表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/130

冷徹な監視者

毎日19時頃投稿予定です。

学園の喧騒は、カインにとって常に背景の音でしかなかった。彼の意識は、遠く中庭にいる二つの人影に集中していた。フレイアスト、そしてアストリア。


彼らが二人で並んで歩き、時折言葉を交わす姿を、カインは窓辺から静かに見下ろしていた。表情筋一つ動かさず、ただガラス越しの世界を眺める。アストリアがフレイアストの言葉に小さく頷いたり、何かを受け取ったりするたび、カインの瞳の奥で、無機質な光が微かに揺らぐ。


(アストリア……。なぜ、あのような『異物』に構う?)


カインの脳裏には、アストリアの完璧な姿だけが焼き付いている。彼女は、ただ、美しい。その圧倒的な美しさは、帝国の第一皇子たる己が手中に収めるべき唯一無二の存在だった。


フレイアスト。カインは彼を「異物」として認識してきた。アトレイディス家の人間でありながら、適性を持たず、しかし異常なほどに学園の常識に囚われない言動。皇帝の次に権力があると噂されるアトレイディス家の一員であることは事実だが、この「落ちこぼれ」の小僧は、能力的には取るに足らない。いつでも潰せる。今は、アトレイディス家そのものへの警戒は継続するが、この目の前の小僧個人が脅威になることはないと、カインは余裕を持って考えていた。


だが、アストリアが、なぜ彼のような存在と時間を共有しているのか。その一点だけが、カインには心底理解できなかった。彼女から感じられる知性、高潔さ、そして美貌。それら全てが、フレイアストという「異物」には全く見合わない。不愉快なほどの違和感が、彼の冷静な思考に微かな波紋を広げた。


(くだらない魔法にまで手を出しているようだが……アストリアが唯一行動を共にする存在、その点だけは看過できぬ)


カインは、フレイアストの動きを綿密に監視させていた。彼が図書館の特殊な書架に足を踏み入れ、人目のつかない薬草園に通い始めたことも、全てカインの耳に入っている。貴族派の連中が、フレイアストの邪魔をしていることも承知の上だった。彼らの行動は、カインからすれば稚拙極まりないが、今は泳がせておく方が都合が良かった。


(フレイアスト・フォン・アトレイディス。ただの落ちこぼれ。取るに足らない小者だが、なぜか無視できない違和感が付きまとう。違和感の正体は分からない。だが、アトレイディスという家名だけでも、あいつは潰しておく方が賢明だろう)


直接手を下すのは、まだ早い。フレイアストの違和感を、カインは完全に分析する必要があった。それに、アトレイディスという家名が彼の行動を抑制する。他の貴族を斬って捨てるのとはわけが違うのだ。


(チッ、アトレイディスめ……目障りだ。それに、あれ(アストリア)がアトレイディスの手に行くことは許されない……)


彼の心臓の奥底で、アストリアへの執着と、フレイアストへの冷たい敵対心が、日々明確な形を帯びていく。


彼は、獲物を狙う猛禽類のように、静かに、しかし確実に、その時を待っていた。

ブックマーク、高評価、グッドボタンが何よりも励みになります!

ちょっとでも続きが気になると思っていただけたら是非お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