ルミナの決意
明日はいつも通り19時頃投稿予定です。
「フレイ……」
レイの突然の告白に拒絶を示したルミナは一人膝を抱えて弟のことを考えていた。
ルミナの実の弟、フレイは2歳の時に魔獣に襲われて命を落とした。
今から10年ほど前だろうか? ルミナは家族とともにリーゼ村へと移住するために魔王領の荒野の中を旅していた。
ルミナの家族は転々と住む場所を変えていた、行く村々すべてが生活困難な状態に陥り、次こそはと、まだ幼いルミナとフレイを連れて安住の地を求めて遥か遠くから国境近くの辺境にあるリーゼ村を目指していた。
「お父さん……まだ歩くの?」
「ん? 疲れたか? そうだな……あそこの岩陰でしばらく休もうか」
「うん」
「ごめんね、ルミナ、フレイ……次に行く村ではきっと幸せに暮らせるから…」
「お母さん……うん! わたしは大丈夫だよ。村に着いたらフレイと一緒にいっぱい遊ぶんだ! かくれんぼしたり、おにごっこしたり! だからがんばる!」
「ルミナ……そうだな! じゃあお父さんが鬼をしてあげよう! ガオー!」
「きゃー!」
「ふふ。ルミナ、フレイのことちゃんと守ってあげてね?」
「うん! こわいおにが来てもわたしがたおすの!」
「じゃあお父さんはそんなルミナとお母さんを守ってあげよう!」
「うん! フレイのことは任せて!」
ーーーー
「うぅ…」
昔の幸せなひと時を思い出したルミナはまた涙をこらえきれずに嗚咽を漏らす。
「あの時私がもっと強かったら……フレイを連れて逃げていれば…」
ーーーー
ガララ…
ルミナの家族たちが休憩していた岩場。その頭上から岩が転がり落ちてきた。
「ッ!」
恐る恐るそれを確認しに行ったルミナの父は叫んだ。
「走れ! 走って振り返るな!」
「お父さん?」
「ルミナ! フレイを連れて早く行け!」
「さぁ行くわよ! ルミナ!」
「お母さん! でもお父さんは?!」
「ルミナ! お父さんは後から行くから! 早くいっ…」
グサッ
「お父さん!」
「は、やく…にげ、ろ…約束……しただろ? お父さんは……ルミナとお母さんを守る…!」
「い、いやぁぁあ! おとうさん!」
「ルミナ! 危ない!」
ドスッ
「え?……お、おかあさん?」
「……大丈夫。ここはお父さんとお母さんに任せて、早く…逃げるのよ」
「でも……お父さんも、お母さんも…」
「さあフレイを連れて行ってあげて…」
「ダメだよ! みんで行くの…」
ブスッ……
「ね?フレ…イ……?」
「あ……あ、あぁぁぁあ!!!」
ーーーー
それからの記憶は曖昧だった。おそらく私の闇属性魔法が暴走したのだろう、それまでうまく使えなかったのだが、魔獣の攻撃を目にして、……愛する家族の死を目にして……私の魔法は暴走した…
魔獣に手傷を負わせた私は一心不乱に逃げた……
気を失うまでとにかく走った。
あの魔獣は、黒く鋭い棘を持っていた。はっきりとは思い出せない……でもその棘に家族はみんな殺された。
「皮肉よね自分の家族を殺した魔獣から影響を受けた魔法で生き残るなんて……」
誰もいない空間で目を腫らしながら自嘲気味につぶやいた声はどこにも届かず消えていく。
「あの時みんな死んだ。この目で確かに見た、ひとりひとり殺されていくのを……だからレイはフレイじゃないってことは分かってたのに……」
「今度こそ私が守るって決めたのに……」
「これじゃあの時と同じ……わがままで無力な私が足を引っ張ているだけ…」
「ルミナ……」
「え!? レイなんで?」
誰にも見つからないようなところに隠れたはずなのに。
「探した」
レイは成長してるんだ……狩りの腕はもう私よりも上かも。
「……知ってたんだ」
「え?」
「私の弟のこと」
「うん…」
そんなことどうだっていいはずなのになぜかレイを責めるような言葉ばかり頭の中に浮かんでくる……
「レイは秘密ばっかり!」
ちがう…
「こんなに私が想っているのに! ずっと嘘ついてたんだ!」
ちがう…
「私が守ってきてあげたのに!」
違う! そんなこと思ってない! そんなこと言いたくない!
「ルミナ……ごめん…」
レイは悪くない……本名を隠していたのも記憶喪失だって嘘をついたのも自分自身を守るため……私だって同じことをするだろう。
「……どうして帰るの?」
「帝国と魔王領の戦争を止める」
「え!? ……ばかみたい」
「うん……」
私が守ろうとするものよりもレイはもっと多くを守ろうとしているんだ。その足を引っ張るなんて本当に私は馬鹿だ。
「……わかった。手伝う」
「え!? でも……」
「わかってるよ、帝国には着いて行かない。レイには迷惑かけないよ」
「ルミナ……別に迷惑ってわけじゃないけど……」
「魔族の私が帝国に行っても捕まるだけだし……だから私は魔王軍に入る!」
「それだけはダメだ! 戦争が起こったらお互い敵同士。戦わなきゃいけないかもしれない!」
「戦争はレイが止めるんでしょ? だったら大丈夫よね? 私は魔王軍の中からそれを手伝ってあげる」
「そんな! 無茶だ!」
「もう決めたの。ううん決めてたの、魔王軍に入ることは」
「え?」
「今度こそ守るって誓ったからね、強くならなきゃと思ってたの」
「ルミナ……」
「レイとフレイは違うって分かってる……混同して考えるのはレイに悪いよね。それでいっぱい酷いこと言っちゃった、本当にごめんね。でも、レイのことは本当の弟だと思ってる」
「俺もルミナのこと……」
「私いつの間にかレイに守られてた……あの時レイに出会ってなかったら私は生きる気力を失ってたかも……レイの存在が私を守ってくれてたのやっと気づいたよ。それなのに酷いこと言っちゃって……さっきは本当にごめんね……」
「いや、いいんだ。ルミナは悪くないよ。俺がもっと早くに打ち明けていれば……。それに、俺はなにも……ただ助けられただけで何も返せてない。それどころか、ずっと嘘ついてて、挙句の果てには勝手なこと言い出して…」
「いいの。弟は姉に甘えていいんだよ?」
「ルミナ……」
「フレイ。じゃあ待ってるから行っておいで、私は私でフレイのことを守るために行動する。フレイは自分の思ったように生きなさい、困った時にはきっとお姉ちゃんが助けてあげるから」
「わかった! 行ってくるよ……姉ちゃん!」
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ちょっとでも続きが気になると思っていただけたら是非お願いします!
シリアス読むの苦手なんですが書くのも苦手だったみたいです……あと効果音も…
最後にルミナがフレイ呼びになったのには色んな意味があるんだろうなと思います。
次からは明るめのパートが続くと思うので!お楽しみに!




