第25章 闇の大きさ
極夜は小悪魔を飛ばしすぎたと後悔していた。ずっと、頭の中に小悪魔の声が鳴り響いていてうるさくてたまらない。でも、どの小悪魔が縁の為になる人間かわからず自分のもとに戻すこともできなかった。
「ねぇ、極夜。まだ小悪魔から返事はこないの?」
縁は今まで人間や建物を見るのが楽しく黙って眺めていたが、とうとう飽きてしまい極夜に聞いた。
「ん~、じゃあ、そろそろ行くか。」
極夜はもう教えることに疲れていたが、しょうがないと思い立ち上がった。
「じゃあ、まずは一番近くにいる奴からみてみるか。」極夜が言った。
「うん!早く行こうよ!」
縁は待ちきれないというように答えた。
極夜が飛ぶと、縁もその後ろをついて飛んだ。
「まずはあの建物だな。」
極夜はそう言い、小悪魔が付いている人間がいる建物の屋上に降り立った。縁が降り立つのを待ってから極夜は話し出した。
「縁、建物の中を見てみろ。見たいと思えば中が見えるはずだ。」
縁は言われた通りにすると、まるで人間が浮いているように中の様子が見えた。
「うん。見える。小悪魔が人間の後ろを飛んでるよ。」
「これからあいつに魔空を使って、闇をみる。」
「ここでもう魔空を使うの?」
「ああ、そうだ。まずは魔空を入れて闇の大きさをみる。今回は縁を間に入れるからな。まぁ、とりあえず、闇の大きさが違う人間を何人か選んでおいて後で音波と相談するか。」
「うん。わかった。じゃあ、極夜の後ろをついて行くね。」
「くれぐれも床に降り立つなよ。降り立ったら、物を通り抜けられなくなる。壁だけじゃなく、ここにある机や椅子に体が当たったら当然音もするし、ぶつかった物も動く。人間に気づかれるからな。」
「あっ、そうだった!忘れてたよ。気をつけるね!」
縁は、前に音波に教えてもらったことを極夜に言われるまで忘れていた。
「じゃあ、行くぞ。」
極夜は一度上に飛び立ち、ゆっくりと建物の中に入って行った。縁も同じようにして建物に入った。
極夜と縁は小悪魔がついている男の真上で止まった。
「まずはこいつからだ。よく見てろよ。」
極夜はそういうと、体から闇をにじみ出し、それを糸のように人間に伸ばして人間の耳の中に入れた。その様子を見ていた縁は、すべての動きが音波より早いと思った。
「こいつはまだ闇が小さい。」
極夜はそう言うと、闇の糸を人間から抜いて、次の標的に向かった。縁は、黙って後ろをついて行った。次に小悪魔がついていたのは道を歩いている女だった。極夜はさっきと同じように魔空を使った。
「これは結構染まってるな。よし、次に行くぞ。」
極夜はそう言い、次々と小悪魔がついている人間のもとへ飛んだ。闇をみて、前にみた人間と似たような大きさだったら小悪魔を人間から自分に戻した。魔空を使っては、いる、いらない、とブツブツ言いながら飛んでいたが、気づくと後ろに縁がいなかった。周りを見渡すとだいぶ後ろを必死についてこようとしている縁を見つけ、極夜は縁が追いつくのを待った。
「極夜、早いよ。もう疲れた。」
やっとの思いで極夜に追いつき、息を切らしながら縁が言った。
「しょうがないな。一度建物の上に行くぞ。」
極夜はそう言い、縁の腕を掴むと屋上に飛んだ。屋上に降り立つと縁は四つん這いになり、とても苦しそうにはぁはぁ言っていた。
「そんなに疲れたか?まだ全然飛んでないのに。」極夜が言った。
「もう!僕は、今日が初めての人間界なんだからね!こんなに飛び続けたのだって初めてなんだから。」
縁は呼吸をととのえようとしていたが、まだ苦しそうだった。
「頑張ってついて来い。まだ20もみてないぞ。」
「極夜、もう少しゆっくり飛んでよ。」
「ゆっくりって言ったって。早くしないと今日のうちに終わらなくなる。」
極夜はため息をつきながら言った。
「今日中に全部みたいとダメなの?」
「縁の体力がどれだけもつかわからないからな。選別くらい今日中に終わらせないと。」
「ん~、でも、もう少し休ませてよ。」
極夜はイライラしながら言った。
「だから今日中に終わらないと言ってるだろう!ほら、行くぞ!さっさと立て!」
極夜が怒りだしたのを見て、縁もむきになってきた。
「だから、もう少し休ませてってば!飛ぶのすごく疲れるんだから!」
縁はそう言い、絶対動かないとばかりに大の字に寝そべった。
「ったく、俺は音波みたいに優しくないと言っただろう!」
極夜が言っても、もう縁は返事をしなかった。縁の姿を見て怒りがどんどん膨れ上がるのを感じたが、極夜はどうしても今日中に終わらせておきたかった。縁の体力がいつまでもつかわからないというのもあるが、なにより、縁にうまく力が入るかわからない以上、時間にゆとりを持ちたかった。
極夜は小悪魔から返事がきた時にさっさと動いておけばよかったと後悔したが、縁がこんなにも早く疲れるとは思っていなかった。
極夜はため息をつき、縁に近づいた。縁は何をされるのかと身構えたが、極夜は縁の腰を持ち上げ、自分の肩に縁を担いだ。
「なに!?なにするのさぁ!」
縁は訳が分からず極夜の肩の上で手足をバタバタさせた。
「いいから、大人しくしてろ!これならお前も体力を使わないし、俺も今日中に回りきれる。」
極夜はそういうと、また小悪魔がついている人間のもとへ向かって飛んだ。
縁は少し恥ずかしいと思ったが、体はとても楽だった。極夜の背中にひじを乗せ、その手のひらに自分のあごを乗せながら、もし遠くまで移動する時があったらまた担いでもらおうかな、とずるい事を考えていた。




