉱物資源がある。使えそうなものを採掘してきてくれ。運搬用にエアレーの部品を使うことを許可する。台車でも作って。可能な限り運んでくれ』


『了解』


命令を受けたリンクスは台車を組み上げ、採掘に向かっていった。


『さてマッドよ。次は我の充電だ』


「ま、またあれをするのですか!?」


『リンクスが戻ってきたら拠点を移して。我の完全復活のための準備を整える。そのためにはお前の力が必要だ。やってくれるな? マッドよ』


「エルピー様の完全復活……! かしこまりました! 馬車馬の如く。粉骨砕身。身を粉にして働かせていただきます!」



そうしてマッドは自転車を漕ぎ続けるのであった。


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ちょっとでも続きが気になると思っていただけたら是非お願いします!


頑張れマッド。

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