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この世界  作者: 御影 零
~運命の始まり~

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第22章  おさらい

 ヨスガが生まれて3か月が経ち、人間界に行く日が近づいていた。生まれた悪魔がいつ人間界に行くか特に決められた定めはなかったが、3か月が一つの目安だった。


縁は今まで魔空マクウの練習を続けたが、やはり習得できなかった。


「とうとう魔空を習得することはできなかったな。」音波オトハが言った。

「音波も極夜も、ずっと教えてくれてたのに、本当にごめんね。」


縁はうなだれながら言った。とても落ち込んでいるようだった。


「気にするな。縁はずっと頑張ってたじゃないか。あとは極夜キョクヤに任せてみよう。」


音波は縁の肩に手を置きながら言った。


「まぁ、前に言ったように俺と人間を繋いだ糸の間に縁が入れるか、入れたとしても縁に力がつくかどうかはわからないからな。」


極夜は音波と縁に念を押した。


「縁、今回寝たらすぐ人間界に行くからな。少しおさらいをしておこう。まず、人間には私たちの姿は見えない。そして、人間界にある物はなんでも通り抜けることができる。壁だろうと、天井だろうと、床だろうとも私たちを遮るものは何もない。だけどそれは飛んでいる間だけだ。一度地面や部屋の中に降りると、再び飛ばない限り通り抜けられないからな。気を付けるんだぞ。」音波が言った。

「あれ、人間も通り抜けられるんだったけ?」縁が聞いた。

「ああ、そうだ。人間は飛んでいようが、飛んでいなかろうが通り抜けられる。そして、私たちが人間の側で会話しようとそれは人間には聞こえない。」

「うん。わかった。」

「そして、私たちの目は建物の中を透けるように見ることもできる。人間が建物の中にいても、どこにいるかすぐに見つけることができる。魔空で繋がっていれば、たとえ相手が目の届かない場所にいても居場所はすぐにわかるし、何を考えているのかも手にとるようにわかる。まぁ、縁ももう少しで魔空を使えるようになるだろうし、極夜がどうやるのかしっかり見ておくんだぞ。」

「うん!わかった!でも本当に音波の説明はわかりやすいなぁ。」

「そうか?まぁ、教えるのは2人目だしな。」


そう言うと懐かしそうに極夜を見た。


「えっ?誰に教えたの?」

「極夜だよ。」


音波は微笑みながら言った。


「なんで?普通は四魔の誰かに教えてもらうんでしょ?」

「あぁ、そうなんだがな。極夜は最初百鬼様に預けられたんだ。しかし、極夜の態度が気に入らなかったのか、夢魔の言い伝えのことが原因なのかはわからないが、1日ですべてを一気に話して極夜を放り出してしまった。」

「1日で全部!?そんなの絶対に覚えられる訳ないのに!それに極夜も僕に同じことしようとしたよ!音波が教えてくれなかったら、僕どうなってたんだろう。」


これを聞き、極夜は少しその時の事を後悔した。


「まぁ、極夜は縁をそのままにはしなかったと思うぞ。ただ、どう接していいかわからなかっただけだ。たぶんあの時縁のことを部屋に帰したとしても、気になって縁の周りをウロウロしていただろうな。」

「何それ!でも極夜ならそうだったかもね。」


音波と縁は笑っていたが、極夜はおもしろくなかった。


「俺はそんなことしない!あの時は、その、俺は話すのは苦手なんだ!」

「そんなに怒んなくてもわかってるよ。極夜はすごく恐そうに見えるけど本当は優しいもんね!」


縁は極夜の目を見ながら笑いかけたが、もうどうでもいいと思い極夜は背を向けて台に横になった。


「でもさぁ、本当に1日じゃ絶対に覚えられないよ。」


縁は極夜に無視されたのを何も気にせず音波に言った。


「そうだろう?だから、そんな極夜を見て放っておけなくてな。縁に説明するように極夜にも教えてやったんだ。まぁ、縁のように熱心には話を聞かなかったけどな。自分の気になる話だけを聞き、それ以外の話になると、話している途中でも自分の部屋に戻ってしまったしな。」

「そうだったんだぁ。極夜も大変だったんだね。」

「そうだな。」


音波は自分以外にも極夜をわかってくれる悪魔が1人増えたと思い嬉しかった。


「さて、最後の眠りだ。極夜も寝ておけ。」音波が言った。

「はっ?俺はいいよ。」

「何言ってるんだ。今までやったことないことをしようとしているんだ。きちんと寝ておくんだ。」

「めんどくさいからいいって。」

「ダメだ。」音波はきっぱりと言った。


極夜はもう何を言っても寝ろと言われるな、と思いとりあえず寝ることにした。それを見て、音波と縁も台に横になった。


皆が寝静まってから、5分もせず極夜は起き上がった。


 だから寝なくてもいいって言ったのに。


そう思いながら、音波と縁を見た。2人ともよく眠っていた。


 縁がよく寝ているのはわかるけど、音波もぐっすりだ。教えるの疲れたんだろう。音波、俺に教えてた時もこんなに疲れてたのか。


そう思い縁を見た極夜はそれはありえないと首を振った。


 いや、俺はそこまで疲れさせてないはずだ。魔空だって、すぐできたし。でも音波、必死に教えてたな。音波にアドバイスしろといわれて、たまに口は出したがあそこまでできないとイライラしてくる。でも、まぁ、音波の気持ちもわかるな。縁は本当に生意気な奴だが放ってはおけない。


そんなことを考えながら、極夜は自分の手を見つめた。


 俺は人間界で自分の力を抑えられるだろうか。縁を間に入れるのは最初だけにしよう。もし途中で興奮し出したらたぶん人間の絶望を見ないと気が済まなくなる。


極夜はまた台に腕を枕に寝っころがった。


 でも音波は俺が歓喜になると言った。どんな歓喜になるんだろう。もしそうなったら縁も少しは魔界で生きやすくなるだろうか。だけど、俺が歓喜になるとは決まっていないんだ。もしかしたら災いになるかもしれない。そうなったら、音波と縁はどうなってしまうんだろう。


ふっと極夜は笑ってしまった。


 俺が他の悪魔の事を気にするなんてな。今まで夢にも思わなかった。そういえば、音波が言ってたな。自分のことだけを考えられるのは、悪魔のことも考えられる、か。俺は一体どうしたいんだろう。今でも自由に生きたいとは思うが、それがもし災いになってしまったらこの2人はどうなるんだろう。


そんなことを考えながら音波と縁が起きるのを極夜は待った。

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