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短編集【家族のかたち】  作者: 福島ひかり


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名前を呼ばれた

だれかに、名前を呼ばれた気がした。


だれに呼ばれたのか、

なんて呼ばれたのかはわからない。


遠くから聞こえたようにも思うし、

すぐそばで呼ばれたようにも思う。


でも、呼ばれた気がした。


あたりは暗くて、どこにいるのかも、

どこへ行けばいいのかもわからなかった。


声が聞こえたとき、思わず手足を動かした。

けれど、声が聞こえるだけでなにも見えなかった。


どれだけ時間がたっても、あたりは暗いまま。

だんだん動けなくなって、息が苦しくなっていった。


ふいに声に引かれるように、からだが動きはじめた。

暗くて狭い道を、ゆっくり、ゆっくりと進んでいく。


こんどは、たしかに名前を呼ばれた。


その瞬間、光がさして、

はじめて息ができた。


そして、わたしは産声を上げた。


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