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アルニラム騎士団の憂鬱  作者: 古川モトイ
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私、ケン・ダールの証言と見解1

 地球に異星人が攻め込んでくるストーリーは古典SFの花形だ。結局のところ、宇宙人に攻め込まれた後、撃退した現在に至っても、未だに宇宙人の侵略はSFの類だったのではないかとそう思う。地球人がなぜ恒星間航行を難なくやってのける高度な文明を持った宇宙人を撃退せしめたのか。その経緯を私なりに書いていきたいと考えて、こうして記述を始めているが、私だけの意見と視点ではとても後世に残す気にはなれない。したがって、幾らかの関係者に聞き取りを行い、それら証言と見解をも記録していきたいと考えている。


2048年 ケン・A・ダール


 2046年6月、おおよそ私はアイスホッケーについて思いを巡らせていた。7月末に開幕となるバリローチェ冬季五輪は北半球に住む人間にとっては夏の冬季五輪となる。身近な人間にもちょくちょく「北半球に対して南半球のアルゼンチンでは夏と冬が逆転している」事実を理解していない人間がいて、バリローチェの雪が人工雪ではない説明を何度かする羽目になったのを覚えている。どのみち、私にとってはオフシーズンにアイスホッケーのドリームチームの試合が見られるまたとないチャンスで、高揚感に包まれていた。なぜ、こんな話から書き始めたかというと、私は宇宙人襲来の第一報をスポーツバーで見たからだった。その日は仕事が早く終わって、早い時間からビールを飲んでいたと思う。ジャックとポールと看板猫で守護聖人のマイケルがいた。ジャックとポールは多分いた。マイケルは確実にいた。多分、こんな調子だったと思う。


「やあ、ポール。」

「やあ、ケン。ジャックも。」

「やあ。」


3人とも会話する内容が無かった訳ではない。ホッケーの話をいざ始めると長くなる。長くなった時に「お前がホッケーの話を始めるから!」と言われるのが嫌なだけだ。しかし、ホッケーの話はしたい。だから、いつも別の話題から入るのだが、なんせ「夏のビッグゲーム」が近づいていた。初めてダンスに女性を誘うような(僕は誘わなかったが)気分だった。


「どう、思う?」

「どうって?」

「そりゃあ……アメリカとロシアだよ。」


そんな風に「ホッケー」という言葉を使わずにじりじりしていた頃だろう、店内に流れていたスポーツチャンネルに見慣れないニュースが入ってきたのは。


「……今年はホッケーは夏にやって、エイプリルフールは6月にもやるのか。」


笑えないジョークだ。宇宙人がマンハッタン島を攻略し始めた。



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