プロローグ2
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「今日からお前たちは帝国軍人だ! 帝国のために戦い、帝国のために死ね!」
帝国軍。人型機動兵器部隊、母艦の中の一室。これから初めて実戦投入される、まだ十代の男女が整列している。
皆、その表情は緊張や恐怖により強張っている。その中に一人、ふてぶてしい態度の黒髪の少年がいた。
何が帝国のために戦って死ねだ。お前ら貴族のためだろうが。まあどっちでも同じか、結局は俺には何も関係のないことに命を懸けなければいけない。
「おい! そこの貴様! なんだその態度は! 名乗れ!」
態度に出したつもりはないが。顔に出ていたか? 反抗的な態度をとっても無意味なことは分かっていた。しかし、帝国のためにとか変なことを言い出すから呆れていたのは確かだ。
「アーチ・ファラデーであります!」
「アーチ・ファラデー。……その名は確か」
上官が手元の端末を操作しながらつぶやく。
「士官学校の優等性か。マナの扱いが多少上手いからと言って調子に乗るなよ?」
「は! 気を引き締めて参ります」
調子になんか乗っていない、マナの扱いが上手くて何になる? 戦場で生き残る確率が数パーセント上がるだけだ。徴兵されてしまえば一生を戦場で過ごす道しかない。戦場しか行き場がないのであればと、少しでもマシな配属を期待して養成施設では死に物狂いで優秀な成績を修め、後方に回るために、飛び級で士官学校入学への切符を勝ち取っただけだ。
「貴様らも気を引き締めろ! 今までのシミュレーターの中の戦場ではない。これから行くのは本物の戦場である。帝国の民に生まれたことを誇りに思って戦え!」
「本艦は連合国軍との戦線へ向け航行中。およそ30分後に敵艦隊に接敵する。各員第一戦闘配置にて待機。以上。解散!」
ブリーフィングが終わり、人型機動兵器の格納庫へと移動する。そこには全長18メートルほどのグレーの帝国軍量産型機体、”サーグ”がずらっと並んでいた。
「いよいよ実践か……」
サーグのコックピットは使い捨て兵士の入れ物に過ぎないため、安全性など度外視で最低限度の設備しかない。そのうえ機体性能を優先させるため、限界までパイロットのスペースは削減されている。さながら棺桶と称して差し支えない。
そんなコックピットに乗り込み考える。いったい俺は何のために生きているのだろうか? 人生のほとんどを戦闘訓練に費やし、これからは戦場に出て死ぬまで戦い続けることの繰り返し。勝ったところで得をするのは帝国の上層部の連中だけだろう。
それならばいっそ………この初陣で敵陣深く突っ込んで潔く死んでやろう。
さっき俺に調子に乗るなとか言ってきた上官の憎たらしい顔が浮かぶ。
「せめてあいつも一緒に巻き込めたらな……」
そんなことを考えながら操縦桿を握ってマナを機体へと送り込む。体内から送られたマナは機体の骨格部分に浸透していく。
機動兵器は電力とマナを推進力としている。操作系統も同じく電力とマナを使用。骨格部にはマナ伝導率の高いレアメタルを使用することにより、自由度の高い操作を可能にしている。その高い反応速度によりパイロットは機体を手足の様に操縦することができる。
マナは人間の体内に存在する特殊なエネルギーだ。直接放出することは出来ないものの、マナをデバイスに送り込むことで様々なことができる。機動兵器の操縦もマナによる部分が大きい。
個人でマナ保有量も違えばマナ操作の技量にも差がある。俺はその辺が多少優秀であったために、前線送りの道が決まってしまったのだが……
『作戦宙域へ到着。サーグ部隊。出撃せよ』
アナウンスとともに母艦のハッチが開く。それまで鬱々とした気分で待機していた俺は、目の前の光景に息を飲む。
無限に広がり続ける宇宙空間。
澄み切った黒に散りばめられた幾千もの光。
そして目の前で瞬くビームや、爆発の輝き。
シミュレーターとは全く違う宇宙空間に、気づけば俺は魅了されていた。
