Début.5学園生活2
【入学式】
このイベントは慣れる事なく緊張する。
”どれだけ気負う事なく自然体になれるか”
これに尽きる。
自慢話で自分を大きく見せる必要なんてない。
無理に道化を演じてウケを狙いにいく必要なんてない。
自分を客観視して身の丈にあった発言をする。
特に目立とうとせず、壁を作る事なく自然に挨拶・・・
鏡の前で口角を上げてにっこり。
——うん!今日も可愛い。
生前口癖の様に発言していたセリフが背中を押す。
——こうやって準備してることがもはや気負いしてるんだけどな
深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いているのだ的な
ニーチェ思想を纏わせつつ
「おはようございます」
と教室に入るとツンとした視線を感じる。
"あの子が特待生の・・・"
----あちゃあ
才能ある人をずっと羨む人生だった。
明るく 周りには人が集まって
なんの努力もぜず ただただのらりくらりと生きている
そんな偏見を持っていた。
---こんな視線を感じていたなんて知らなかった。
持つ者の宿命とでも言うのだろうか?
ここからどう振舞うのが正解なんだろう。
分かりやすく道化を演じた方がいいのだろうか?
と思考を張り巡らせていると
教卓の段差に躓いた。
「あ゛ッ!!!」
つるんと1回り頭から教卓に突っ込んだ。
「イテテ・・・。」
その瞬間ドッと笑い声が巻き起こる
「大丈夫?!」
「エリルさんだっけ?」
「抜けてるところあるんだね」
エリルの周りに人が集まりだす。
「いやぁ参った参った」
今年で精神年齢は30を超える。
ちょっとおばさんくさいセリフをこぼしてしまった。
「可愛いのに中身おばさんみたい!笑」
「ねぇ、エリルさんはどこの街出身なの?」
「黒い髪の毛珍しい!」
気付いたらみんなの中心に私が居た。
----あぁこんな所でも神に愛されている。
あの神め。またなんかしやがったな。
何かをしようとした訳じゃなくて
何かが勝手に起こってくれる
世界が私を見離さない。
----なるほど人気者の構造はこうなっていたのか。
シャンシャンシャン・・・・。
鐘の音がなる。
この世界のチャイムの様な物だろう。
「ほら席につけーーー!」
教師が扉を開けそこかしこに声を掛けをしていく。
「えぇ、アルテミスへようこそ
この学園に選ばれた生徒は一般科以外は
それぞれ何かしらの才能を持って生まれてきた者達だ。
競争し時に助け合い そして何かしらの化学反応を起こし
国に貢献できる様な人間になっていけ。
我々はその為であったら労を惜しまない」
まるで演説の様な言葉は生徒に自信を与えて
そして鼓舞してくれる様だ。
「改めてメーティスだ よろしく
それぞれ自己紹介をしろ」
校門前に居た教師だ。
切長の瞳でアップバングの30代前半の女性だ。
それぞれ自己紹介を始める
おちゃらけた奴に 端的に終わらせる人
この流れは現実世界でも変わらない。
懐かしさまで感じた。
「初めまして エリル・スカーレットです!
私はアイドルになりたくてこの学園にきました!
町育ちでみんなみたいに由緒正しい?とか分からないし
マナーとかわからない事も沢山あって
もしかしたら迷惑かけちゃうかもしれないけど・・・
みんなと仲良くなって
もっとみんなの事知れたらいいなと思ってます!
よろしくお願いします!イデッ゛!!!」
お辞儀の勢いそのままに机に頭を思いっきりぶつけた。
ライブの自己紹介ばりに気合を入れてしまった。
「はにゃ?えへへへ」
シャンシャンシャン・・・・。
全員が自己紹介を終えるとチャイムが鳴る。
「それじゃ次の授業からよろしく。
3年間頑張ろう。」
名簿を閉じメーティスは教卓を後にした。
「ねぇ?フヒフヒ・・・」
後ろを振り返る。鼻息が荒い眼鏡の女の子。
「さっき自己紹介してた。名前は・・・」
「あぁふ。ウル・ヘビーメロウですブヒィ。 あのふ、そのふ・・・」
いちいち語尾が気になる。
「落ち着いて?!大丈夫ですよ?」
キメ顔キラースマイルが滞りなく決まる
強風に煽られた様にウルの髪が逆立つ。
---最高に可愛いんだろうよ。
フヒフヒフヒ・・・はぁはぁ。
ウルは息を整えた後 衝撃な言葉を放ったのであった。
「もしかして、あなたも転生者ブヒィ・・・?」




