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緑属性への注目

毎日19時頃投稿予定です。

学園に入学して数週間、俺の日常は図書館の分厚い書物と、そこに記された魔法理論の矛盾を探すことに費やされていた。この世界の魔法は、確かに強力で目を瞠るものが多い。しかし、物理法則という前世の知識に照らし合わせると、その根本的な原理にはお粗末な穴がいくつも存在した。


特に俺が違和感を覚えたのは、「五大元素(火、水、風、土、雷)」と呼ばれる魔法属性の分類と、その応用範囲の限定性だった。図書館に並ぶ膨大な魔導書や研究論文は、これらの元素魔法が「いかに効率的に、より強力に発動するか」に終始しており、その根源にある「魔素マナ」の真の性質や、魔法が発現するメカニズムについては、極めて漠然とした記述しかなかった。


まるで、誰もがその表層的な応用ばかりを追い求め、深層の真理に蓋をしているかのようだった。


ある日、俺は古びた魔導書の一角で、ほとんど記述がないに等しい「特殊属性」という曖昧な分類を見つけた。その中でも特に目を引いたのが、「緑属性」という項目だった。


緑属性、その魔法は帝国の平民特有の魔法で、その効果は、植物の成長をわずかに促したり、漠然とした治癒効果をもたらしたりするという。


しかし、その原理は一切解明されておらず、「地味で非効率」「戦いには使えない眉唾な能力」として、ほとんど顧みられていないことがはっきりと見て取れた。


要するに、農民の間で、「おまじない」程度の認識で通っている魔法だ。


この世界の魔法は、まるで古典物理学の延長でしかない……いや、それ以前か。


あまりに万能で、しかも理解し難い魔法という存在のせいで、物理学という学問が進まなかったのだと予想できる。


それに、問いを投げかけるよりも神の御業とした方が都合がよかった、という側面もあるのだろう。


しかし、俺は、相対性理論が魔法の現象に適用されることを知り、独自の視点で解析を進めていた。


五大元素魔法が、ある程度法則に乗っ取って発動するのに対し、この「緑属性」は、その効果の不確かさや発現の偏りから、術者の「イメージ」や「生命」への認識が、より色濃く魔法に反映されているのではないかという仮説が浮かび上がった。


魔王領における「闇属性」や、俺の持つ「無属性」の適性と似たようなものだろう。


この世界の科学では未開拓な領域にこそ、俺の求める「真理」がある。そして、この帝国が「無価値」と断じ、ほとんど記録すら残そうとしてこなかった「緑属性」にこそ、その真理を解き明かす鍵が隠されているのではないか――。


近年、帝国でも「緑属性」についての研究に真剣にとりかかろうという動きがある。その一端が、この帝立学園に平民の「特別聴講生」を入学させるという制度だ。


しかし、俺から見ると、それは全く機能していない。むしろ貴族が平民を見下し、帝国内部の軋轢を生んでいるだけにしか見えない。


だが、もしも「緑属性」の有用性が証明されたら……。


平民の立場は改善に向かうかもしれない。


もしくは……。


どちらにしろ、「緑属性」は、今後の帝国にとっての「劇薬」となるだろう。


俺の知的好奇心は、この「緑属性」が持つ未知の可能性と、その記述の少なさに強く引きつけられ、それまでの研究の焦点を、この謎多き属性へと明確に定めていった。

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