入学試験 二日目
毎日19時頃投稿予定です。
二日目は筆記試験だ。
試験内容は、一問一答形式の数学と歴史のテストと、魔法論理の小論文。この3科目だ。
はっきり言って、筆記試験は余裕だ。俺が特別、頭がいいというわけではない。
前世の文明の記憶がある俺には、この星の文明のレベルが低過ぎて簡単に感じてしまう。
知識レベルが違い過ぎて、初めて屋敷で教育を受けた時に悟った。
基礎的な学問に於いて、俺は学ぶことがないと。
だからそれらは学ばず、貴族の作法を学ぶことに重点を置いて、あとはなるべく事実だけ述べられた本を読んで自分で知識を得ていった。
前世の文明レベルの基礎的な学力さえあれば筆記試験は余裕だ。
なので今日は正直言って消化試合。
あとは結果を待つだけだ。
そのはずだったのだが……
試験会場は広大な講堂で、静寂が張り詰めていた。ペンが紙を擦る音、時折聞こえる深い息遣い、そして時計の秒針が時を刻む音だけが、耳に届く。誰もが己の知識と思考力を総動員し、眼前の問題用紙に集中している。鉛筆を走らせる速さにも、それぞれに焦りや自信が垣間見えた。
一科目目の数学は簡単だった。おそらく満点だろう。
その時までは、この程度のレベルなら案の定、筆記試験は余裕だと考えていた。
二科目の歴史。問題が難しい。単純にレベルが高いというのではなく、問題の意図を理解するのに時間がかかった。
例えば、人類の起源を帝国の歴史に照らし合わせて説明せよ。という問題。
生命の起源を問うだけならば明確な回答は可能だが、帝国の歴史に照らし合わせろとはどういう意味だ?
起源に帝国が関わる余地はどこにあるのだろう。全く関係のないことを無理やりつなげて論じる応用力のようなものが試されている?
他の問題にもそのような傾向がある。
帝国の起源を魔法の適性を用いていて答えよ。……これもどういうことだ?
帝国の起源と適性? 成り立ちならば、五元素の適性を持った者が力を持ち、支配者階級として台頭し、それを取りまとめていた者が皇帝になったという風に説明は出来る。
だが、起源と魔法適性の関係は? 直接的な関係はないはずだ……。問題文のミスか?
俺は額にじっとりと汗が滲むのを感じながら、眉間に深い皺を刻んだ。何度問題文を読み返しても、しっくりくる答えが見つからない。
全ての問題に論理的に答えるのがむずかしかった。そのせいで制限時間ギリギリまで考える羽目になり、さらに、設けられた空欄に収まらない文章量を記入する必要があった。
鉛筆を握る手に自然と力が入った。
だが、俺の前の席に座るどこか既視感のある銀髪の少女。俺がこんなにも苦戦しているというのに、彼女は早々に手を止め、机に突っ伏して居眠りを始めていた。
妙に引っかかる銀髪だ。どこかで見た覚えがある。しかし、その顔に記憶はない。
この状況で居眠りとは、肝が据わっている。本当にこの試験を捨てているのか?
もしかしたら、この不可解な問題の真意をあっという間に理解し、その上で不要だと判断したのか?
いや、ありえない。ただこの科目を捨てているだけだろう。
……まあ俺には関係ない。
最後に、魔法論理の小論文。
魔法と魔力の関係について簡潔に論じよとある。
これはまあ大丈夫だろう。相対性理論を魔法に適用して説明すればいいだけだ。
「ふぅ……」
全ての試験が終了して、思わずため息をついてしまう。周囲からも、安堵と疲労、そして一部からは不満が混じったようなざわめきが聞こえてきた。
正直この筆記試験を舐めていた。ここまで問題が難しいとは思っていなかったからだ。
基礎的な知識を測るための数学と歴史。論理的な思考力を問うための魔法理論。
その様に考えていたが、それだけじゃなかったようだ。応用力や柔軟性が問われているとは思わなかった。
流石は名門だ。
何はともあれ。すべての試験は終わった。
一日目の実技試験ではおそらく及第点を取れているはずだ。
二日目の筆記試験ではかなりの高得点が予想できる。
たぶん、受かっただろう。これで落ちるなら難関が過ぎる。
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