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学園の波紋と影

毎日19時頃投稿予定です。

波乱の入学式が終わり、俺は重苦しい余韻を引きずりながら、指定された教室へと移動していた。


広い学園の廊下は、真新しい制服に身を包んだ新入生たちでごった返している。誰もがまだ慣れない環境に戸惑いつつも、期待と不安、そして先程の入学式での衝撃を隠しきれない様子だった。


周囲では先程の第一皇子と生徒会長の主張について様々な意見が飛び交っていた。


「なあ、生徒会長の挨拶どう思った?」


「ちょっと厳しいなって思ったけど、真っ当なことは言ってるよな」


「だよな? 実力至上主義的な面はあるけど能力が正当に評価されるならやりがいがあるってもんだ」


正当……。貴族からしたらそう映るか。平民のことは眼中にない。


「皇子の考えは?」


「それは……その。確かに一理あるとは思ったけど……」


貴族からしても少し行き過ぎと感じるようだ。


ただ、一方で。


「皇子殿下かっこよかったわ」


「そうよね。いかにもカリスマって感じがして」


「神聖なる血統。それを証明するがごとく首席合格で学園に入学。加えてあの凛々しいお姿」


「そうだよな。男の俺から見てもかっこよかった。あのお方についていけば間違いなく帝国は繁栄するだろうな」


廊下のあちこちから聞こえてくる声に、俺は耳を傾けながら歩を進める。学生たちの顔は、それぞれの思想への支持や感情によって、期待に満ちた輝きを帯びたり、あるいは困惑や警戒の色を浮かべたりしていた。その熱気を、どこか他人事のように感じていた。


皇子のカリスマ性に魅入られる者も多くいた。


能力のない者があれだけのことを言ってもただの傲慢でしかないが、皇子は今のところ神聖な血統とやらを証明して見せている。


圧倒的な個によるトップダウン型の構造は利点も大きいが課題もある。


俺の見た感じでは生徒会長と皇子。どちらの考えも支持する者の割合で言えば半々といったところで、どちらかと言えば生徒会長の考えを支持する層が少し多いくらいか?


これには多分、少なからずアトレイディス家の存在が影響している。


父の代でアトレイディス家は皇帝の次に権力を有するとまで言われるようになった。一貴族がここまで力を伸ばしているということは皇帝の絶対性が揺らいできている証拠だ。


皇子と生徒会長の対立は学園内に留まるものではなく、すでに帝国全体に広がっている考えと思われる。


不意に、近くを歩いていた男女の会話が耳に飛び込んできた。


「そういえば生徒会長の挨拶の中にジークハルト様のお名前が出て来たわね」


「そうだな。現生徒会長は前任のジークハルト様の考えを引き継いでいるそうだ」


ジーク……。兄の名が出てくるとは思っていなかった……。


ジークが前生徒会長を務めたことは知っていた。だが現生徒会長の思想に影響を及ぼすほどのことをしていたとは思ってもみなかった。


ジークがこの学園に及ぼした影響をサンに調べてもらおう……。


「そういえば、ジークハルト様の弟君も今年入学しているそうよ?」


うっ……。やはり俺はジークの弟として一定の注目を浴びることになりそうだ……。


心の隅で嫌な予感がした。


「らしいな……。でも、知ってるか?」


「なにを?」


「噂だと五元素の適性を持たず、実技試験で最低点。加えて筆記試験も最低点らしい」


「そうなの? ジークハルト様の弟君に限ってそんなことあり得るの?」


「あくまでも噂だぞ? でも実際に魔法の実技で適性がないところを目撃した奴がいるって……」


「仮にそれが事実だとして、どうして学園に入学出来たのかしら」


「……それは決まってるだろ?」


「どういうこと?」


「家柄だよ……。言わせるな、聞かれていたらたまったもんじゃない」


……聞こえているぞ。


彼らのひそひそ話が、俺の耳には妙にクリアに響く。気のせいか、すれ違う学生たちの視線が、時折チクリと肌を刺すような気がした。


……はぁ。……すでに噂になっているとは。


自業自得なのだが、まさか成績があんなにも悪いとは思ってもみなかった。


優秀とまではいかなくとも、そこそこの点数を取れることを予想していたうえで父に力添えを頼んだのに、完璧に裏目に出てしまった。


悪目立ちしすぎている。


仕方がないか……。


俺は深く息を吐き、足元に視線を落とした。この広大な学園で、いかにして目立たずに目的を達成するか。


それは、これまでの人生で培ってきた常識が全く通用しない、新たな試練の始まりだった。

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