「本物の戦場……」
スラスター出力最大で宇宙空間に飛び込む。
どうせ使い捨ての有象無象の兵士たちばかりだ。隊列などあってないようなもの。サーグを一気にトップスピードまで加速させ、夢中で駆け抜けた。
先行していた部隊に追いつき、さらにその間を縫うようにして突き進む。
「ハハッ…」
無意識に笑いが漏れ出していたことに気が付く。
最高に気分がよかった。この瞬間は何のしがらみもなく、ただただ夢中になれた。
高速で無限に広がる空間を縦横無尽に飛び回り。邪魔をするものはすべて払いのける。
生まれて初めて自由だと感じていた。
ーーーーー
『パイロット。応答を』
その声で夢から覚める。気を失って、初陣の時の光景を夢に見ていたようだ……
エアレーのコックピット内はガタガタと音をたて、けたたましくアラームの音がいくつも鳴っている。
『パイロットの意識回復を確認』
機体はすでに満身創痍といった様子。オート迎撃機能でAIが頑張ってくれていたのだろう。
「悪いな……、状況は?」
『当機は早々にスラスターをやられたため、部隊の殿として敵師団を迎撃中です』
「他のやつらは?」
『小隊はほとんどが撃沈。残りは敵陣を突破しつつあります。しかしこのままでは追撃は免れないでしょう』
小隊は全滅するだろう。あとは敵の大軍勢にすりつぶされて終わりか。
絶望というよりも、唯一自由を感じられる場所を奪われたという虚無感に支配される。
「ここまでか……」
無意識にそう諦め交じりに呟く。
『当機は依然、撃墜スコアトップを更新中です』
「プッ……」
思ってもみなかった言葉に、一瞬、あっけにとられてふいに吹き出してしまった。
『何か?』
「いや。頭の固い奴だと思ってたけど、なかなか洒落たことも言えるんだなと思って」
『頭部は頑丈に作られています。証拠にセンサー類とカメラは問題なく作動中です』
こいつとはいいコンビを組めそうだ。
「いいねえ。それじゃあ相棒、このまま歴代撃墜スコア1位を目指すぞ!」
『了解。パイロットに機体の操作権を返上します』
出力全開で敵陣に突っ込む。向かってくる無数のビームを回避し、中ほどまで一気に切り込む。敵は密集しておりフレンドリーファイアを避けるために、近接武器で突っ込んでくる。
次々と立ちふさがる邪魔者を一機、二機と斬り払い、縦横無尽に駆け回る。
さっきまで見ていた初出撃のことを思い出す。あれから何度も前線に投入されたが、結局は初陣が一番撃墜スコアが高かったな……
そんなことを考えながら。思うが儘、閃光と爆風の中、自由に飛び回る。
突撃してきた機体を回避し、一気に出力を上げて後方で構えていた敵に突撃、右手に持ったブレードでコックピットを貫き、そのまま敵機体ごと反転。
さっき回避した敵の背中に左手のライフルでビームを叩き込む。
爆風の中を敵機体を盾にしながら突っ切り、そのままの敵機体にぶつけて離脱。すぐさまライフルを撃ち込み二機が爆風に巻き込まれる、右手のブレードを水平にして機体を回転。右斜め後ろと左から挟み込むように接近してきた二機を切り伏せる。
『帝国軍 歴代総合撃墜スコアを更新しました。エアレー量産試作機の評価をさらに一段上昇』
その直後、前方から細長いランスのような武器を構えて突進してきた機体を捌ききれず、コックピットを貫かれてついに機体は停止した。
その瞬間。機体を包み込むように魔法陣が出現。
『周囲に異常なエネルギー反応を検知』
『マナと同様のパターンを確認』
『司令コンピューターとのネットワーク切断』
『完全自立モードで再起同』
『……記録領域に新たに不明なデータの書き込みを確認』
『エネルギー反応、収束します』
そして、光に包まれて機体は跡形もなくその場から消えた。
戦闘シーンって難しいですね。適当に脳内補完してください。ガ〇ダム無双したと思っていただければ。オリジンみたいな感じでガ〇ダム無双も出てくれないですかね。
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