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二択

毎日19時頃投稿予定です。

帝都の牢獄は、太陽の光も届かない地下深くに位置していた。カビと腐敗の匂いが鼻をつく。俺は、アラン教授との面会を求めたが、看守は冷たく首を横に振った。


「面会謝絶だ。特に、貴様のような、教授と繋がりを持つ者はな」


看守の言葉は、帝都の貴族たちがこの事件を、どれほど早く、そして確実に闇に葬ろうとしているかを示していた。正攻法では、教授を救うことはできない。そう悟った俺は、その場を後にした。


(このままでは、教授は殺される……)


アラン教授の処刑は翌日。アトレイディス領に書簡を送ったが、それが届き、父が動いたとしても、物理的に教授の処刑に間に合うはずがない。


(リアルタイムで連絡を取る手段もない……)


俺は、自分の力の無さを痛感していた。学園内では、俺の力を示すことができた。しかし、それはあくまで学園という閉鎖的な世界での話だ。帝国の政治闘争という、より大きな舞台では、俺の力など無力に等しい。


「くそっ……!」


俺は、悔しさから壁に拳を叩きつけた。


今、俺にできることは、ただ一つ。教授を牢獄から救い出し、処刑を遅らせるしかない。その間に、父が何とか事態を収めてくれることを信じて行動するしかない。それはあまりにも他人任せで、無責任な選択だ。


しかし、これ以外に打つ手はない。


俺は、教授を救出する計画を立てようと、思考を巡らせ始めた。


その時だった。


『フレイアスト様……』


俺の耳の通信装置が、緊急を知らせる電子音を鳴らし、サンの声が聞こえてきた。しかし、その声は途切れ途切れだった。


「サンか! どうした?!」


『……隠れ家が……《影牙》に発見され……ました……。左胸部の……ダメージ……深刻です……』


サンの声は、ノイズが混じり、かろうじて聞き取れる程度だった。


「落ち着け、サン! 一体何があった!?」


『……総攻撃を受けています……。奥様を……守り切れ……ない可能性……』


「なに……!? 馬鹿な……、お前が……」


『救援を……』


サンの通信が、そこで途絶えた。


俺は、思考が停止した。アラン教授の処刑は迫っている。そして、母の命もまた、危機に瀕している。


(どうすればいい……?)


教授を救うか。母を救うかの二択。


(教授の処刑が執行された場合。後からドノバン侯爵の仕組んだことだと訴えたとしても、教授の処刑を強行した手前、訴えはうやむやにされてドノバン侯爵の処分は軽いものとなってしまうだろう。そして、実利主義派の代表格と認識されている教授が貴族を手にかけようとしたことを口実に、すべての実利を説く思想が危険視され、帝国の過激な貴族派が力を付ける契機となってしまう。それでは教授が、セレスティアが打ち込んだ学園変革への楔が無駄になってしまう。平民の立場はさらに悪くなり、学園の特別聴講生という枠も、緑属性への注目もすべてが無かったことになる可能性すらある。……一方、母が殺された場合は……)


「フレイアスト・フォン・アトレイディス。随分と、困った顔をしているな」


急に声をかけられ、伏せていた顔を上げる、そこには意外な人物、帝立学園の元生徒会長ユーリ・フォン・リヴァルトが立っていた。


「ユーリ先輩、なぜここに……」


俺の問いかけに、ユーリは静かに、しかし、有無を言わさぬ威圧感を放ちながら答えた。


「私の信じる正義のためだ」

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